植物環境工学
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19 巻, 1 号
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論文
  • 渋谷 俊夫, 清水(丸雄) かほり, 瓦 朋子, 寺倉 涼子
    2007 年 19 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    小型冷蔵庫に照明装置およびヒーターを組み込むことによって, 簡易な低湿度処理装置をつくり, この装置を用いて接ぎ木直前の台木カボチャ実生に低湿度処理を行った. 低湿度処理装置によって平均気温30℃, 平均相対湿度15%, 平均飽差3.6 kPaの低湿度環境をつくることができた. 処理終了時における低湿度処理した実生の乾物重および乾物率は, 低湿度処理せずに温室で育成を続けた実生に比べてそれぞれ有意に増大した. 低湿度処理後にカボチャ実生を断根し, 穂木用キュウリと接ぎ木することで接ぎ木挿し穂を得た. 接ぎ木挿し穂を培地に挿し木してプラスチックトンネル内で育成した. 挿し木7日後における全生体重, 根部生体重および発根数は, 低湿度処理したもので無処理の1.14倍, 1.36倍および1.44倍であった. 処理終了時における葉面コンダクタンスは低湿度処理した実生では無処理の0.39倍であったことから, 台木カボチャ実生への低湿度処理によって, 断根接ぎ木直後における台木の蒸散が抑制されたことが, 低湿度処理によって挿し木後の成長が促進された一因と考えられる. 完全人工光において低湿度処理区と無処理区の光条件を同一にして実験を行った結果,低湿度処理後における乾物率, 葉面コンダクタンスおよび挿し木後における根部生体重は試験区間で前述の実験結果と同様の傾向を示した.
  • -積算日射量に基づいたトマトの出荷量予測-
    久枝 和昇, 仁科 弘重
    2007 年 19 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究によって,トマトの出荷量は積算日射量から予測可能であり,出荷量は着果から収穫までの積算日射量と相関が高いことが,明らかになった.すなわち,12/9週から5/26週までの25週(生育ステージや気温による影響が比較的小さいと考えられる期間)については,各週の出荷量は次式で予測されることが明らかになった.
    y=7.50×10-6x+0.148 (r2=0.740)
    y: 出荷量(kg・m-2・week-1)
    x: 1週前から8週前までの積算日射量(MJ・m-2)
    今後,出荷量予測式に気温や生育ステージを組み込むことによって,さらに精度の高い予測が可能であると考えられた.また,大規模生産温室を新たに建設する場合,本研究の手法を用いて,近隣の気象台が測定している日射量から年間出荷予測し,その地域での温室建設が経営的に可能かどうかの判断が行えると考えられた.
  • -トマト群落における光強度とCO2固定量の垂直分布の解析-
    久枝 和昇, 高山 弘太郎, 仁科 弘重, 東 幸太, 有馬 誠一
    2007 年 19 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    We have been conducting research on the improvement of productivity in large-scale greenhouse tomato production. One of the factors that largely influence the tomato productivity is the rate of CO2 fixation by photosynthesis. The amount of CO2 fixed by the whole plant canopy varies considerably and is known to depend on canopy structure.
    To date, few studies have analyzed photosynthesis in plant canopies within the context of improving productivity for large-scale tomato production. Consequently, obtaining data and developing analytical methods that are relevant to production is important.
    The present study investigated the rate of photosynthesis within a plant canopy and the vertical distribution of the amount of CO2 fixed by plants with the aim of increasing CO2 fixation and yield. This was done by analyzing the photosynthetic rate in individual leaves, examining plant canopy structure and measuring light intensity within the plant canopy.
    It was found that the leaves located in the upper parts of canopies were exposed to higher light intensities, experiencing light saturation and had higher rates of photosynthesis at the point of light saturation than leaves in the middle and lower parts of the plant. It was assumed that this was due to the occurrence of senescence and the development of shade-leaf characteristics in the leaves of the lower parts of the plant. The results implied that removal of the leaves under 150 cm or farther from the apical meristems could increase CO2 fixation and productivity of the plant canopy.
    The analytical methods developed in the present study can be applied to assess the efficacy of seasonal management methods such as cropping patterns, utilization of lateral buds, and leaf thinning, for maximizing yields.
  • 村上 覚, 末松 信彦, 水戸 喜平, 中村 新市
    2007 年 19 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    南伊豆地域の‘カワヅザクラ’における花芽形成とその発達について調査した.花芽形成は7月上旬に花房分化期に達していた.その後,9月上中旬にがく片形成期,10月上旬に花弁形成期,10月中旬に雄ずい形成期と進んでいった.花芽形成は花弁形成期以降に年次間差と植栽地による差がみられたものの,いずれの年次及び植栽地においても11月下旬には胚珠形成期に達していた.胚珠形成期に達するのが早い年次あるいは植栽地では,気温が低く推移する傾向が認められ,花芽形成には気温が影響することが示唆された.花芽の発達は,蕾が割れて緑色が見える状態から開花までに1ヶ月以上を要した.1つの花芽における開花期間は約2週間と長く,同日の観察日においても異なる状態の花芽の混在が観察された.‘カワヅザクラ’は生育状態の異なる花芽が連続的に開花し,かつ1つの花芽の開花期間が長いために長期間開花を続けると考えられた.
  • -ヤガ類の行動観察結果-
    平間 淳司, 関 憲一, 細谷 直輝, 松井 良雄
    2007 年 19 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2008/04/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,近年,特に農作物に被害を多くもたらす難防除害虫種(ハスモンヨトウやオオタバコガなどのヤガ類)に対して,化学農薬に替わる物理的な害虫防除に関して,超高輝度型黄色LEDの諸特性を積極的に利用した物理的な新しいタイプの害虫防除装置の開発を目指している.本研究のアプローチは,まず,対象害虫に対する各種光刺激に対するERG信号の波長依存特性および自発性ゆらぎのパワースペクトル計測を行った.次に,ERG信号の光応答特性を踏まえたLED光源パネルを試作して,圃場にてキャベツ栽培現場で加害調査実験を試みることで,光源パネルの有効性の検討をした.その結果,以下の結論を得た.
    (1) オオタバコガとハスモンヨトウのERG信号のVppは,450 [nm]~600 [nm]の波長波長域で大きな反応を示し,感度の高い光の受容体が存在した.ただし,オオタバコガは光の放射束密度の増大に伴い,光の受容体の選択性が弱まる傾向を示した.
    (2) 周期的な光刺激を与えた場合であっても,ヤガ類のERG信号には,自発性のゆらぎが観測された.そのゆらぎのパワースペクトルの傾斜特性は,1/f ~1/f2を示した.
    (3) 上記(1)(2)のERG信号の光刺激応答特性を踏まえ,黄色LED光源パネルを試作し,物理的な防除装置を開発した.圃場にて光源パネルを用いキャベツの露地栽培現場にて,加害調査を実施してその有効性を調査した.その結果,無点灯区と点灯区との比較では,点灯区の方が1/7から1/8の被害が低減することがわかった.また,点灯区であるパルス光とゆらぎ光とを比較すると,両者には差がないことがわかった.この原因として,点滅光の周波数設定値が不適切であったとも考えられた.しかしながら,消費電力の観点からは,連続光に比べ点滅光の方が約1/2であり,点滅光が期待できることがわかった.
    今後は更に反復実験をすることで,黄色LED光源パネルが十分な物理的な害虫防除装置としての有効性を検証する予定である.
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