植物環境工学
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19 巻, 2 号
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論文
  • 芦田 恵樹, 清水 智美, 建山 和由
    2007 年 19 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    今回の実験検討により,特定面からの部分採光によって工場内に光を十分に行き渡らせることができることを検証し,太陽光を考慮した植物工場に関する知見を得ることができた.さらに床下に配置した温度環境制御用空間の効果について確認し,Fig. 9 (a), (b) にそのイメージの一例を示すような,効率的な植物工場に関する提案に結びつけることができた.本提案によって期待される効果は以下のとおりである.
    1)補光用の照明や空調にかかるエネルギーの消費を抑えることができる.
    2) 非採光面の有効利用を検討できる.たとえば太陽光発電や太陽熱利用温水設備など屋上を利用した工夫も取り込むことができる.
    3) 採光面( ガラス面) の縮小によって,植物工場の建築形状の自由度が増大する.これによって周辺景観との調和に配慮する設計が可能となり,都市部の再開発地や工場,学校跡地を利用した植物工場の新設が検討できるようになる.都市住民が憩いの場としても利用できる親和形状の設定も可能である.
    4) 全面ガラス張りの従来型工場に比べ,適切な壁材の材質を選択すると構造を軽量化することができるため,既存建物の屋上への植物工場の新設が検討できる.
    5) 特定面からの採光を効率的に利用する技術は,通常側面のみに採光面を有する既存建物を利用した植物工場への用途変更,改築にも適用が可能であり,植物工場の新設による初期投資の負担が軽減され,普及が促進される.
    これら効率的にエネルギーを利用した植物工場については,今後さらに実規模での検証を始め,工場の全体制御システム,局所での照明や温度の制御など,さらなる効率化の検討を行うとともに,建築構造物としての植物工場のあり方についても研究を行っていく予定である.
  • 宮崎 潔, 桑山 智重子, 景山 幸二, 松本 省吾, 福井 博一
    2007 年 19 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    トレニア属は40種からなる植物属であるが, 園芸品種の育成にはTorenia fournieriのみが関わっており, 品種の遺伝的多様性が低い問題点を持っている. 本研究では, トレニア品種の遺伝的多様性を拡大することを目的とし, T. fournieri(TF), T. glabra(TG), T. asiatica(TA), T. concolor(TC), T.baillonii(TB), T. sp-1(SP1), T. sp-2(SP2), T.‘Summer Wave’ (T.fournieri× T. sp-1)(SW)を用い, 核リボソームDNAのITS領域(5.8S nr DNAを含む)の塩基配列に基づいて種間の類縁関係を明らかにすると共に, これらの種間でのダイアレルクロスを行い交雑親和性を調査した. 核リボソームDNAのITS領域の全塩基配列から系統樹を作成した結果, TA, TC, TFからなるクレードとTG, TB, SP1, SP2およびSW で構成されるクレードにわけられた. ダイアレルクロスの結果, TC×TG, TC×SP2, TG×TC, TG×SP2, SP2×TGの組み合わせで高い交雑親和性が認められた. 同一クレードに属するSP2とTGとの交雑個体ではTGの形質が優性に発現され, 異なるクレードに属するTCとTGおよびSP2との組み合わせでは, 花形が両親の中間の形質を示した. 同一クレードに属したTG, TB, SP1, SP2との交雑においても結実や稔性種子の形成が認められ, 同一クレードに属する種間での交雑親和性が確認できた. TF, TA およびSW は一部を除いて他の種と交雑親和性を示さなかった. TB×TFで1個体の交雑個体が得られ, TFとは異なる花形や花色を持つ交雑個体が得られた.
  • 于 文進, 荒井 健悟, 加藤 克彦, 今井田 一夫, 西村 直正, 李 蓮花, 福井 博一
    2007 年 19 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    エブアンドフロー方式でのミニチュアローズの鉢物生産において, 気象要因を用いて推定した総葉面積とペンマン法による蒸発散位から蒸発散量を推定した. 実測した蒸発散量と総葉面積を用いて推定した蒸発散量との関係から, 推定値が実測値より大きな値を示し, LAIを考慮した総葉面積を用いて蒸発散量を推定する必要があった. LAIを用いて修正した葉面積とペンマン法による蒸発散位から求めた蒸発散量と実測した蒸発散量との間にはY=1.07X (R2=0.75)の有意に高い相関が認められ, 気温, 湿度, 日射量を用いて30分ごとの蒸発散量をある程度推定できた. しかし, ピンチ後の10日間の生育が劣っている時期やLAI>2.8のシュートの生育が旺盛な時期では蒸発散量の推定値が実測値と大きく異なる場合が認められ, 蒸発散量推定式の精度を低下させていた. 鉢内土壌の水分量とpF値との間には有意な相関がみられ, 潅水点pF2.1の鉢内土壌水分量は93.0 ml pot-1であった. 鉢土の圃場容水量はミチュアローズの生育や栽培時期の影響を受けず210.0 ml pot-1で一定であり, 潅水点までの総蒸発散量は117.0 ml pot-1と推定できた. 本研究の結果から, ミニチュアローズの鉢物生産における蒸発散量をある程度予測できる可能性が示唆されたことから, 気温, 湿度, 日射量などの気象データに基づいた潅水点の予測が可能であるかもしれない.
  • ワンナ マンギタ, プラパパン ピンカウ, ヨンサク カチョンパドングキッテイ, 大沢 良, 久島 繁
    2007 年 19 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    ソバ植物の種内雑種植物体の試験管内での交雑育種を検討した.圃場での良好な組み合わせであるキタワセソバと福井在来ソバを用い,試験管内で誘導したキタワセソバ( 母方,秋型) の花芽に,ポット栽培福井在来ソバ( 父方,夏型) の花粉を試験管内人工授粉させ,受粉花芽・胚珠を培養して試験管内再生植物の育成を試みた.培養体をココナッツミルクを含む培地で培養することにより,飛躍的に試験管内第2 世代植物の再生率が高まり,連続的な試験管内世代交代が可能となった.
    得られた再生植物体はザイモグラム,RAPD,数種の形態および農業形質から雑種と判断された.
    バッククロスを3 回繰り返し,母方形質を理論的に94% 持つキタワセソバ個体を育成した.初回の交雑と3 回のバッククロスを終了するまでに掛かった期間は240 日であった.試験管内での第2 世代植物体形成期間(1 世代期間に相当) は55 ~ 60 日で,試験管内世代交代期間は圃場のそれより速いと考えられた.試験管内再生植物の大量迅速育苗による系統確立は可能と考えられた.
短報
  • 佐藤 員暢, 山下 淳
    2007 年 19 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    運搬車がマルチシートを敷設した施設内の畝間を走行する際マルチシートを破損しないよう走行環境を考慮した運搬車開発を行った.
    この対策として, 操舵時に操舵角とキャンバ角を共に変化させる特殊な操舵機構を有する球形車輪を開発した.
    基礎試験として行ったタイヤ接地部の摩擦特性試験において, タイヤとマルチシートの摩擦係数をマルチシートとマサ土の摩擦係数(0.53) より小さくすることが有効であることがわかった.
    球形車輪操舵時のマルチシートへの作用応力を測定した結果4.3 Mpa であり, 一般タイヤの58%と小さくマルチシート保護に充分効果があることがわかった.
    本車の登坂角は, 摩擦係数0.5のタイヤ素材で18°となった. これは, 施設内の加温パイプ乗り越し, 畝端での畝間の形状を考慮しても充分な性能であることがわかった.
  • 星 岳彦, 新谷 啓治, 林 泰正, 高市 益行
    2007 年 19 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2008/07/29
    ジャーナル フリー
    植物生産における結露,降水,細霧冷房などによる濡れを高感度に検出する目的で,写真製版による精密電子回路基板作成技術を応用した,電極ギャップが250μm の微細パターンによる電気抵抗式検出器を試作し,試験した.試作検出器は結露を正確に検出し,細霧冷房装置の運転制御フィードバック検出器としても有用であった.基板50 枚試作時の1 枚あたりの製造コストは4,830 円になった.
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