植物環境工学
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19 巻, 4 号
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論文
  • 横井 真悟, 後藤 英司, 古在 豊樹, 西村 将雄, 田口 勝教, 石神 靖弘
    2007 年 19 巻 4 号 p. 159-166
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    閉鎖型システムにおいて, 栽植密度および気流速度を変えてトマト実生苗を育成して, 成長量およびその均一性を調査した. また, 温室にて育成した苗との比較も行った.
    閉鎖型システムにおいて栽植密度が高いほど苗は徒長し, 乾物重や生体重が減少し, 成長量の均一性は低くなった. また, 気流速度が高い方が乾物重や生体重が増大した. 徒長, および成長量の均一性は気流速度による有意な影響を受けなかった. これらの結果から, 気流速度を高めれば, 栽植密度が高くとも, 苗を徒長させず, かつ成長量の均一性を保持したまま生育の促進が行えることが示された.
    閉鎖型システムの苗は温室よりも栽植密度を高くしても徒長せず, 乾物重が大きく, 成長量が均一な品質の高い苗であることが示された.
    以上から, 閉鎖型システムを用いて気流速度を調節することで, 温室などの育苗施設よりも, 更なる密植育苗もしくは育苗期間の短縮ができることが示された.
  • 江口 壽彦, 森山 修志, 宮島 郁夫, 吉田 敏, 筑紫 二郎
    2007 年 19 巻 4 号 p. 167-174
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    本研究では, 新規野菜として,また機能性食品として期待されるサツマイモ品種 ‘すいおう’の養液栽培方式の検討を行った. その結果, 高い収量を得るには夏作, 冬作ともに湛液式水耕が適することが明らかになった. しかし, 夏作においては, 機能性成分であるルテインの葉身含量がパミスサンド耕よりも劣るため, 湛液式水耕において機能性成分含量を高めるための栽培技術の開発が必要であることが示唆された. また, 培養液濃度および光強度条件が‘すいおう’の葉身機能性成分含量に影響を与え得るかを調査したところ, 培養液濃度の影響は認められなかったが, 光強度が機能性成分含量および葉身収量に影響することが示唆された. ‘すいおう’の生産性向上のためには, 栽培環境が収量や品質に及ぼす影響のより詳細な調査が求められる.
  • 長谷川 耕二郎, 尾形 凡生
    2007 年 19 巻 4 号 p. 175-181
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    高知大学農学部における, 20年間の春期における気温の推移とカキ主要 8品種の萌芽, 開花および満開期との関係を調査し, 地球温暖化との関連を検討した. 1985年から2004年において, 3, 4, 5月の平均気温はいずれも年度の推移と有意な関係にあり, 1年単位では0.084, 0.108, 0.142°C上昇していた.カキ8品種の萌芽開始月日と開花ならびに満開月日はいずれも年度の推移と有意な関係にあり, 1年単位では8品種平均では, それぞれ, 0.45, 0.53および0.47日早くなっていた. 20年平均では, 萌芽開始月日は, ‘平核無’, ‘富有’および8品種平均において, それぞれ3月の21, 31および25日であり, 開花月日はそれぞれ5月の5, 14および9日であり, 満開月日は5月の10, 18および14日であった. 開花および満開月日は8品種において, いずれも萌芽月日と高い正の相関関係があり, 萌芽期が早まると開花と満開期も早まる関係が認められた. 20年間のカキ8品種についての萌芽月日と平均気温との間の相関係数(r)は2月と3月でそれぞれ有意であり, 2月と3月の気温が高まると萌芽月日が早まることがうかがえた. 20年間のカキ8品種についての開花および満開月日と2, 3および4月の平均気温との間にはそれぞれ有意な負の相関関係があり, 特に, 4月の気温との相関係数は-0.88***と-0.89***と高かった.
    以上の結果より, 年度の推移に伴うカキの萌芽, 開花および満開時期の早進化は地球温暖化による2~5月の気温の上昇と関連が深いと考えられた.
  • -果菜類との複合生産の検討-
    中村 謙治, 森川 信也, 山崎 基嘉, 磯部 武志
    2007 年 19 巻 4 号 p. 182-188
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    湛液型水耕栽培ベッドと飼育水槽を組み合わせ, ポンプにより飼育·栽培用水が常時循環する野菜栽培と魚類育成の複合生産システムを供試し, 果菜と淡水魚の複合生産の可能性を検討した. 実験はトマトとティラピアを組み合せたシステム, 水ナスとコイ, ヘラブナを組み合わせたシステムについて行った. 飼育·栽培用水に養液栽培用肥料を添加する条件では, 果菜の収量は魚を飼育しない場合に対し同等以上の収量が得られ, 飼育魚は水耕栽培用の培養液中でも順調に生育した. 以上から, 養液栽培システムに魚類育成用タンクを追加するだけの簡易なシステムにより, 果菜類の栽培と淡水魚類の生産が両立できる可能性が示された.
  • 今井 一夫, 中村 雅亘, 長谷部 信行, 鈴木 亮, 高橋 明子, 博一 福井
    2007 年 19 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    循環培養液の総窒素濃度を60, 75, 90 mg dm-3に変え, ミニバラの生育と植物体窒素吸収量の積算値から, 循環培養液の最適総窒素濃度を検討した. 循環培養液の窒素組成は硝酸態窒素濃度とアンモニア態窒素濃度の割合を2:1とした. 循環培養液の総窒素濃度を60 mg dm-3で栽培すると, ミニバラの生長に必要な窒素量が供給できず, 乾物あたりの窒素吸収量も低くなり, 生育不良になると考えられた. 90 mg dm-3で栽培すると, 循環培養液の窒素濃度が高いため, 植物体の蒸発散量と吸収窒素量のバランスが崩れ,栽培日数の経過とともに土壌溶液内の硝酸態窒素量が増加し, 土壌溶液の高浸透圧による吸水阻害等によって, 窒素吸収効率や乾物あたりの窒素吸収量が低くなったと考えられた. これに対して75 mg dm-3で栽培した場合には, 生育に支障がなく, 乾物あたりの窒素吸収量も高くなり, 土壌溶液内に窒素の蓄積もみられなかったことから, 植物体が吸収する窒素量とEbb & Flowシステムで培養液から鉢内に供給される窒素量のバランスがよいと判断した. また, 循環培養液の窒素および窒素以外のイオンバランスの崩れも大きくなかったことから, 夏季の循環培養液の最適総窒素濃度は75 mg dm -3であると考える.
  • 王 〓偉, 島崎 一彦, 福元 康文, 潘 暁波, 楊 暁伶
    2007 年 19 巻 4 号 p. 197-202
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    低濃度の合成ジャスモン酸誘導体は地生シンビジウムの根茎切片の in vitroにおけるシュート形成を促進した. カンラン (Cymbidium kanran)の根茎からのシュート形成は 0.1μM以下の濃度のジャスモン酸誘導体添加培地で促進された. スルガラン (C. ensifolium)の根茎のショート形成もジャスモン酸誘導体処理により促進された. カンラン根茎のシュート形成にはジャスモン酸メチル(Me-JA), メチルジヒドロジャスモン酸(MDJ)および N-プロピルジヒドロジャスモン酸(PDJ)処理の効果が大きく, スルガラン根茎のシュート形成にはPDJの効果が大きかった. 根茎から形成されたシュートの発根はカンランではMDJ 0.001および 0.01μM, スルガランではシスジャスモン(CSJ)0.1および 1μM処理区で促進された.
短報
  • 清水 浩, 久松 完
    2007 年 19 巻 4 号 p. 203-207
    発行日: 2007/12/01
    公開日: 2009/01/14
    ジャーナル フリー
    キク (C. morifolium Ramat.‘神馬’)を対象として, 暗期開始時15分のFR光 (ピーク波長740 nm)が伸長成長量に与える影響について,非接触計測法である画像計測システムを用いて, 複数個体の伸長成長量を10分毎に5日間計測した.
    その結果, FRを15分だけ照射しただけで一日の伸長成長量が4.7 mmとなり, FR照射なしの場合の1.6 mmに比べて約3倍となった. 特にFR光照射開始から約1時間30分の伸長成長速度が0.52 mm/hと顕著に大きく, その後伸長成長速度は0.24 mm/hと緩やかになるものの, FR光照射なしの場合に比べて3倍以上の値となること, また, FR光照射は明期の伸長成長にも影響を与え, 照射有りでは0.10 mm/hと照射無し0.05 mm/hの2倍の値となることが明らかとなり, これらには高度に有意な差があることを確認した. 詳細は明らかではないものの, この現象にはFR光受容体であるフィトクロムが関与していることが推察される. EOD-FR処理は, キクの伸長成長促進技術としては有効であると考えられる.
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