高濃度培養液を用いた高糖度トマトの養液栽培における培養液の循環・再利用を図るため,新たな循環キャピラリー栽培システムを開発し,その基本特性を明らかにした.本システムは,点滴チューブによる給液方式と給液樋から延びた2枚重ねのキャピラリーマット(CM)による給液方式とを有する.遮根シートを袋状に加工した遮根バッグ(RPB)を上層および下層のCM の間に挿入し,トマトの根域を制限する.CMによる給液量は,給液樋への水の供給量を2~12L min
-1に変えても,0.45~0.70L RPB
-1(5分間)しか変化しなかった.高濃度培養液の肥料成分のうち,作物の生育ステージに応じて給液する基本培養液(NO
3-N,P,K,微量要素,EC 1.8 dS m
-1)と水分ストレスを付与するためのストレス培養液(Mg,Ca,Naなど)を分割し,両培養液はそれぞれ点滴チューブおよびCM により給液する.CMによる余剰排液はストレス培養液のタンクに回収し,ECを定期的に調節しながら循環・再利用を行う.キャピラリーシステム( ストレス培養液:EC 2,6 dS m
-1)およびポットシステムによりトマトを3段摘心栽培した.キャピラリーシステムにより余剰培養液を循環・再利用しながらBrix 9%の高糖度トマトが生産できた.ただし,EC6区における地上部の生体重,乾物重,葉面積,収穫果重はEC2区より小さく,果実糖度はEC2区より高かった.ポットシステムの生育,収穫果重はキャピラリーシステムのEC2区と同程度であり,果実糖度にも差はみられなかった.
抄録全体を表示