植物環境工学
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21 巻, 2 号
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論文
  • 岩井 万祐子, 太田 万理, 土屋 広司, 鈴木 鐵也
    2009 年 21 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    本研究は, 光質をコントロールすることによって幼植物期のアカジソ (Perilla frutescens L.)の総ポリフェノール類, 特にアントシアニン類含量および還元型アスコルビン酸含量を向上させ, 機能性成分を高めた幼植物野菜の生産を目的とした.
    アカジソ地上部新鮮重量, 総ポリフェノール含量, 総アントシアニン含量および還元型アスコルビン酸含量への青色LEDと昼白色蛍光灯同時照射および近紫外線照射と昼白色蛍光灯同時照射の効果を検討した. その結果, 青色LEDと昼白色蛍光灯の同時照射により, 地上部新鮮重量および総アントシアニン含量が昼白色蛍光灯のみの照射より増加, 近紫外線蛍光灯と昼白色蛍光灯の同時照射により還元型アスコルビン酸の増加が認められた.
    このことから, 昼白色蛍光灯に加え, 青色光や近紫外線を同時照射する栽培方法はアントシアニンやアスコルビン酸などの抗酸化成分の向上に有効であると考えられる.
  • 高山 弘太郎, 仁科 弘重, 山本 展寛, 羽藤 堅治, 有馬 誠一
    2009 年 21 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    トマト個体の投影面積に基づいた水ストレス診断技術を高糖度トマト生産のための自動給液システムにおいて有効に機能させるために,投影面積算出プロセスの自動化と水ストレスの早期診断に有効なカラー画像撮影角度の検討を行った.本研究で開発した判別分析法を用いた投影面積自動算出プログラムは,トマト個体の投影面積を高精度で自動算出することができた.なお,植物体領域と背景領域との境界線において両者の誤判別が発生することを明らかにし,撮影角度が90度に近いほど境界線の長さが短くなるため投影面積算出精度が高くなることを示した.また,水ストレスの早期診断に有効なカラー画像撮影角度について検討した結果,撮影角度が高いほど(撮影角度が90度に近いほど),萎れの初期段階の外観変化を投影面積比の低下として感度よく検知でき,水ストレスの早期診断に有効であることが分かった.
  • 江口 壽彦, 鈴木 健彦, 宮本 英揮, 濱古賀 道男, 吉田 敏, 筑紫 二郎, 北野 雅治
    2009 年 21 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    養液栽培によるニンジン生産を想定し,底面給液式砂耕システムにおいて高低2種の培地内水位を設定して,極早生・小型品種の栽培を試みた.地下水位を一定に維持することでニンジン生産に求められる安定した培地水分環境を創出できた.培地水分含量が飽和レベルにある箇所では根が肥大せず,高水位区では貯蔵根が短くなり,また貯蔵根の肥大が良好な個体の割合も低くなった.
  • 宮本 英揮, 吉田 敏, 筑紫 二郎, 江口 壽彦, 伊藤 祐二
    2009 年 21 巻 2 号 p. 72-78
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    水管理条件がヤシ殻培地中の水分環境に及ぼす影響を調べることを目的として,ヤシ殻と他の培地(砂およびロックウール)の保水性と透水性を測定した.そして,得られた測定結果と土中の鉛直1次元水分移動方程式に基づいて数値シミュレーションを実施し,各培地を同一環境下で用いた場合に予測される水分環境の差異について検討したところ,以下の知見を得た.
    (1) ロックウールとヤシ殻は高い水分保持能を持ち,特に緻密な間隙構造を有するヤシ殻は,極めて高い保水性を有することが明らかになった.
    (2) 全培地の透水性は,水分量の低下とともに指数関数的に低下した.なかでも,ヤシ殻は,透水性が他の培地よりも数オーダ低かったことから,水分移動が著しく阻害され易い培地であることが明らかになった.
    (3) 底面給液条件における数値シミュレーションより,同一条件で水管理を行っても,培地内の水分の量および圧力は培地によって異なること,またその差異が保水性や透水性といった培地固有の水分移動特性に起因することが明らかになった.
    (4) 多種多様な環境下における水分状態を予測できる数値シミュレーションは,作物の生育に適した水管理システムを構築するうえで有用な手法と考えられた.
  • 松本 恵子, 多田 雄一, 清水 浩, 澁澤 栄
    2009 年 21 巻 2 号 p. 79-85
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    カイワレダイコン(Raphanus sativus L. ‘Kaiwaredaikon (Japanese radish sprout)’)の生育および抗酸化活性に与える給水量の影響について検討した.3水準の給水量すなわち300 ml,500 ml,700 ml(栽培試験終了時の土壌含水率はそれぞれ60%,70%,80%)の試験区を設定し,カイワレダイコンを栽培した.そして,それぞれの試験区における胚軸長,新鮮重,含水率,新鮮重1gあたりの抗酸化活性,総ポリフェノール含量を測定した.その結果,給水量が少ない区ほど胚軸長は短くなり,新鮮重および含水率は低下した.一方,新鮮重1gあたりの抗酸化活性は上昇し総ポリフェノール含量も増大した.また,新鮮重1gあたりの抗酸化活性と新鮮重1gあたりの総ポリフェノール含量との間には正の相関があることが認められ,給水量が少なくなるにつれてカイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性が増大したのは,新鮮重1gあたりの総ポリフェノール類含量が増したためであることが示唆された.本研究により,給水量を制限して栽培することは,カイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性を高めることに有効であることが明らかとなった.
  • 宮本 英揮, 長 裕幸, 伊藤 祐二, 筑紫 二郎, 江口 壽彦
    2009 年 21 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2009/06/01
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,静電容量式水分センサー・EC-5 (Decagon Devices 社)の出力電圧(V ) に及ぼす間隙水の電気伝導度(σw)の影響を実験的に評価し,任意のσw に対応し得るセンサーの校正方法を検討した.
    EC-5 は,従来の5 MHz 型静電容量式水分センサーに比べ,σwの影響を受けにくいセンサーである.とりわけ,θ ≤ 0.15 m3 m-3の低水分域では,σwの大小によらず,メーカーが推奨する校正式に基づき,V 値から体積含水率(θ) を決定可能である.しかし,0.15 m3 m-3を超える水分域では,同一のθを持つ土壌であっても,測定されるV 値はσwによって大きく異なるため,V 値からθを適切に評価するためには,σwに関する校正式の修正が必要であることが明らかになった.
    本研究では,σwの影響を考慮したセンサーの校正方法として3点校正法を提案した.同法を適用するには,σwが既知であることが前提となる.そのため,σwが大きく動的に変化する環境下では,EC-5の単独利用で高精度の水分計測を実施できないものの,σwの変化量が小さい場合に限れば,同法で算出した校正式に基づき適切に水分計測を実施可能である.飽和水分条件におけるV 値のみから,様々なσwの土壌の校正式を即座に得られる3点校正法は,θの異なる土壌に対して実施する従来の校正に比べ,はるかに簡便であると考える.
    本研究では,数ある土壌および静電容量式水分センサーの中の一条件における検討である.よって,今後は,他の土壌やセンサーについても3点校正法の有効性を検討するとともに,σwの動的環境下における高精度水分計測法の確立を試みる予定である.
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