植物環境工学
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22 巻, 4 号
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論文
  • 石倉 聡, 平間 淳司, 野村 昌史, 山下 真一, 東浦 優, 岩井 豊通, 二井 清友, 山中 正仁
    2010 年 22 巻 4 号 p. 167-174
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究は, LEDのもつ優れた応答性に着目して, キクに開花遅延させることなく, ヤガ類に対して高い防除効果を発揮する物理的防除装置の開発を目指している. 黄色LEDを特定の明期と暗期の時間構造によって終夜パルス点灯させることで, 当初の目標をほぼ達成することができた. 以下に得られた結論を示す.
    (1) ヤガ類 (ハスモンヨトウおよびオオタバコガ) 成虫において, 光強度1.2 mW m-2 (1 lx相当), 明期10 msおよび暗期10 msのパルス光照射に対して, ERG信号の応答特性を確認した.
    (2) 当該2種のヤガ類に対する光防除にあたっては, 同一の時間構造のパルス光で対応できる可能性が高いことが示唆された.
    (3) ERG信号の応答特性を踏まえ, 終夜照明下の秋ギクは, 光強度が小さい場合, 明期と暗期が共に10 msのパルス光を採用すれば, 開花遅延を回避できることが明らかとなった.
    (4) 光強度が19 m W m-2と大きい場合は, 明期が10 msであれば 50 ms以上の暗期を確保することで, 秋ギクの開花遅延を回避できることが明らかとなった.
    (5) 明期20 ms, 暗期80 msとする終夜のパルス点灯下で, キクに寄生したオオタバコガの幼虫数を予備的に調査した結果, 無処理 (無照明) と比較して寄生幼虫数は少ないことを確認した.
  • 高山 弘太郎, 仁科 弘重, 久枝 和昇, 末岐 剛, 原田 聰
    2010 年 22 巻 4 号 p. 175-180
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究では, 太陽光利用型植物工場で長期多段栽培されているトマト群落内の光合成機能の空間分布を詳細に解析した. その結果, 通路側の下層および個体群内側の中・下層の葉群の光合成能力が低い (通路側の上・中層および個体群内側の上層の最大光合成速度の1/2程度) ことがわかった. さらに, これらの葉群のChl a/b比が低いことから, この光合成能力の低下の主な原因が弱光順化であると考えられた. 特に, 葉齢が同じである中層の通路側と個体群内側とで光合成能力とChl a/b比に大きな違いが認められたことから, 両者の光合成能力の違いが老化によって生じたものではなく, 弱光順化が主たる原因となっていることが強く示唆された. また, 光合成能力の低い葉群 (通路側の下層および個体群内側の中・下層) においても, Chl含量や光合成電子伝達効率 (Fv/Fm) は, 光合成能力の高い葉群 (通路側の上・中層および個体群内側の上層) と同程度であることから, 前者の葉群が高い光合成能力を発揮するための潜在能力を有しており, 光環境を改善することによって, これらの葉群の光合成能力を向上させられる可能性がある. 具体的な光環境改善策としては, 作業通路での栽培管理作業が行われていない間は, 通常0.6 mの誘引用ワイヤー (Hanging wire in Fig. 1) 間の距離を広げて栽培するなどの方法が考えられる.
    本研究は, わが国の商業的大規模太陽光利用型植物工場で栽培されているトマト群落内の光合成能力の空間分布を詳細に解析した初めての例であり, 前報7)では触れられていなかった個体群内側の中層の光合成能力の著しい低下を明らかにした. 本研究で得られた知見は, トマト群落における効果的な光環境制御を考えるうえで有用であるとともに, 群落光合成量をシミュレーションによって求める際に有効な情報を提供する.
  • 武藤 浩志, 末松 信彦, 荒木 勇二, 馬場 富二夫, 石井 ちか子, 石井 香奈子, 稲葉 善太郎, 杉山 和美
    2010 年 22 巻 4 号 p. 181-186
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    11年生‘はるみ’を供試して, 着果, 果実の大きさ, 糖度および樹体内デンプン含量が次年度の着花に及ぼす影響について検討した. ‘はるみ’では, 果実の糖度上昇が次年度の着花に影響すること, さらには100葉当たりの着果数が多くなると, 葉や根のデンプン含量が減少し, 次年度の着花も減少することが明らかとなった. すなわち, 次年度の着花を安定させるためには, 過度の着果負担を避け, 葉や根のデンプン含量を適切に保持することが必要と考えられた. なお, 葉と根のデンプン含量は正の相関関係がみられた. また, 1果重および果実横径と次年度の着花は正の相関を示した.
  • 星 岳彦, 柴田 孝保, 深澤 一正, 深澤 敏夫, 高辻 正基
    2010 年 22 巻 4 号 p. 187-193
    発行日: 2010/12/01
    公開日: 2010/12/08
    ジャーナル フリー
    野菜を自給したい指向を持つ消費者層に対して, どこでも植物生産が可能な植物工場技術を応用し, 現在普及している人工光源でイニシャルコストが最も安い電球型蛍光灯を用いて, 居住空間の中で葉菜類を中心とした栽培を可能にする家庭用低コスト野菜工場の開発を提案した. 室内の環境計測結果に基づき, 環境制御システム, 養液栽培装置を簡易化することによって, 約1万7千円の部品原価で, サラダナ程度の大きさで最大6株程度を栽培可能な装置を提案した. 葉菜類を中心とした栽培試験の結果, 試作した装置は, 当初の目的を満足する性能であることが示された. 得られた結果を参考にして, 今後, 製品化を目指して開発を進める予定である.
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