植物環境工学
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23 巻, 2 号
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総説
  • 小倉 東一
    2011 年 23 巻 2 号 p. 37-43
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    The first plant factory in Japan was built more than 20 years ago, and industrial stage of plant factory moves to the development stage from the earlier stage. In the meantime, various automation systems have been developed for the purpose of increasing harvests, saving labor, or decreasing the workload. In this review, we examine these subjects and the range of automation devices, and look at examples of some of the related problems that companies have faced to date. Currently, the amount of time required to produce one leafy lettuce in an artificial plant factory is estimated to be 2.2 minutes. With full mechanization, this time will be reduced to 0.3 minutes. However, the investment in equipment is limited when economic efficiency is taken into consideration. The candidates for mechanization should be carefully selected so as to be compatible with shipping operations; for example, systems that involve less leaf picking and packaging, and fewer cleaning and sterilization operations for cultivation instruments and tools used in the production of 10,000 or fewer lettuces per day.
  • 岡田 英博, 多田 誠人, 坂井 義明
    2011 年 23 巻 2 号 p. 44-51
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では, 太陽光利用型植物工場の自動化による効果について検証した.
    太陽光利用型植物工場では, 生育が良好で収穫量も多いため, 従来の施設園芸よりも多くの労力が必要であり, 自動化による省力効果が高いことが示された. また, 自動化の必要性が高い作業は, 管理・収穫・出荷作業であることが示された. このなかで, 収穫作業は, 収穫ロボットの研究が進んでいるが, 植物工場は人の労働環境の改善や作業の効率化のための栽培システムが収穫ロボットの作業にも適した栽培環境となっているため, その導入が期待できる. さらに, 収穫ロボットの導入は, その導入コストが問題視されていたが, 植物工場の経営収支と作業時間から試算すると, 採算性を損なわずに導入できる可能性が示唆されただけでなく, コスト低減の可能性も示唆された.
    次に, 自動化技術の導入により植物工場全体の情報を収集することで, 人が目視で診断していた以上の広い範囲の栽培管理上の指標を得られ, 温室内での環境や生育のバラつきを検知できることが示唆された. さらに, その収穫物がどのような環境で育ったかという情報により, トレーサビリティや精密農法が可能なだけでなく, これまで経験と勘に頼っていた栽培管理上の判断をデータに基づいて行うことが可能になる. それにより最適な環境制御が可能になれば, 栽培の安定や収穫量の増加につながり, 太陽光利用型植物工場の採算性が大きく向上する.
    以上のように, 自動化によって太陽光利用型植物工場の課題を解消できる可能性が示され, 自動化技術の開発が今後の植物工場の普及・拡大につながることが期待される.
論文
  • 広間 達夫, 伊藤 菊一, 原 道宏, 鳥巣 諒
    2011 年 23 巻 2 号 p. 52-58
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    発熱期のハスの体温調節機構を解析するために, ハスを鉢栽培し, 屋外で開花開始から種子結実終了までのハスの花托体温と気温の関係を調べる屋外実験を実施した. 同時に, 発熱期および無発熱期のハスを恒温槽に入れ槽内温度を階段関数的に変化させそのときの花托体温のステップ応答を測定する屋内実験を実施した. (i)これら屋外と屋内の2実験において, 周囲気温を入力, そのときの花托体温を出力とする入出力関係を伝達関数で表現した. (ii)他方, 屋外実験(太陽光による一種の周波数応答実験)の解析を行い, 自然環境下の発熱期のハスが気温の変動を組み込んで自己の花托体温を決定するというハスの体温調節モデルを導出した. (iii)最後に, iとiiの結果に制御理論を適用して, ハスの体温制御機構を総合的に検討した. 得られた主な結果は以下の通りである.
    (1)発熱期のハスは, ある種の体内温度計を内臓し, これと時々刻々変動する気温の影響の和を目標値とする, 可変目標値モデル提案した.
    (2)発熱の活性化の程度は活性化係数で表すことができ, 発熱はステージ2の場合が, 最も活性化係数が大きくて発熱活動が最も盛んであることを確認した.
    (3)ハスの花托体温と気温依存温度の差は発熱相当温度であり, 花托は発熱相当温度分の熱産生を行って体温を気温より高温に保っていると考えられる.
    (4)ハスの体温制御系は, 発熱期の花托体温をフィードバックし可変目標値との偏差を制御器に導くという制御機構で表すことができる.
    (5)気温からハス花托に至る伝達関数は一次遅れ系で, 発熱期の制御器は積分動作で表現することができる.
  • 渡辺 功
    2011 年 23 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウ覆輪品種の花弁の着色割合と長幅比の関係を調べるために自然光利用型のファイトトロンを用い, 夜間を15℃とし, 昼間の30℃の継続時間を10, 6, 4, 2および0時間とした5つの試験区を設け, 第1花の雌ずい形成期~第3花が咲き揃うまで栽培した. 30℃の継続時間が4時間以上あれば, 花弁の40%以上が着色した花弁はほとんど見られず, 覆輪発現は乱れないことが明らかになった. 2時間区では, 花弁の10%が着色した花弁~90%以上が着色した花弁まで異なる着色割合の花弁が幅広く生じた. 小花の次数別に花弁の着色割合と長幅比の関係を調べたところ, 第2~4花で1%水準の有意な負の相関関係が認められた. このことから, トルコギキョウの覆輪発現の乱れは, 花弁の長幅比すなわち花弁の形の変化を伴って生じることが示唆された.
  • 花田 祐介, 安永 円理子, 内野 敏剛, 田中 史彦, 中野 浩平, 筑紫 二郎
    2011 年 23 巻 2 号 p. 66-74
    発行日: 2011/06/01
    公開日: 2011/06/01
    ジャーナル フリー
    本研究では, 温度, ガス濃度および時間経過を考慮した内容成分含有量変化予測モデルの構築を試みた. インゲンマメの呼吸速度には温度およびO2濃度依存性が確認され, 温度, ガス濃度および時間経過を考慮した呼吸速度予測モデルの適応が可能であることが示された. また, このモデルより算出される積算呼吸量と実験により求められたGlu含有量あるいはL-AsA含有量の相対変化との関係を一次反応速度式で表わしパラメータを決定した. その結果, Glu相対含有量ならびにL-AsA相対含有量と積算呼吸量は提案したモデルによって表現可能であることが認められた. パラメータ決定に用いたデータセットとは別の条件下で行った検証用データセットを用い, モデルの妥当性の検証を行った結果, 各成分含有量の相対含有量変化を精度よく予測することが可能であった. 一方, 本研究で用いた貯蔵条件では, インゲンマメの表色を表すL*a*b*値に変化が認められず, その値は指標とならないことが分かった.
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