PAM-Chl蛍光計測法およびChl蛍光画像計測法を用いて, 恒常的な暗状態と明期(PPFD 200 μmol m
-2 s
-1)/暗期が10 h/14 hの異なる光条件下で生育させたトマト接ぎ木セル苗の光合成機能の変化を評価した. その結果, 計測法の違いを問わず, F
v/F
mをモニタリングすることで, Chl含量の低下を伴わないわずかな光合成機能の変化を検知することができた. さらに, Chl蛍光画像計測法により得られるF
v/F
m画像を用いることで, 他個体よりも光合成機能が劣る個体の検出が可能であることが示された. しかし, Chl蛍光画像計測では, 計測対象に十分な強度の飽和パルス光を照射できないためにF
v/F
mを過小評価することや, しおれ等の苗の個体形状の変化がF
v/F
m値に影響を及ぼす可能性があることが指摘された. このことは, Chl蛍光画像計測により得られるトマト苗個体群のF
v/F
m値が, 個体群を構成している個葉の光合成機能とは直接的に関係しない要素により変化しうるという問題点を提起している. しかしながら, この特徴は, Chl蛍光画像計測が, トマト苗個体群の生育状態の変化を, PAM-Chl蛍光計測よりも高い感度で検知できることを示しており, Chl蛍光画像計測の植物診断技術としての有用性を否定するものではない.
抄録全体を表示