温室の暖房費削減の目的で, 暖房能力49.2 W m
-2のヒートポンプと, 暖房能力199.4 W m
-2の重油式温風暖房機を併用したハイブリッドシステムと, 慣行の重油燃焼式温風暖房機による年間の冷暖房コストについて, 静岡県磐田市の1つの温室を, 2つの同面積に分けた区画において実測比較した. その結果, ハイブリッドシステム区と対照区の暖房負荷係数は3.7 W m
-2 K
-1で, ほぼ同様の値であった. 8, 9月は夜間冷房を行ったため夜間の平均気温は約2.2°C低下し, 夜間相対湿度も約7%低下した. 暖房の最低夜温は18°Cで設定し, 暖房時における温度補正をした後のA重油使用量は, ハイブリッド区は12.61 L m
-2であり, 対照区33.49 L m
-2の約38%であった. ハイブリッド区の年間消費電力量は14.91 MJ m
-2で, 対照区の重油式温風暖房機の年間消費電力量は1.13 MJ m
-2であった. 温室の暖房用に投入したエネルギー量の比較では, 対照区の投入エネルギー量が81.62 MJ m
-2であるのに対して, ハイブリッド区の年間投入エネルギーは43.77 MJ m
-2であった. ヒートポンプ消費電力を, 暖房定格条件下のCOP 3.79を用いて熱エネルギーに変換して比較すると, ハイブリッド区が78.19 MJ m
-2であり, 対照区の81.62 MJ m
-2と比較して少なく, ヒートポンプは定格以上の能力を発揮していた. バラ温室における年間冷暖房用電力·A重油実勢価格65.8円L
-1で冷暖房コストを比較した結果から, 夏季の夜間冷房を行うことにより冷房経費は増加するが, 年間の冷暖房費は対照区の2162円m
-2に比較して, ハイブリッド区は約24%の517円m
-2の暖房費が削減でき1645円m
-2であった. バラの年間収量は, 切花総重量ではハイブリッド区が712.7 g株
-1であり, 対照区の643.2 g株
-1よりも多く, 特に夜間冷房を実施した8, 9月の切花総重量は, 対照区よりも53%多かった. ハイブリッドシステムは, 慣行の重油式暖房機と比較すると, 投入エネルギーは約46%削減でき, 2009~2010年時の重油価格, 電気料金の比較では, ヒートポンプによる夏季夜間冷房を加えても, 冷暖房費が約24%削減できた.
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