植物環境工学
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25 巻, 1 号
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総説
論文
  • 佐藤 展之, 守谷 栄樹, 安井 清登, 野々下 知泰
    2013 年 25 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/01
    ジャーナル フリー
    温室の暖房費削減の目的で, 暖房能力49.2 W m-2のヒートポンプと, 暖房能力199.4 W m-2の重油式温風暖房機を併用したハイブリッドシステムと, 慣行の重油燃焼式温風暖房機による年間の冷暖房コストについて, 静岡県磐田市の1つの温室を, 2つの同面積に分けた区画において実測比較した. その結果, ハイブリッドシステム区と対照区の暖房負荷係数は3.7 W m-2 K-1で, ほぼ同様の値であった. 8, 9月は夜間冷房を行ったため夜間の平均気温は約2.2°C低下し, 夜間相対湿度も約7%低下した. 暖房の最低夜温は18°Cで設定し, 暖房時における温度補正をした後のA重油使用量は, ハイブリッド区は12.61 L m-2であり, 対照区33.49 L m-2の約38%であった. ハイブリッド区の年間消費電力量は14.91 MJ m-2で, 対照区の重油式温風暖房機の年間消費電力量は1.13 MJ m-2であった. 温室の暖房用に投入したエネルギー量の比較では, 対照区の投入エネルギー量が81.62 MJ m-2であるのに対して, ハイブリッド区の年間投入エネルギーは43.77 MJ m-2であった. ヒートポンプ消費電力を, 暖房定格条件下のCOP 3.79を用いて熱エネルギーに変換して比較すると, ハイブリッド区が78.19 MJ m-2であり, 対照区の81.62 MJ m-2と比較して少なく, ヒートポンプは定格以上の能力を発揮していた. バラ温室における年間冷暖房用電力·A重油実勢価格65.8円L-1で冷暖房コストを比較した結果から, 夏季の夜間冷房を行うことにより冷房経費は増加するが, 年間の冷暖房費は対照区の2162円m-2に比較して, ハイブリッド区は約24%の517円m-2の暖房費が削減でき1645円m-2であった. バラの年間収量は, 切花総重量ではハイブリッド区が712.7 g株-1であり, 対照区の643.2 g株-1よりも多く, 特に夜間冷房を実施した8, 9月の切花総重量は, 対照区よりも53%多かった. ハイブリッドシステムは, 慣行の重油式暖房機と比較すると, 投入エネルギーは約46%削減でき, 2009~2010年時の重油価格, 電気料金の比較では, ヒートポンプによる夏季夜間冷房を加えても, 冷暖房費が約24%削減できた.
  • 林 茂彦, 武下 大作, 山本 聡史, 齋藤 貞文, 佐賀 清崇, 芋生 憲司
    2013 年 25 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2013/03/01
    公開日: 2013/03/01
    ジャーナル フリー
    イチゴの移動栽培への適用を目的に, 栽培ベッド横移送ユニットと定置型収穫ロボットを組み合わせた定置型ロボットシステムを用いて, 近傍果実を傷つけることなく対象果実に接近する障害物回避制御アルゴリズムを開発した. 果実の下側に設置したステレオビジョンカメラを用いて着色果実と未熟果実の位置関係を求め, 接近時の障害となる未熟果に傷つけないように最適な接近方向を決定した. そして, 採果エンドエフェクタのハンドアイカメラで検出した果柄を基にビジュアルフィードバック制御により果柄に接近した. 果実接近方向の検出試験, 果柄への進入試験および収穫試験を行い, 以下の知見が得られた.
    栽培ベッドから下垂するイチゴ果実を下側から撮影し, 画像処理を施すことにより, 着色果実と未熟果実を識別することができ, それらの位置関係から採果エンドエフェクタが接近する方向を決定することができた. 接近方向の検出成功率と, その検出精度は, ‘あまおとめ’で89.2%および1.75°, ‘紅ほっぺ’で93.3%および1.58°であった.
    ステレオビジョンユニットにより導出した接近方向から収穫対象果実を撮影することで, 正面からの撮影に比べ果柄の検出精度が向上し, ‘あまおとめ’で80.0%, ‘紅ほっぺ’で76.7%であった. さらに, 果柄検出に基づくビジュアルフィードバック制御により果柄に接近することで進入精度も高く, ‘あまおとめ’で73.3%, ‘紅ほっぺ’で78.3%であった. しかし, 複数の果柄が進入することが散見された.
    障害物回避制御機能を定置型ロボット収穫システムに埋め込むことにより栽培ベッドの横移送と連動した自動収穫が可能であった. 複数果実の採果, 収穫適否の誤判定, 栽培ベッド停止時の果実振動などが発生し, これらへの対応が今後の技術課題である.
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