ワサビ種子の発芽特性を明確にするために,‘伊づま’種子を材料に,開花日と開花後の温度が花茎部位別の胚の成熟に及ぼす影響,および胚の成熟度が種子の発芽に及ぼす影響を調査した.形状と着色度からワサビ胚の成熟度は4ステージに分類された.花序における小花の初開花から長角果裂開までの期間と日積算温度の間には,負の一次の関係が見られた.また,長角果裂開時点で収穫した種子の胚は成熟期に達していたが,発芽しない種子が混在した.発芽しない種子は内性の要因を含む休眠の状態であると考えられた.以上のことから,花茎ごと一斉収穫したワサビ種子には成熟度が異なる種子が混在し,成熟度により休眠および発芽率が異なることが明らかとなった.発芽の斉一性を向上させるためには,休眠の揃った種子の選別と種子の休眠を打破する発芽前処理が必要であると考えられた.