植物環境工学
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連載記事
論文
  • 畑 直樹, 徐 海竜
    2020 年 32 巻 4 号 p. 191-200
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    植物工場における高付加価値野菜の生産手法の開発を目的として,本研究においては,植物工場環境におけるリーフレタスの内容成分に及ぼす24時間明期とNH4-N施用の組み合わせ効果に焦点を当てた.12時間明期下と比較して24時間明期下では全C含量が有意に増加し,Mnを除く無機成分含量が有意に低下した.NH4-Nの比率を高めても,全C 含量が有意に増加し,K,Ca,Mg,NaおよびMn含量が有意に低下した.24時間明期とNH4-N施用はいずれも,硝酸含量の低下と,全糖,クロロゲン酸および総ポリフェノール含量の増加において有意な影響を及ぼした.さらに,照射時間と施用窒素形態の有意な交互作用が認められ,12時間明期下でNO3-Nのみを施用した場合と比較して,明期を24時間としNH4-N比率を高めることで,新鮮重あたりの硝酸含量は1/10~1/100にまで低下した.同様に,全糖,クロロゲン酸および総ポリフェノール含量は,それぞれ2.4~5.2倍,3.8~13.4倍および1.4~2.0倍に増加した.本実験条件においては,24時間明期下でNH4-N比率を25 %~50 %として栽培することが,生育量の低下を抑えながら内容成分の向上を図るうえで最適な条件であるとみられ,本研究結果は植物工場におけるリーフレタスの高付加価値生産に寄与できる可能性があると考えられた.

  • 上村 将彰, 中川 啓, 宮本 英揮
    2020 年 32 巻 4 号 p. 201-207
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,体積含水率(θ)の異なる豊浦砂の ε'sand スペクトルの態様を明らかにするために,2つの異なる手法,すなわち,ベクトルネットワークアナライザー(VNA)を利用した反復測定と,既往のモデルの改良・統合によって誘導した改良型誘電率混合モデルに基づく計算によって,θの異なる豊浦砂の ε'sand スペクトルを評価するとともに,両法による評価結果を比較した.測定した ε'sand スペクトルは,高θ条件ほど大きくなったものの,そのばらつきも大きくなった.特に,最密充填条件(0.21 m3 m-3)を越えるθ≥ 0.23 m3 m-3では,供試土壌の転圧に伴う土粒子-水-空気の配列の変化に起因する測定の再現性低下により,スペクトルのばらつきが拡大した(Fig. 6). ε'sand スペクトルのばらつきが比較的小さかったθ ≤ 0.19 m3 m-3では,高θの条件ほど ε'sand スペクトルは大きく,周波数(ƒ)への依存性も強くなることが明らかになった.一方,改良型誘電率混合モデルに基づく ε'sand スペクトルの計算値は,θ ≤ 0.19 m3 m-3に限り,測定したε'sand の平均スペクトルと同一水準の分布となった(Fig. 8).この測定値と計算値の共通性は,両法によって得られたスペクトルの信頼性を相互に担保するものと考える.しかし,モデルに基づくスペクトルは,ƒに対する平均スペクトルの勾配を再現することができなかったことから,モデル誘導時に無視した吸着水の存在を考慮する必要性が示唆された.土粒子表面の吸着水の挙動については不明な点が多いため,コロイド化学分野の研究の進展を待った後,改めて改良型誘電率混合モデルの改良に組み込むことが必要となろう.以上のように,高θ条件における ε'sand スペクトル測定手法や,吸着水の存在を考慮したモデルの構築等の課題が残るものの,本研究を通して,これまでに測定事例のない不飽和水分土壌の ε'sand スペクトルの態様の一端を明らかにした意義は大きい.今後は,ε'sand スペクトルの測定手法およびモデルの改良に取り組み,より精度の高い水分不飽和土壌の ε'sand スペクトルの評価手法の確立を目指す予定である.

  • 久松 奨, 馬場 富二夫, 浜部 直哉, 勝岡 弘幸, 稲葉 善太郎
    2020 年 32 巻 4 号 p. 208-213
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    置床前のGA3処理期間と低温処理および置床後の温度が,ワサビ(Wasabia japonica (Miq.) Matsum.)乾燥種子の10月播種における発芽に及ぼす影響について検討した.播種前のGA3処理期間は10日間まで長くなるほど,発芽率は著しく改善された.発芽温度に関しては,10 ℃と20 ℃の発芽率より15 ℃の発芽率が高かった.10日間GA3処理した種子に5 ℃10日間の湿潤低温処理を行うことにより,10 ℃と20 ℃の発芽率はそれぞれ63 %,69 %に改善され,15 ℃の発芽率とほぼ同じであった.GA3処理後に低温処理を行った種子の発芽率は広範囲の温度域で高いことから,発芽が不安定な10月播種においても計画的な育苗体系が構築できる可能性が示された.

  • 名田 和義, 向 佐登司, 平塚 伸
    2020 年 32 巻 4 号 p. 214-220
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    熱ストレスに対する植物の光合成反応を解析する場合,熱ストレス処理において葉温と処理温度を一致させることが重要である.本研究では熱ストレス処理として,目的の処理温度に設定した温水にキュウリ幼植物体を光照射条件(PPFD 90 μmol m-2 s-1)下で浸漬させる方法が有効であることを明らかにした.同化箱内の温度(TC)を変化させた実験において,TC 40 ℃での葉温(TL)は33.0℃であり,この時のPGはTC 25 ℃と比較して有意差はなかった.光を照射しない条件下での温水浸漬処理では,処理前に比較して水温(TW)25,30および40 ℃でGSが有意に低下した.一方,光照射条件下での温水浸漬処理では,処理前後のGSに有意な差はなく,TWの影響をほとんど受けなかった.また,TW 25,30および35 ℃のPGは処理前後で有意差がなくほぼ一致し,光照射条件下での温水浸漬処理では,温度以外の影響を考慮する必要がないことが示唆された.キュウリの光合成反応の限界温度はTL 40 ℃であり,この温度でPGおよびFv/Fmは有意に低下した.TL 40 ℃において, RubiscoのInitial活性が有意に低下したが,Total活性は高いままであった.以上より,TL 40 ℃におけるキュウリの光合成抑制は,PSIIの不活性化とRubiscoの活性化状態の悪化の両者が要因になったと考えられた.

  • 福地 健一, 嘉数(大野) 祐子
    2020 年 32 巻 4 号 p. 221-228
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/01
    ジャーナル フリー

    果実内部から放出されるクロロフィル蛍光スペクトルを測定し,クロロフィル濃度と密接に関連する蛍光強度比F685/F740の対数を指標(FMI)として,非破壊で果実の熟度および品質評価が可能であるか検討を行った.緑熟のトマト‘ホームモモタロウ’を追熟し,FMIと果皮色度(a*値およびa*/b*値)との関係を調べた結果,果皮色度に変化があらわれる数日前よりFMIの増加が始まり,完熟後はa*/b*値と同様の変化をすることが明らかとなった.キウイフルーツ‘ヘイワード’を用いた実験では,追熟温度によりFMIの変化が大きく異なること,一定条件で追熟を行った場合,FMIと硬度との間では未熟から可食までの段階において,FMIと糖酸比との間では未熟から完熟に至る全段階において,それぞれ直線関係があることがわかった.以上のことから,同一装置による蛍光スペクトル計測に基づき,FMIを指標としてトマトの熟度評価およびキウイフルーツの品質評価を行うことが可能であり,本手法は,追熟しても果皮色が変わらない果実の出荷時期や食べころの判定に有用であると考えられる.

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