【目的】
Clostridioides difficile感染症(CDI) でその有用性が証明されたFMTは近年では炎症性腸疾患をはじめ様々な疾患で臨床応用がなされている. 今回当院におけるFMTのクローン病に対する有効性について報告する.
【方法】
対象は既存治療にて寛解に至らない, または寛解維持が困難な症例とした. 2016年1月から8月にFMTを行ったクローン病4例に対してFMT前と8週後にCDAI, 内視鏡所見, 腸内細菌叢の偏移を解析し, 前向きに検討した.FMT施行後に継続してFMTを希望された場合は, 初回投与後8週目以降に複数回のFMTを施行した.
【結果】
FMT投与後8週において75%の症例でCDAI改善を認め,1例は臨床的寛解を達成した.CDAI改善を認めなかった1例もFMT後8週にHb値の上昇を認めた.CDAIの改善を認めた3例は最大3回のFMTを施行しており,2回目以降のFMTでは初回FMTで低下したCDAI値を維持した. 内視鏡所見において, 1例は術後吻合部および骨盤内回腸に認めた潰瘍の縮小, 治癒傾向を示した. 腸内細菌叢の解析は4例行っており, いずれの症例もFMT前は多様性の低下がみられていたが,FMT後では多様性が回復し, ドナーに近似したことが示された. 腸内細菌叢の門レベルの解析では, 有意差は認めなかったが,Actinobacteriaの増加傾向を示し (p=0.08) ,属レベルの解析ではBifidobactgeriumの増加傾向を認めた (p=0.16).
【結語】
FMTはクローン病に対して臨床所見,腸内細菌叢の変化においてともに高い有用性を示した.
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