と殺解体直後の豚肉について低温細菌の汚染状況ならびに5°と10°に貯蔵した場合の低温細菌数, 菌叢の変化を検討し, あわせて分離菌の発育温度特性, タンパクおよび脂肪分解能についても調査し, つぎの結果を得た.
1) 低温細菌数を牛乳の場合の種々の測定法により計測した結果, 使用培地, 培養条件, 接種法などによる差は認められなかった. しかし, 低温細菌数にくらべて標準平板菌数は常にほぼ1オーダー低い値で推移した.
2) 当初の低温細菌数は1g当り10
5~10
6個, pHは6.25であった. 5°貯蔵例では7日目にいたり菌数は10
8個に達し, 異臭の発生を認めたがpHの変化はあまり認められなかった. これに対して10°貯蔵例では3日目にすでに菌数は10
9個以上になり, 明らかな肉眼的変化が観察され, 7日目にはpHは7.5以上に達した.
3) 当初の分離菌の70%以上が
Flavobacterium, Achromobacter, Pseudomonasなどのグラム陰性菌で構成され, 貯蔵日時の経過にともない, 5°貯蔵例では
Pseudomonasが増加し, 7日目には分離菌の90%以上を占めた. これに対し10°貯蔵例では
Pseudomonasは45%程度にとどまり菌叢の片寄りは少なかった.
4) 当初の分離菌の発育温度特性はグラム陰性菌は30°以下, グラム陽性菌は35°以上と, いずれも中温域で良く発育する傾向がみられた. 5°貯蔵後に分離された
Pseudomonasは0~30°ではほとんどの株が良く発育したが, 35°では20%前後の株しか発育を示さなかった.
5) 供試菌株の25%がプロテアーゼ活性のみを, 31%がリパーゼ活性のみを示し, 14%は両酵素の産生を示した. なおリパーゼ反応は菌属に関係なく一般に弱いようであった.
以上, 主要なタンパク資源である肉の貯蔵性に関連する因子として, 低温細菌の存在とそれらが産生するプロテアーゼなどの酵素が重要な意義を有するものと考えられる.
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