体重約40gの Wistar 系雌ラットを2群に分け正常食または鉄欠乏食で8週間飼育し, 後半の4週間には両群の半数に飲料水として10% (v/v) エタノール溶液を投与した. 鉄欠乏食は被験動物に鉄欠乏性貧血を惹起し, すべての臓器及び血清のFe含量を減少させた. エタノールの投与は, 鉄欠乏性貧血の有無にかかわらず, 血清のCuと肝のZn, Mg, P含量を減少させると同時に血清Se含量を上昇させた. しかし, エタノールは貧血動物でのみ血清のCa, Mg, 肺と肝のFe, 腎のSe含量を減少させると共に, 脾のMgと脳のCa含量を増加させた. 以上の結果から, 肺と肝では鉄欠乏食によって低下したFe含量がアルコールによってさらに低下する結果を招き, 貧血による有害作用が飲酒によって更に強められる可能性のあることが示唆された.
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