食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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41 巻, 5 号
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報文
  • 胡 建恩, 久留主 泰朗, 宮口 右二, 堤 将和
    2000 年 41 巻 5 号 p. 297-302
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    大腸菌の菌体膜に対するグリシンとエタノールの併用作用について検討した. 大腸菌はグリシンやエタノール及びこれらの試薬の併用処理によって紫外吸収物質の漏洩が抑えられた. また, 薬剤処理ではナトリウムの漏洩は認められなかったものの, カリウムの漏洩は認められた. 薬剤処理によってタンパク質の漏洩が認められたが, 漏洩したタンパク質は表在性タンパク質であろうと推定した. 更に, 表在性タンパク質が除去された大腸菌の呼吸能回復はクロラムフェニコールによって抑制された. コハク酸脱水素酵素に対する薬剤の影響を測定したところ, 菌体では活性が増大し, 膜画分では阻害された. 以上の結果からの薬剤は主に大腸菌の外膜層に作用し, 膜の透過性の増大や物質の漏洩, 代謝機能など膜の重要な機能を阻害したものと思われる.
ノート
  • 小島 尚, 岸 美智子, 関田 節子, 佐竹 元吉
    2000 年 41 巻 5 号 p. 303-306
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    市販のセンナ茎を原料に含むダイエット茶などの健康食品11検体についてセンノシドの定量を行うとともに, 形態的に観察した. センノシド含有量は1回使用当たり0.2mg程度から約11mgと検体により幅があった. そのうち, 3検体では由来植物の形態を観察でき, センナ葉や葉軸が確認された. 健康食品の原料であるセンナ茎5種類について同様の検討を行ったところ, すべての検体からセンナ葉及び葉軸が観察され, センノシド9.5~14.6mg/gが検出された. 今回の結果から, センナ茎を用いた製品で通常茎にはほとんど含まれないセンノシドが検出されたが, これはセンナ茎の選別不良と, 植物学的に茎ではない葉軸がセンナ茎と誤って認識され混入していたことが原因と考えられた.
  • 津田 祥美, 片岡 裕美, 扇間 昌規, 伊藤 誉志男
    2000 年 41 巻 5 号 p. 307-311
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    市販のスパイス15種類のアレルギー性について検討したところ, rosemary, caraway, sweet basil, garlic, estragon, maceの6種類でAW法によって有意なアレルギー反応が誘発された. Rosemary抽出液を分画し, アレルギー作用と抗アレルギー作用 (経口投与) を検討したところ, 抗アレルギー成分は低分子 (MW<10kDa), アレルゲンは高分子 (MW>10kDa) であった. また, SDS-PAGE後, ウエスタンブロッティングにより, 2本のタンパク質バンドがマウスの血清IgEと反応した. そこでIgEと強く反応したタンパク質 (26~27kDa) でマウスに免疫したところ, AW法で有意なアレルギー反応が誘導された.
  • 門間 公夫, 佐々木 城子, 牛尾 房雄, 齋東 由紀, 市川 久次, 松岡 猛, 西島 基弘, 日野 明寛
    2000 年 41 巻 5 号 p. 312-315
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    PCR法を用いて1998年10月から1999年8月にかけて入手したダイズ26検体及び豆腐66検体よりグリホサート耐性遺伝子 (GTG) の検知を行った. ダイズでは米国産の2検体よりGTGが検知された. GTGが検知されたダイズ2検体については遺伝子組換えダイズの混入比率を調べた. その結果, IOMダイズでは20粒中9粒 (45%) から, ラウンドアップ・レディ・ダイズでは20粒中20粒 (100%) からGTGが検知された. 豆腐では絹ごし豆腐からは19検体中2検体から, 木綿豆腐では23検体中6検体から, 充てん豆腐では12検体中6検体から, それぞれGTGが検知された.
  • 豊田 正武, 堤 智昭, 柳 俊彦, 河野 洋一, 内部 博泰, 堀 就英, 飯田 隆雄
    2000 年 41 巻 5 号 p. 316-320
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    野菜試料における, アセトン・ヘキサン振とう抽出法とトルエン還流抽出法のダイオキシン類抽出効率の比較を行った. 抽出試験を3回行った結果, ほうれん草では, 振とう抽出でPCDDs, PCDFs及びCo-PCBsが平均0.48, 0.80及び7.7pg/g検出され, 還流抽出では同様の順に0.43, 0.72及び7.3pg/g検出された. また, ちんげん菜では, 振とう抽出でPCDDs, PCDFs及びCo-PCBsが平均0.67, 0.50及び2.6pg/g検出され, 還流抽出では同様の順に0.81, 0.64及び2.6pg/g検出された. 両抽出法の間で, 抽出量には有意な差はなく, 両者の野菜中ダイオキシン類の抽出効率は同様であることが判明した.
  • 齊藤 行雄, 山本 敦, 小玉 修嗣, 大戸 幹也, 大浦 敞, 松永 明信
    2000 年 41 巻 5 号 p. 321-325
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    昇温プログラム気化 (PTV) 大量注入法を用いたGC-ECDにより, ワイン類中の6農薬1代謝物の微量分析法を確立した. 試料をC18で固相抽出し, フロリジルミニカラムで精製後, 本システムで定性, 定量を行った. 迅速化を図るために, 2種のカラムには同じ溶出溶媒を使用し, 溶媒の濃縮・置換操作を省略した. ワイン類に定量下限値 (ビンクロゾリン, キャプタン, ブロモプロピレート: 0.25ng/g, プロシミドン, カプタホール: 0.5ng/g, イプロジオン, 同代謝物: 1.0ng/g) の2及び20倍濃度レベルを添加したときの回収率は, 76.7~124.3%, 標準偏差0.6~21.9であった. 本分析法を15検体のワイン類に適用した結果, 9検体からジカルボキシイミド系農薬を検出した.
  • 長南 隆夫, 西村 一彦, 平間 祐志
    2000 年 41 巻 5 号 p. 326-329
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    畜産食品中の5種の動物用医薬品 (6化合物) の一斉分析法を検討した. 試料をアセトニトリルで抽出し, 脱脂後, 肉の場合は, 抽出液をアルミナカラムで精製する方法で, 肝臓・腎臓・牛乳の場合は, 必要に応じてpH7の緩衝液を加えて硫酸アンモニウム飽和として酢酸エチル-n-ヘキサン (8 : 2) で抽出後, アルミナカラムで精製する方法で試験溶液を調製した. 試験溶液を紫外及び蛍光検出器付きHPLCで分析した. クロマトグラム上には試料のピークが若干認められたが定量には影響がなかった. 添加回収率は60%以上であった. 本法は, 簡便かつ迅速で基準値に対応できることから, これら動物用医薬品の実用的なスクリーニング法と考えられた.
  • 河村 葉子, 前原 玉枝, 和久井 千世子, 山田 隆
    2000 年 41 巻 5 号 p. 330-334
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル (PVC) 製手袋に残存するフタル酸ジ (2-エチルヘキシル) (DEHP), フタル酸ジイソノニル (DINP), アジピン酸ジ (2-エチルヘキシル) (DEHA) 及び4-ノニルフェノール (NP) は, 水, 20%エタノール, 4%酢酸では0.005~0.416μg/cm2溶出したが, n-ヘプタン (25℃ 60分間) ではDEHPが1,410~2,500μg/cm2, DINPが720μg/cm2, DEHAが137~841μg/cm2, NPが2.72~36.4μg/cm2と極めて高い溶出が見られた. ナタネ油への溶出量は, 60℃ 30分間で薄手手袋ではn-ヘプタンの1/2~1/4, やや厚手手袋では1/4~1/10に相当し, 試験温度が高く, 時間が長いほど溶出量は多くなったが, 低温や短時間でもかなりの溶出が見られた. 以上よりPVC製手袋を脂肪性食品に使用すると, 残存するDEHP, DINP, DEHA, NPが大量に食品へ移行することが示唆された.
調査・資料
  • 田中 之雄, 田口 修三, 吉田 精作, 堀 伸二郎, 高垣 裕
    2000 年 41 巻 5 号 p. 335-339
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    被験農薬として10種類のピレスロイド系農薬及び25種類の有機リン系農薬について, 即時型アレルギー作用の指標となるin vitroにおけるRBL-2H3細胞の化学伝達物質である顆粒内酵素β-ヘキソサミニダーゼの遊離に及ぼす影響を検討した. その結果, β-ヘキソサミニダーゼの遊離を亢進させる農薬として, ピレスロイド系農薬のペルメトリン, ピレトリンと有機リン系農薬のEPN, プロチオホス, テルブホスが見いだされた. これらの農薬は比較的高濃度 (200μmol/L) で遊離亢進作用を示したが, 細胞の生存率にはほとんど影響を与えなかったことから, 本亢進作用はIgE抗体を介した化学伝達物質遊離反応系の亢進によることが示唆された.
  • 鈴木 仁, 勝木 康隆, 小川 仁志, 鈴木 敬子, 松本 ひろ子, 安田 和男
    2000 年 41 巻 5 号 p. 340-345
    発行日: 2000/10/25
    公開日: 2008/01/11
    ジャーナル フリー
    容器入り飲用水170検体の無機陰イオン (F-, Cl-, Br-, 硝酸性窒素, 亜硝酸性窒素, PO43-及びSO42-) の濃度を測定した. また, 原水の種類や採水地の違いによる陰イオンの濃度分布について解析した. 温泉水使用のものではF-及びSO42-, 海水使用のものではCl-, Br-及びSO42-, 鉱泉水使用のものではSO42-濃度が高い傾向がみられた. また, 鉱水使用のものでは輸入品でF-, Cl-及びBr-濃度が国産品と比較して高い傾向がみられたことから, 使用される原水の種類により陰イオンの濃度分布に大きな差があることが認められた. 清涼飲料水の製造基準の基準値を超えるものは2検体でいずれもF-が2.4~2.5mg/Lと高い値を示した. また水道水水質基準を超えるものが11検体みられた (F-10検体, Cl-1検体).
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