食品衛生学雑誌
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46 巻, 5 号
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総説
報文
  • 谷澤 春奈, 島 三記絵, 池原 千枝子, 小畑 雅一, 佐藤 元昭
    2005 年 46 巻 5 号 p. 185-197
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    6種類の作物と1種類のジュースを試料として,固相抽出とLC/MS/MSによる農薬82成分の迅速一斉分析法を検討した.メタノールを用いて抽出した試料溶液の一部を分取し,C18ミニカラムで精製後,3種類のミニカラム(HLB, SAX, 活性炭)に農薬をそれぞれ保持させ,アセトニトリルなどで溶出した.測定はESIポジティブ,ネガティブ両モードで行った.検討したすべての試料において,82成分中75成分で 50% 以上の回収率が得られ,RSD(%)もほぼ 20% 未満であった.この結果,これらの農薬は本法による一斉スクリーニング分析が可能であると示唆された.また,前処理操作の小スケール化に伴い操作時間が短縮され,かつ機器測定時のマトリックス効果も低減された.
  • 多田 敦子, 金 哲龍, 杉本 直樹, 佐藤 恭子, 山崎 壮, 棚元 憲一
    2005 年 46 巻 5 号 p. 198-204
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    天然の食品添加物,ホホバロウの成分はいまだ明らかにされておらず,その種類と含有量を調べることは,添加物としての規格基準設定のため重要である.LC/MSで主に6ピークが観察され,このうち,主要4ピークを分取LC/MSにより分画し,加水分解および誘導体化後GC/MSで調べたところ,各分取ピークは分子量が同一で構成脂肪酸の異なる種々のエステルを含むことが分かった.また,各エステルの絶対含量を調べるため,LC/MS/MSを用いる分析法を検討したところ,構成脂肪酸由来のプロダクトイオンを測定することで,加水分解や誘導体化などの前処理を行わずに,直接,特定の脂肪酸組成を有するエステルを判別・定量できることを新たに見いだした.この方法を用いて定量を行い,イコセン酸イコセニル(21.4%)およびイコセン酸ドコセニル(37.8%)がホホバロウの主成分であることが分かった.
ノート
  • 酒井 綾子, 田中 宏輝, 小西 良子, 花澤 良, 太田 利子, 中原 徳之, 関口 将二, 押田 絵美, 滝埜 昌彦, 一戸 正勝, 吉 ...
    2005 年 46 巻 5 号 p. 205-212
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    平成14年産(前年産)市販玄米100検体と平成13年産政府保有備蓄玄米15検体の真菌フローラを平成15年4~6月に試験した.前年産米では,真菌が着生している米粒の割合が 20% 以下の検体が大部分であったが,備蓄米では好乾性真菌が 80% 以上の米粒に着生している検体が半数を超えた.前年産米に着生していた真菌は,Penicillium, Alternaria 属のものが多く,備蓄米では,Aspergillus, Penicillium, Eurotium 属のものが多かった.マイコトキシン関連真菌として P. islandicum, A. versi-color, A. ochraceus などを分離した.P. islandicum は,国産米から分離されることは珍しいとされるが,3検体から分離され,うち1検体では 82% の米粒から検出された.HPLCの結果から分離した P. islandicum は,すべてルテオスカイリンを産生する可能性があることが示唆された.
  • 丸山 弓美, 木村 凡, 藤井 建夫, 徳永 宜則, 松林 潤, 相川 保史
    2005 年 46 巻 5 号 p. 213-217
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    旅館の調理場および宴会場において生鮮魚介類の冷却に用いられている食卓用ドライアイス装置(ドーム型,帽子型および三脚型保冷器の3種類)による腸炎ビブリオの増殖抑制が可能であるか調査した.1.8% NaClを含むTSA平板培地および生鮮魚介類(イカ,アマエビおよびハマチの各フィレー)に腸炎ビブリオ(O3 : K6, TDH陽性株)を4~5 log CFU/試料接種して,室温 25℃ 下に放置した場合,本菌は4時間で1.0~2.8オーダー増加したが,各保冷器を用いた場合,3~4時間以内では著しい菌数増加はみられず,増殖抑制効果が確認された.各保冷器内の温度は 10℃ 以下に80~135分間保持されていたが,高CO2濃度の保持時間が短かったことから(0~75分間),増殖抑制効果は主に冷却機能によるものであったと思われた.これらの結果より,食卓用ドライアイス装置は,旅館の調理場および宴会場などの外食産業の現場において腸炎ビブリオ食中毒防止に有効であることが示された.
調査・資料
  • 大門 由佳, 河村 葉子, 六鹿 元雄, 田村 悦臣, 棚元 憲一
    2005 年 46 巻 5 号 p. 218-223
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    ポリエチレンテレフタレート(PET)再生処理材に残存するホルムアルデヒド(FA),アセトアルデヒド(AA)およびオリゴマーをHPLCにより分析した.その結果,物理的再生材ではすべての試料で,使用済みボトルと同程度のFA, AAおよびオリゴマーが検出された.また,超洗浄様再生材および化学的再生材では,その多くが新品ペレットより低かった.これらの化合物は物理的再生処理では顕著な低下は見られなかったが,固相重合処理により有意に減少した.また,物理的再生材を用いた成形用シートでは原料と比べてAAの増加が見られたが,原料が新品でも同様であった.FA, AAおよびオリゴマーはいずれもPET樹脂由来であり,新品とほぼ同程度であることから,再生材の安全性は新品とほぼ同等であると結論された.
  • 小西 良子, 田中 敏嗣, 杉浦 義紹, 田端 節子, 中島 正博, 桜井 裕之, 中家 陽子, 佐藤 耕一, 木谷 裕亮, 藤田 和弘, ...
    2005 年 46 巻 5 号 p. 224-227
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    リンゴジュース中のパツリン分析の告示法評価のために11機関による評価研究を行った.パツリン分析法は,AOAC法995.10の改良法を評価研究対象とした.すなわち,抽出・精製はAOAC法995.10に従い,溶離液の条件をアセトニトリル-水(4 : 96)として高速液体クロマトグラフィーで分析する方法である.試料として,パツリンを検出しないクリアタイプ,2種類の自然汚染リンゴジュースを用い,添加回収試験はクリアタイプのリンゴジュースに異なる2濃度のパツリンを添加して行った.自然汚染試料分析における併行再現性は,それぞれ3.2, 7.1%,室間再現性は10.0, 21.7% であった.HORRAT値も0.4~0.9であり,良好な値を示した.定量限界は10 μg/kgであった.添加回収試験から得られた平均回収率は 83.7% であった.これらの結果から,この方法はパツリン分析の告示法として妥当なものであると考えられた.
  • 石川 ふさ子, 大石 充男, 新藤 哲也, 堀江 正男, 安井 明子, 荻野 周三, 伊藤 弘一
    2005 年 46 巻 5 号 p. 228-233
    発行日: 2005/10/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    香港原産の赤酢からTLCおよびPDA-HPLC分析で検出された食用赤色2号,レッド2G (R2G),アゾルビン(Azo),ファストレッドE (FRE)および青色1号を質量分析法で確認するために,LC/MS条件を検討した.その結果,エレクトロスプレーイオン化法,ネガティブモード,キャピラリー電圧3.00 V,コーン電圧50 V,脱溶媒ガス温度 400℃ でそれぞれの色素の分子量関連イオンが感度良く観測された.この条件で赤酢精製液を分析したところ,ごく微量しか含有されないR2G, AzoおよびFREからも良好なマススペクトルが得られ,TLCおよびPDA-HPLCの結果を確認することができた.このことから,LC/MSは色素の同定・確認の手段として着色料分析に有用であることが示唆された.
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