食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
Print ISSN : 0015-6426
ISSN-L : 0015-6426
46 巻, 6 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
報文
  • 浅川 学, 高山 晴義, 別府 理英子, 宮澤 啓輔
    2005 年 46 巻 6 号 p. 246-250
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    1993年から2004年にかけて広島湾内の呉湾,海田湾で有毒渦鞭毛藻 Alexandrium tamarense の発生状況を調査するとともに,単離した5株ならびに垂下実験により毒化させた二枚貝の麻痺性貝毒(PSP)組成を調べた.A. tamarense の出現最高密度は呉湾では1,400細胞/mL(1997年4月),海田湾では2,500細胞/mL(1996年5月)を示し,両湾の環境が A. tamarense に対して高い増殖促進能を有することが示唆された.A. tamarense 5株は,いずれも β エピマーを54.9~73.0 mol%含んでいたが,1997年に呉湾と海田湾で分離した株の低毒性成分C2(PX2)含量はそれぞれ50.0および60.4 mol% であり,他の株に比べて高い値を示した.また,同時期に呉湾で毒化したマガキおよびムラサキイガイは,αエピマーをそれぞれ59.9および71.8 mol%,C2を7.6および1.8 mol%含むことから,二枚貝生体内におけるPSPの組成変化が示唆された.
  • 浅川 学, 別府 理英子, 坪田 真生子, 伊藤 克敏, 高山 晴義, 宮澤 啓輔
    2005 年 46 巻 6 号 p. 251-255
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    広島湾産麻痺性貝毒(PSP)産生渦鞭毛藻 Alexandrium tamarense の培養藻体を2, 4, 6, 8および10日間アサリに投与し,毒の蓄積過程を調べた.アサリのPSP蓄積率は4.2~8.1%と低く,アサリの擬糞の中に未消化と思われる A. tamarense 細胞が多数認められ,アサリは投与した A. tamarense の一部を取り入れていると考えられた.また,A. tamarense には,β エピマーが72.8 mol%含まれていたが,投与2日目のアサリ体内では α エピマー(53.0 mol%)の急激な増加が起こり,以降,毒組成はほぼ平衡に達した.このことから毒の蓄積過程の早い段階で,取り込まれた毒成分の β エピマーからαエピマーへの組成変化が起こることが示唆された.
  • 清家 伸康, 三輪 哲久, 大谷 卓, 上路 雅子
    2005 年 46 巻 6 号 p. 256-262
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    1999年から2002年の間に,9種の果物,計148検体を採取し,ダイオキシン類とコプラナー PCB を分析した.試料採取地点から約1 km以内に稼働中の廃棄物焼却場がある場合を‘発生源周辺’,その他を‘一般’と定義し,TEQを比較した.その結果,りんごのTEQのみ‘一般’に比べ‘発生源周辺’で有意に(p<0.05)高かった.その濃度差には,環境中のPCBと廃棄物焼却場の排ガスに由来する 3,3',4,4',5-PeCB (#126) が寄与していた.果物経由でのダイオキシン類とコプラナーPCBの一日摂取量は,最大で0.0082 pg-TEQ/kg b.w./day (ND=0)と推定された.これらの値は,日本における耐容一日摂取量 (4pg-TEQ/kg b.w./day)に比べはるかに低く,果物の摂取はダイオキシン類とコプラナーPCBによる人体暴露の重要な経路でないことが分かった.
  • 平田 恵子, 島村 保洋, 鈴木 敬子, 貞升 友紀, 伊藤 弘一
    2005 年 46 巻 6 号 p. 263-269
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    食品添加物酵素処理ステビアの成分分析法を開発した.分析条件を設定するため,まずグルコアミラーゼを用いて付加糖の加水分解条件を検討したところ,反応温度および時間は55℃,3時間,グルコアミラーゼ量は反応溶液10mL中250 Uが適切な条件であった.C18カートリッジカラムによる固相抽出法で試料から多糖類などの除去を行い,さらに加水分解して得られた配糖体および遊離糖をC18カートリッジカラムで分離し,それぞれの含有量をHPLCにより測定した.本法により,3試料を分析したところ付加糖としてグルコースが検出され,その含有量は25~42% であり,未反応配糖体含有量を除いた配糖体総含有量は35.7~52.5% であった.両含有量を合計した酵素処理ステビア成分含量は77.5~80.4% で,回収率(C18カートリッジカラム処理後の試料量を100としたとき)はすべて85% 以上であった.また,糖量に係数(×0.9)を乗じさらに乾燥物換算して得られた成分含量値は,すべての試料で80.0% 以上であり,日本食品添加物協会の規格値を満たした.
  • 笠間 菊子, 渡邉 敬浩, 鈴木 達也, 菊地 博之, 時下 祥子, 坂田 こずえ, 松木 容彦, 日野 明寛, 穐山 浩, 米谷 民雄
    2005 年 46 巻 6 号 p. 270-276
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換え(GM)食品の定量検査方法において,測定結果に影響を与えるさまざまな因子を調査するために,当該検査方法の外部精度管理を試験的に行った.外部精度管理試料は,重量混合比で遺伝子組換えダイズが0%, 1% および5% となるようダイズを調製した.試料は同一時期に協力参加機関に送付し,ELISA法または定量PCR法での分析および指定した書式に従った結果報告を依頼した.次いで,これらの報告について詳細な解析を行った.
    定量PCR法においては,回収された遺伝子組換えダイズ1% および5% 試料の測定値の総平均は,混合重量比に比べ大幅に低い値を示した.DNA抽出法の測定値への影響を検討したところ,多くの機関で実施されたシリカゲル膜タイプキット法に比べ,これ以外の方法を用いて行った機関の測定値は比較的混合重量比に近いことが判明した.これらの結果からDNA抽出法が定量PCR法の測定値に影響を及ぼすことが明らかとなり,DNA抽出法にシリカゲル膜タイプキット法を用いた場合,定量PCRの測定値が低くなる可能性が示された.ELISA法においては,回収された測定値の総平均は,予想された値に比べ若干高めではあったが重量混合比に近い値であった.
ノート
  • 今澤 剛, 飯田 智成, 松野 伸広, 加藤 文秋, 伊藤 武, 佐々木 久美子
    2005 年 46 巻 6 号 p. 277-281
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    農産物中のフェンメディファム(PM)を溶媒抽出後精製し,HPLCで測定する方法を開発した.PMの登録保留基準に係わる環境省告示試験法の分析法は,加水分解や誘導体化など,操作が煩雑な上ジクロロメタンなどの有害試薬が用いられている.そこで,試料にリン酸を加え粉砕後,アセトニトリルで抽出,塩析,脱水後,フロリジルカラム,SAX/PSAカートリッジで精製し,ODSカラム,移動相に水-アセトニトリル系を用い,235 nmにてHPLC測定した.ただしオレンジについては妨害ピークとの分離が不十分であったため,ENVI-Carb/NH2による精製を追加した.回収率は0.1および0.02 μg/g添加で80.8~98.7% であり,定量限界は0.01 μg/gであった.
  • 中里 光男, 松本 ひろ子, 粕谷 陽子, 安田 和男
    2005 年 46 巻 6 号 p. 282-285
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    諸外国でエビやカニの褐変防止剤として使用されている 4-ヘキシルレゾルシノールの分析法を検討した.試料から 4-ヘキシルレゾルシノールをメタノールで抽出し,抽出液を水で4倍に希釈した後,Sep-Pak Vac C18 カートリッジに負荷した.カートリッジは水およびメタノール-水(4 : 6)で洗浄した後,アセトニトリル-0.1% リン酸(55 : 45)で溶出した.HPLCによる分析では,カラムにODSを用い,移動相にはアセトニトリル-0.1% リン酸(6 : 4)を用いてきょう雑ピークとの分離を行い,検出は210 nmで行った.カニおよびエビに1.0および10 μg/gとなるように 4-ヘキシルレゾルシノールを添加し,添加回収実験を行ったところ,回収率はそれぞれ82.4~92.2% および88.9~91.8% と良好な結果が得られた.定量限界は試料当たり1.0 μg/gであった.
調査・資料
  • 藤田 和弘, 伊藤 裕信, 山口 隆宏, 米山 智, 仙石 清喜, 角谷 純通, 渡邉 慈, 水谷 優里, 広瀬 次雄
    2005 年 46 巻 6 号 p. 286-289
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    ローヤルゼリー中のテトラサイクリン系抗生物質(TCs)の分析法を検討し,評価のために5機関による共同実験を行った.オキシテトラサイクリン(OTC)による0.2および1.0 ppm濃度での添加実験による平均回収率は88および90%,室間再現性の相対標準偏差(RSDR)は13.7および7.8%,HORRATR値は0.7および0.5であり,0.25および0.80 ppm残留試料による試験結果は,平均回収率73および77%, RSDRは12.6および10.5%,HORRATR値は0.6および0.6と良好な結果であった.本分析法の定量下限は,OTC,テトラサイクリンで0.1 ppm,クロルテトラサイクリンで0.02 ppmあった.
  • 藤田 和弘, 秋田 慶子, 山口 隆宏, 米山 智, 仙石 清喜, 角谷 純通, 渡邉 慈, 水谷 優里, 大平 ひずる, 広瀬 次雄
    2005 年 46 巻 6 号 p. 290-293
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    ローヤルゼリー中のストレプトマイシンの分析法を検討し,評価のために6機関による共同実験を行った.0.2および1.0 ppm濃度での添加実験による平均回収率は89および96%,室間再現性の相対標準偏差(RSDR)は15.0および14.0%,HORRATR値は0.7および0.9であり,0.25および0.80 ppm残留試料による試験結果は,平均回収率113および99%,RSDRは15.0および10.4%,HORRATR値は0.8および0.6と良好な結果であった.本分析法の定量下限は,0.1 ppmであった.
  • 藤田 和弘, 大須賀 裕美, 藤木 崇広, 米山 智, 仙石 清喜, 角谷 純通, 渡邉 慈, 水谷 優里, 趙 晞瑛, 広瀬 次雄
    2005 年 46 巻 6 号 p. 294-297
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    ローヤルゼリー中のクロラムフェニコールの分析法を検討し,評価のために6機関による共同実験を行った.0.1および0.5 ppm濃度での添加実験による平均回収率は89および89%,室間再現性の相対標準偏差(RSDR)は10.5および6.8%,HORRATR値は0.5および0.4であり,0.25および0.80 ppm残留試料による試験結果は,平均回収率89および84%,RSDRは9.8および12.3%,HORRATR値は0.5および0.7と良好な結果であった.本分析法の定量下限は,0.05 ppmであった.
  • 佐藤 直之, 石井 敬子, 佐藤 昭男, 田中 康夫, 日高 利夫, 長岡 登
    2005 年 46 巻 6 号 p. 298-304
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    ウナギ加工品(蒲焼,肝串焼)52検体を試料として総水銀,メチル水銀の残留調査を行った.蒲焼,肝串焼の総水銀濃度はそれぞれ平均で0.21 ppm, 0.10 ppmであり,メチル水銀濃度は平均で0.085 ppm, 0.039 ppmであった.総水銀に対するメチル水銀の割合は,蒲焼では60~80%,肝串焼では35~65% のものが多かった.蒲焼,肝串焼ともに総水銀濃度が暫定的規制値を超えた検体のメチル水銀の割合は20% 以下と低い値であった.蒲焼の筋肉と皮を分けて測定した結果,皮の総水銀およびメチル水銀濃度は筋肉の約1/10~1/4の値であった.蒲焼,肝串焼1串当たりからの総水銀摂取量はそれぞれ平均で24.6 μg, 3.1 μgであり,メチル水銀摂取量は平均で10.4 μg, 1.2 μgであった.
  • 秋山 由美, 吉岡 直樹, 市橋 啓子
    2005 年 46 巻 6 号 p. 305-318
    発行日: 2005/12/25
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    2002年4月から2005年3月までに兵庫県内で市販された農産物592検体について232~323種類の農薬の残留実態調査を行った.痕跡値を含む農薬の検出率は,国内産で47%,輸入品で61% となり,農薬を検出した検体の約6割から複数の農薬が同時に検出された.残留濃度は,輸入柑橘類を除くと,延べ検出農薬数の約8割が0.05 μg/g未満であった.
    複数農薬の残留事例では,5種以上の農薬の同時残留が13検体で検出され,リスク評価の1つの指標として算出した基準値に対する残留値の比率の合計値が100% を超えるものが3検体あった.食品衛生法の残留農薬基準値を超過する検体はなかったが,ポジティブリスト制度の施行により,違反となる検体の比率は1.9% であった.
feedback
Top