食品衛生学雑誌
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47 巻, 6 号
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報文
  • 河村 葉子, 菅野 慎二, 六鹿 元雄, 棚元 憲一
    2006 年 47 巻 6 号 p. 243-248
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    食品中のエポキシ化大豆油(ESBO)の分析法についてCastleらの方法を基に検討したところ,食品由来の脂質によりESBOのエステル分解が阻害されやすく,また内標準の11,14-ジエポキシエイコサン酸エチルはより阻害を受けやすくばらつきがみられた.そこで,試料量を減じ標準添加法で定量したところ,添加回収率は87.1および 98.9% と良好であり,定量限界は5.0 μg/gであった.わが国の市販瓶詰食品について調査を行ったところ,瓶詰ベビーフードは14検体のいずれもESBOが検出されなかった.わが国の瓶詰ベビーフードの脂質含有量や流動性が低いため,ESBOの移行が起こりにくかったものと推定された.一方,脂質含有量が高いレバーペースト,パスタソース,ラー油漬けメンマおよびラー油の4検体からは25.7~494.0 μg/gのESBOが検出された.しかし,これらの食品によるESBO摂取量は,EUのTDIである1 mg/kg体重/日を上回ることはなく,安全性に問題はないと判断された.
  • 藤沼 賢司, 竹葉 和江, 鎌田 国広
    2006 年 47 巻 6 号 p. 249-253
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    肝蛭駆除剤として使用されているトリブロムサラン(TBS),オキシクロザニド(OCZ)およびブロムフェノホス(BFF)について,乳牛への投与試験を行い,TBS, OCZおよびBFFの代謝物である脱リン酸ブロムフェノホス(DBFF)の血漿中および乳汁への移行,残留について調査を行った.血漿中のTBS, OCZおよびDBFFは,ほぼ24時間後に最大濃度に達した後,指数関数的に減少した.また,乳汁中の3薬剤についても,血漿とほぼ同様の傾向を示した.さらに,TBSおよびBFFについては,休薬期間と実際の残留期間の差が極めて小さいことが明らかになった.
  • 田島 規子, 水野 安晴, 浜本 好子, 荒川 秀俊, 前田 昌子
    2006 年 47 巻 6 号 p. 254-257
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    ニッケルキレート生成を利用したグリカルピラミド(GB)分析法を確立した.種々条件検討した結果,キレート生成には0.08 mmol/L硝酸ニッケル,0.2 mol/L炭酸塩緩衝液(pH 9.0)を用い,測定は検出波長290 nmで行うこととした.GBの検量線は0.13~2.6 μg/mLの範囲で直線性(r=0.9999)が得られ,このときGB-ニッケルキレートの見かけのモル吸光係数εは8.5×103であった.この方法をポストカラム反応に用いるHPLC法に応用したところ,GBと鶏肝臓抽出物との分離検出が可能となり,添加回収率は79.4% (RSD=2.6%, n=3),定量下限は30 ng/gであった.本法はGB残留分析法に応用できると考えられた.また,キレート生成のモル比は GB : ニッケルイオン=2 : 1であった.
  • 堀内 隆史, 峯戸松 勝秀, 水野 安晴, 関谷 辰朗, 浜本 好子
    2006 年 47 巻 6 号 p. 258-262
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    ウシおよびブタの筋肉,肝臓,腎臓,脂肪,腸管中の残留メトクロプラミド(MCP)を検出するために,UV検出器を用いたイオンペアHPLC法を検討した.MCPは,アセトニトリルで抽出し,ヘキサンで脂溶性成分を除去した後に Oasis HLB カートリッジに負荷し精製した.MCPの検出限界は0.002 μg/g,定量限界は0.007 μg/gで,0.03 ppm添加時の回収率は,ウシ組織で74.1~93.3%,ブタ組織で 86.1~92.7% であった.この方法を用いて,MCP製剤を用法用量に従って投薬し,1日間休薬したウシおよびブタの組織中のMCP濃度を分析した.この結果,すべての組織のMCP濃度は,暫定残留基準値以下であることが示された.
  • 山口 昭弘, 清水 香織, 三嶋 隆, 服部 秀樹, 勝田 真一, 佐藤 秀隆, 上田 信男, 佐藤 昇志
    2006 年 47 巻 6 号 p. 263-267
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    牛個体識別を目的とした,簡便かつ迅速なDNA多型解析方法についての基礎検討を行った.市販牛肉8検体を用いて,プロテイナーゼK-ボイル法によりDNAを簡易抽出する方法を検討し,5種類の Short Tandem Repeat (STR) 多型マーカーについてPCR増幅後,DNAシーケンサ(SEQ)およびマイクロチップ電気泳動(MEP)を用いて解析した.各マーカーともSEQ解析で5~9アレル,MEP解析でも4~6アレルと十分な多型性を示した.簡便性と迅速性に優れたMEP解析による一次スクリーニングと解析精度の高いSEQ解析による確認検査を組み合わせることにより実用的な個体識別システムの構築が可能であると考えられた.
  • 酒井 綾子, 尾関 由姫恵, 佐々木 洋介, 鈴木 千尋, 増井 康子, 相原 真紀, 菊池 裕, 高鳥 浩介
    2006 年 47 巻 6 号 p. 268-276
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    国産玄米から分離したFusarium を材料としてDNA塩基配列による真菌の同定を行い,その実践上の有用性と限界について検討した.rRNA遺伝子内に存在する3領域,D2, ITS1およびITS2の塩基配列を解読し,米国のNCBIが管理するGenBankデータベースに登録されているDNA塩基配列と照合した.D2領域については,Applied Biosystems Fungal Library とも照合した.Fusarium を種レベルで同定または推定するには,少なくとも3領域すべてをデータベースと照合する必要があった.今回同定に供した株の約半数は,塩基配列のみから種の同定が可能であった.残りの株は,1株を除いて,DNA塩基配列に基づいて候補となる種を絞ることができ,形態学的手法による同定が容易になった.
  • 石井 里枝, 堀江 正一, 村山 三徳, 米谷 民雄
    2006 年 47 巻 6 号 p. 277-283
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた,ハチミツおよびローヤルゼリー中のオキシテトラサイクリン(OTC),クロルテトラサイクリン(CTC),テトラサイクリン(TC)の3種のテトラサイクリン系抗生物質(TCs)の簡便で精度の高い分析法を検討した.LC/MS/MS条件はポジティブモード,LC条件はカラムに L-column ODS を,移動相に 0.01% ギ酸-アセトニトリルを用いた.前処理法としてハチミツについては精製水で希釈後,ローヤルゼリーについては 2% メタリン酸-メタノール混液(6 : 4)で除タンパク後,それぞれ Oasis HLB, Sep Pak C18 で精製した.本法による定量下限値はハチミツでTCおよびOTCが 5 ng/g, CTC が10 ng/g, ローヤルゼリーで TC および OTC が 25 ng/g, CTCが50 ng/であった.また,添加回収率はいずれも 75~120% であった.
ノート
  • 芳野 恭士, 東 直樹, 古賀 邦正
    2006 年 47 巻 6 号 p. 284-287
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    トウモロコシのキシランから精製した酸性キシロオリゴ糖を,100または200 mg/kg体重の投与量でマウスに経口投与したところ,寒冷拘束ストレスによる胃粘膜の出血痕数が有意に低下した.また,酸性キシロオリゴ糖には,3.3~4.3 mg/mLの濃度範囲で濃度依存的なスーパーオキシドアニオンラジカル消去作用が認められ,そのIC50 値は3.5 mg/mLであった.酸性キシロオリゴ糖の示した抗酸化作用は,その抗胃炎作用に一部寄与しているものと考えられる.酸性キシロオリゴ糖の関連糖であるキシロース,キシロビオース,キシランおよびグルクロン酸には,100 mg/kg体重の投与量ではマウスの胃炎抑制作用は認められなかった.これらの結果から,少なくとも3量体以上の酸性キシロオリゴ糖には,マウスのストレス性胃炎を抑制する効果のある可能性が示唆された.
調査・資料
  • 藤川 浩, 矢野 一好, 諸角 聖, 木村 凡, 藤井 建夫
    2006 年 47 巻 6 号 p. 288-292
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    最近,私たちはロジスティックモデルを基本に新しい増殖モデルを開発した.本モデルは大腸菌,黄色ブドウ球菌など各種の微生物の変動温度下の増殖を高い精度で予測することができる.今回,この新ロジスティックモデルを用いて,これまで得られた微生物増殖データを基に各種の温度条件下での微生物増殖を予測するコンピュータプログラムを開発した.すなわち,本プログラム上で温度データなど必要事項を入力すると,対象微生物の増殖および毒素産生予測が瞬時にコンピュータ画面上に表示される.また,本プログラムは食品の製造・流通および衛生管理の関係者をユーザーと考え,数学モデルに関する知識を必要とせずに,また単純な操作で使えるように設計した.
  • 水野 安晴, 堀内 隆史, 関谷 辰朗, 田島 規子, 前田 昌子, 浜本 好子
    2006 年 47 巻 6 号 p. 293-296
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    鶏の肝臓中のグリカルピラミド(GB)の分析方法を開発した(投稿中).この分析方法が鶏の他の組織(筋肉,脂肪および腎臓)中のGB分析にも適用できることを確認した.鶏の筋肉,脂肪および腎臓におけるGBの添加回収率は,それぞれ 87.2% (CV 0.5), 91.3% (CV 4.7), 79.7% (CV 1.0) であった.GBの検出限界は0.01 ppmであった.GBを混合した飼料(飼料1 kg当たりGB 60 mg)を7日間与えた鶏における休薬期間(5日間)後の各組織(筋肉,脂肪,肝臓および腎臓)を分析したところ,どの組織においてもGBは検出されなかった.
  • 荻本 真美, 植松 洋子, 樺島 順一郎, 鈴木 公美, 伊藤 弘一
    2006 年 47 巻 6 号 p. 296-301
    発行日: 2006/12/25
    公開日: 2008/08/04
    ジャーナル フリー
    市販にがり17試料を対象として含有成分の分析を行い,第8版食品添加物公定書規格(案)と比較した.その結果,食品添加物「粗製海水塩化マグネシウム」の表示がある15試料中自主規格案のすべての規格値を満たしているものは5試料のみであった.さらにFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)で提案されている食品添加物規格における重金属の限度値まで分析することを目的とし,PbおよびCdについてキレート剤を用いた溶媒抽出,原子吸光分析法を検討した結果,限度値よりさらに低い (Pb: 0.5 μg/g, Cd: 0.05 μg/g) レベルまでの定量が可能となった.Ca, SO42-含量比から製造法を推測したところ,イオン交換膜法で製造されたにがりは,2試料のみで残り15試料は蒸発法によると推測された.今回の試料についてはいずれの製造法でも重金属類による汚染はないと考えられた.
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