食品衛生学雑誌
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48 巻, 5 号
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報文
  • 下田 博司, 田中 潤司, 関 あずさ, 本田 晴哉, 赤荻 誠一郎, 小松原 博文, 鈴木 信夫, 亀山 眞由美, 田村 理, 村上 啓寿
    2007 年 48 巻 5 号 p. 125-131
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    近年食品への使用が許可されたα-リポ酸は,錠剤やカプセル剤に配合されている.α-リポ酸はアジピン酸から合成されるが,精製および乾燥時に発生する重合物の安全性が懸念されている.そこで著者らは,α-リポ酸の熱変性重合物(LAP-A)およびエタノール変性重合物(LAP-B)の安全性と 1H-NMRおよびFAB-MSスペクトルによる構造解析について検討を行った.継続摂取試験において,雌雄マウスに対して,重合物を4週間混餌(0.1および0.2%) 摂取させた結果,用量依存性はないものの血中尿酸,カリウムおよび乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の上昇傾向が認められた.また,臓器重量では,肝臓の相対重量の増加が見られた.一方,LAP-B (500 mg/kg)を単回投与した雄性イヌにおいて,血液パラメーターや一般状態の異常な変化は認められなかった.これらの結果より,α-リポ酸重合物は急性毒性を示さないものの,継続摂取により肝および腎機能に影響を与えうる可能性が示唆された.
  • 橋本 博之, 眞壁 祐樹, 長谷川 康行, 佐二木 順子, 宮本 文夫
    2007 年 48 巻 5 号 p. 132-138
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    食品中の特定原材料を検出するためにMultiplex PCR (M-PCR)法を開発した.植物および特定原材料 (小麦,そば,落花生) を同時検出するM-PCR法を確立するために,植物DNA検出用プライマー対を4対設計した.設計した4種のプライマー対および公定法のプライマー対について,特定原材料3種に対する適用性を検討した.その結果,設計したプライマー対のPlant01-5'とPlant01-3'(増幅バンド長;161 bp)が植物検出用プライマー対として最適であった.この植物検出用プライマー対および公定法の特定原材料検出プライマー対を用い,特定原材料由来ゲノムDNAを鋳型とし,同一チュ―ブ内でM-PCRを行った.その結果,植物および特定原材料に特異的な4つの増幅バンドが検出され,それらは互いに区別可能であった.加工食品への適用性を検討した結果,表示特定原材料が良好に検出された.本法は簡便,迅速かつ安価に植物および特定原材料の遺伝子の検出が可能であった.
  • 伊吹 幸代, 浦西 克維, 宇野 正清
    2007 年 48 巻 5 号 p. 139-143
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    ジクロルボス(DDVP),トリクロルホン(DEP)およびナレド(BRP)のLC/MS/MSを用いた果実・野菜中の同時分析法を開発した.リン酸と無水硫酸ナトリウムを加え酢酸エチル抽出後,Envi-Carbミニカラムで精製した.試料検液は100%アセトニトリル溶液とし,不活性化処理済みバイアルを用いて,BRPおよびDEPからDDVPへの変化を防止した.LC/MS/MS条件はESI,ポジティブモードを,移動相には,酢酸-酢酸アンモニウム-メタノール系を用い,ODSカラムでグラジエント分析を行った.本法による8作物での0.1 μg/g濃度の添加回収率は,BRPは75.0∼91.8%,DDVPは70.2∼88.9%,DEPは77.3∼92.1%の良好な回収率が得られた.定量下限はBRPは1 ng/g,DDVPおよびDEPは2 ng/gであった.
ノート
  • 坂井 隆敏, 人見 ともみ, 菅谷 京子, 甲斐 茂美, 村山 三徳, 米谷 民雄
    2007 年 48 巻 5 号 p. 144-147
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)による,豚および牛組織中のβ-作動薬ラクトパミンの簡便かつ再現性の高い分析法を開発した.筋肉および肝臓の場合は,酢酸エチルによりラクトパミンを抽出し,得られた酢酸エチル層を減圧乾固後,残留物をアセトニトリル/n-ヘキサン分配により精製した.脂肪の場合は,アセトニトリル/n-ヘキサンにより分配抽出および精製を行った.精製後に得られたアセトニトリル層を減圧乾固し,残留物をメタノールに再溶解後LC/MS測定に供した.LCにおける分離は,分析カラムとしてWakosil-II 3C18HGカラム(150×3 mm i.d.),移動相として0.05%トリフルオロ酢酸-アセトニトリル(80 : 20)を用い,流速0.4 mL/minの条件で行った.MSにおける検出は選択イオン検出(SIR)モードにて行い,エレクトロスプレーイオン化法(ESI)により生じたラクトパミンの擬分子イオン(m/z 302)を検出した.本法による筋肉(0.01 μg/g添加),脂肪(0.01 μg/g添加)および肝臓(0.04 μg/g添加) からのラクトパミンの平均回収率(n=3)は,豚サンプルにおいてそれぞれ99.7%, 99.5%および100.8%,牛サンプルにおいてそれぞれ108.3%, 97.0%および109.4%であった.相対標準偏差は0.1∼9.5%の範囲であった.また,定量下限値は0.001 μg/g (1 ng/g)であった.
  • 小林 麻紀, 高野 伊知郎, 田村 康宏, 富澤 早苗, 立石 恭也, 酒井 奈穂子, 上條 恭子, 井部 明広, 永山 敏廣
    2007 年 48 巻 5 号 p. 148-152
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    農産物中のホルクロルフェニュロンの分析法について検討した.農産物中のホルクロルフェニュロンはアセトンで抽出した後,Chem Elutに負荷し,酢酸エチルで溶出した.次いで,Oasis HLBおよびBond Elut PSAに負荷し,メタノール-酢酸エチル混液で溶出して精製した.UV検出器(波長263 nm)を装着したHPLCにより,簡便に精度良く測定できた. 種々農産物に添加した場合の回収率は試料中の濃度が1.0 μg/gになるように添加したときの回収率は87.6∼99.5%であり,検出限界は0.005 μg/gであった.
  • 長南 隆夫, 藤本 啓, 上野 健一, 田沢 悌二郎, 小川 廣
    2007 年 48 巻 5 号 p. 153-158
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    食肉中(牛,豚,鶏の筋肉)に残留する動物用医薬品および飼料添加物(サルファ剤,ベンズイミダゾール系薬剤など28種29成分,以下動薬等)の簡便な一斉分析法を検討した.食肉中の動薬等を95%アセトニトリルで抽出し,アルミナカラムで精製後,アセトニトリル飽和n-ヘキサンで脱脂し,試験溶液を調製した.動薬等はグラジエント溶離法による紫外分光光度型検出器付きHPLCで分析した.本法で調製した試験溶液には測定妨害物が少なく,多くの動薬等で回収率は60%以上,定量限界値は0.01 μg/gであった.本法は,簡便かつ迅速で,残留基準におおむね対応できることから,これら動薬等の実用的なスクリーニング法と考えられた.
調査・資料
  • 本田 俊一, 市丸 俊一, 荒川 修, 高谷 智裕, 野口 玉雄, 石崎 松一郎, 長島 裕二
    2007 年 48 巻 5 号 p. 159-162
    発行日: 2007/10/25
    公開日: 2008/02/05
    ジャーナル フリー
    日本の伝統食品として珍重されているフグの鰭は,その食用可否について皮の毒性を基準として判断されている.しかし,実際にその毒性を調査した例は少ないため,皮が有毒であることが知られているナシフグ,ショウサイフグおよびマフグの3種について鰭と皮の毒性を調べた.ナシフグの毒力は皮が<5∼1,200 MU/gであったのに対し,鰭が<5∼52.4 MU/gで,鰭の毒力は皮に比べて低い傾向を示したが,皮と鰭における毒の主成分はいずれもTTXで,毒成分組成は変わらなかった.一方,ショウサイフグとマフグの毒力は鰭と皮で同程度であった.マフグの尾鰭を水洗いして乾燥させると,毒力は<10∼12.0 MU/gから16.5∼22.0 MU/gと見かけ上高くなったが,水分含量を補正すると試料の毒量に著しい減少は見られなかった.以上の結果から,皮が有毒とされるフグは鰭も毒性を示し,乾燥させても毒性は消失しなかったため,鰭は食用不可と判断された.
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