食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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49 巻, 4 号
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報文
  • 藤川 浩, 下島 優香子
    2008 年 49 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    最近開発したリアルタイムPCRを使った新たなサルモネラ生菌数推定方法[Fujikawa et al. J. Food Hyg. Japan, 47, 151-156 (2006)]の食肉およびその製品への適用を検討した。各種挽き肉およびハンバーグパテに各種濃度のサルモネラを接種し,密度勾配遠心後,本推定法で菌数を推定した。その結果,すべての食品の検量線はほとんど一致したため,単一の検量線で生菌数の推定ができることが示唆された。そこで全食品の平均値からなる検量線を用いた結果,各食品中のサルモネラ生菌数を非常に高い精度で推定できた。以上の結果から,本法は食品中の対象微生物の菌数推定に適用できることが示唆された。さらに,この方法を用いて保存鶏肉中のサルモネラ増殖を推定できた。
  • 小西 友彦, 赤木 浩一, 畑野 和広
    2008 年 49 巻 4 号 p. 266-271
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    LC/MS/MSによるヒト血清・尿中のヒヨスチアミンおよびスコポラミンの分析法について検討した.LC条件はODSカラムを用いて移動相に陽イオン分析用イオンペア試薬であるIPCC-MS3を添加し水-メタノール系でグラジエント分析した.イオン化はエレクトロスプレーイオン化ポジティブモードで行った.試料の前処理にはOasis HLBカートリッジおよびPSAカートリッジを用いた.血清・尿にヒヨスチアミンおよびスコポラミンを試料中濃度として0.2および10 ng/mLとなるように添加した場合の回収率は86.0~105%で,検出限界はいずれも0.02 ng/mLであった.本法を用いてチョウセンアサガオの喫食による中毒患者の血清4検体および尿3検体について分析した結果,血清からヒヨスチアミンおよびスコポラミンが0.45~3.5 ng/mL, 尿から170~670 ng/mLの範囲ですべての検体から検出された.
  • 坂本 義光, 多田 幸恵, 福森 信隆, 田山 邦昭, 安藤 弘, 高橋 博, 久保 喜一, 長澤 明道, 矢野 範男, 湯澤 勝廣, 小縣 ...
    2008 年 49 巻 4 号 p. 272-282
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    除草剤グリホサート耐性の性質を有する遺伝子組換え大豆(GM大豆)の安全性を確かめる目的で,ラットを用い,GM大豆および非遺伝子組換え大豆(Non-GM大豆)を30%の割合で添加した飼料による104週間摂取試験を行った.また大豆に特異的な作用を観察する目的で,一般飼料(CE-2)を大豆と同様の期間摂取させた.GMおよびNon-GM大豆群とCE-2群間には,検査項目の一部に差が見られたが,GM大豆群の体重,摂餌量,血液学的および血清生化学検査結果,臓器重量には,いずれもNon-GM大豆群と比べて顕著な差は認められなかった.組織学的にもGM大豆に特徴的な非腫瘍性病変や腫瘍性病変の発現や自然発生病変の発現率の増加は認められなかった.GM大豆の性状はNon-GM大豆と顕著な差はなく,飼料に30%まで添加し,104週間摂取させても障害作用はないものと考えられた.
  • 椛島 由佳, 上野 英二, 大島 晴美, 大野 勉, 斎藤 勲
    2008 年 49 巻 4 号 p. 283-293
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    2001~2005年度の愛知県における野菜・果実中の農薬残留データに基づき,ポジティブリスト制度下において効率的かつ効果的な監視・検査業務を行うための適切な食品および対象農薬の選択を可能にした.また,農薬検出率(分析試料数に対する農薬検出試料数の割合)の年次推移と傾向性,1試料当たりから検出された農薬の種類数について,国産野菜,国産果実,輸入野菜,輸入果実別に統計解析を行った.その結果,国産野菜における農薬検出率は5年間で減少傾向を示すこと(p <0.001),1試料当たりから検出された農薬の種類数は,他の3群と比較して国産果実において有意に高いことが判明した(p <0.001).また,ポジティブリスト制度下の基準値に照らして過去のデータを再判定し,“基準値の10%以下”,“基準値以下”,“基準値超過”に分類し,各検出農薬について3つの分類の割合の年次推移について統計解析を行った.その結果,5年間で基準値超過の割合は減少傾向を示し,基準値の10%以下の割合は増加傾向を示した(p <0.001).再判定した結果から,基準を超える可能性が高い農薬と食品を抽出した.
  • 渡邉 敬浩, 関野 理子, 白政 優子, 松田 りえ子, 米谷 民雄
    2008 年 49 巻 4 号 p. 294-302
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    代表的な非遺伝子組換えダイズ10品種を用い,遺伝子組換えダイズ(RRS)を対象とした定量PCR法により得られる定量値への影響を調査し,さらにその要因について検討した.その結果,粉体重量混合率を真値とすると,マトリクスとなる非遺伝子組換えダイズの品種よって定量値との間にバイアスが生じ,その大きさは品種依存的に変動することが明らかになった.一方で,DNA収量が品種により異なること,さらには,個別に抽出したDNAをその重量比として混合した試料を分析した場合には,混合率によく合致した定量値が得られることが明らかとなった.これらの結果から,定量PCRに供されるDNA溶液中に含まれるRRSならびに非遺伝子組換えダイズに由来するDNAの量比が,粉体重量混合率を保持しえないことが,粉体重量混合率と定量値との間に品種に依存したバイアスを生じる大きな要因であることが強く示唆された.
ノート
  • 青山 恵介
    2008 年 49 巻 4 号 p. 303-307
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    綿実は飼料原料として広く使用されているが,有害なゴシポールを含有している.しかし,飼料中のゴシポールの定量については公定法が定められていない.そこで,HPLCによる飼料中のゴシポールの分析法について検討を行った.酢酸-水-リン酸(85 : 15 : 1)を用いて100℃の水浴中で20分間抽出した後,抽出液をアセトン-水(1 : 1)で希釈したものを試験溶液としてHPLCに供し,紫外吸光光度検出器(254 nm)を用いて測定した.綿実および配合飼料を用いて添加回収試験を実施した結果,回収率は90.8~105.0%(RSD3.0%以下)であった.8試験室において共同試験を実施したところ,綿実に対する繰返し精度および室間再現精度は相対標準偏差(RSDrおよびRSDR)として3.3%および4.4%,また綿実を添加した配合飼料からの回収率の平均は87.0%, RSDrおよびRSDRは2.7%および5.5%と良好な結果が得られた.
  • 尾家 重治, 松坂 優己, 清永 博子, 前田 久美子, 神谷 晃
    2008 年 49 巻 4 号 p. 308-310
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    日本国で市販されているミネラルウォーターが,コンプロマイズド・ホストにとって微生物学的に安全か否かを検討した.日本国原産のミネラルウォーターは,調べた10製品中9製品(90%)では細菌および真菌がいずれも検出されなかったが,残りの1製品(10%)では1.8×103 cfu/mLの細菌が検出された.EU原産のミネラルウォーターは,12製品中1製品(8.3%)では細菌および真菌のいずれも検出されなかったが,残りの11製品(91.7%)では23~3.5×104 cfu/mLの細菌が検出された.一方,北米が原産のミネラルウォーターは,5製品中3製品(60%)では細菌および真菌のいずれも検出されなかったが,残りの2製品(40%)では2.3×102~2.5×103 cfu/mLの細菌が検出された.調べたミネラルウォーターの検出菌はBrevundimonas vesicularis, Moraxella spp.およびBurkholderia cepacia などのブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌であった.Pseudomonas aeruginosa の検出は見られなかった.以上から,無菌病室に入室しているコンプロマイズド・ホストにとっては,1社の製品を除く日本国原産のミネラルウォーターが微生物学的な観点から見ると飲用に適していた.
  • 長谷川 貴志, 西條 雅明, 石井 俊靖, 永田 知子, 配島 由二, 川原 信夫, 合田 幸広
    2008 年 49 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    強壮効果を謳った「いわゆる健康食品」からヒドロキシホモシルデナフィルおよびアミノタダラフィルとともにタダラフィル類縁物質が検出された。タダラフィル類縁物質は分取TLCで単離精製し,HPLC, LC-ESI-MS, FT-ICR-MS, およびNMRを用いて構造解析を行った。その結果,本物質はmethyl-1-(1,3-benzodioxol-5-yl)-2-(chloroacetyl)-2,3,4,9-tetrahydro-1H-pyrido[3,4-b]indole-3-carboxylateと判明した。本物質は「いわゆる健康食品」からは初めて検出された。
  • 上野 英二, 椛島 由佳, 大島 晴美, 大野 勉
    2008 年 49 巻 4 号 p. 316-319
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    253種類の農薬成分の保持時間,マススペクトルおよび検量線情報があらかじめ登録してあり,定性・定量用の標準品測定を行うことなく残留農薬の有無,およその濃度を確認することができるデータベースソフトウェアを用いたSCANモードGC/MSによる一斉分析法(SCAN法)を作成し,残留分析への応用を試みた.SCAN法により野菜・果実類などから26種類の農薬成分,延べ131成分を検出し,標準品測定を行うSIMモードGC/MSによる一斉分析法(SIM法)と定性結果はよく一致した.定量値の(SCAN法/SIM法)比は0.3~3.1(標準偏差0.63)と半定量法としておおむね満足すべき範囲にあった.適切な試料調製法を採用することによって,SCAN法はスクリーニング分析法としての実用性が示唆される結果が得られた.
調査・資料
  • 清水 晃, 中 峰松, 河野 潤一
    2008 年 49 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    兵庫県の3スーパーマーケットで市販されていた牛ミンチ肉,豚ミンチ肉および鶏ミンチ肉の黄色ブドウ球菌汚染状況を半年間にわたって追跡調査し,また分離株の性状を調べた.調査した3店舗の黄色ブドウ球菌の平均検出率は牛ミンチ肉77.8%, 豚ミンチ肉91.7%, 鶏ミンチ肉91.7%であった.汚染菌数(MPN法)は,2店舗ではいずれのミンチ肉も,多くの検体が46/g以下,1店舗は半数以上の検体が≥110/gを示した.分離した94株の生物型では53.2%がヒトに分布するHuman型で,コアグラーゼ型ではV型とVII型が全体の77.1%を占め,エンテロトキシン産生率は18.1%で,大多数がC型であった.PFGE法を用いた疫学解析では,(1)ミンチ肉の種類に関係なく,優勢に検出されていた菌型が,ある時期から他の優勢菌型に変換した店舗,(2)ミンチ肉の種類に関係なく,特定の菌型が調査期間中に繰り返し検出された店舗,(3)多彩な菌型が調査期間中に検出された店舗が見られた.
  • 坂牧 成恵, 中里 光男, 松本 ひろ子, 萩野 賀世, 平田 恵子, 牛山 博文
    2008 年 49 巻 4 号 p. 326-331
    発行日: 2008/08/30
    公開日: 2008/09/11
    ジャーナル フリー
    グレープフルーツジュース類(GFJ) 13製品,健康食品16製品および20種のかんきつ類についてフラノクマリン(FC)類の分析を行い,製品中の含有量と一日摂取量を調査した.GFJ中平均含量はベルガモチン(BG) 7.7 μg/g, 6',7'-ジヒドロキシベルガモチン(DHB) 3.7 μg/g, ベルガプトール(BT) 8.8 μg/gであり,GFJ 200 mLを飲用すると,BG 1.5 mg, DHB 0.75 mg, BT 1.8 mgが摂取されると推定された.健康食品では,5製品からFC類を検出し,一日最大0.34 mgのBTを摂取することが推定された.また,スイーティ,メローゴールド,晩白柚などのかんきつ類ではFC類を含有していた.薬剤相互作用の点からは,GFJ以外にも他のかんきつ類や健康食品の摂取についても注意が必要と考えられた.
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