食品衛生学雑誌
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49 巻, 6 号
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報文
  • 梶田 弘子, 畠山 えり子
    2008 年 49 巻 6 号 p. 381-389
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた畜水産食品中の動物用医薬品98成分の一斉分析法を検討した.試料をメタノールで抽出,水で希釈後,50%メタノール濃度に調整した溶液を孔径サイズ0.02 μmの精密ろ過膜で精製し,LC/MS/MSで測定した.0.2 μg/g濃度での添加回収試験の結果,すべての試料において50~150%の回収率が得られたものは87成分で,変動係数も20%未満であった.抗生物質が検出された試料を用いて,本法と公定検査法を比較したところ,分析値がほぼ一致し,十分な真度で分析可能であった.本法は畜水産食品中の動物用医薬品の残留分析におけるスクリーニング法として有用と考える.
  • 上野 英二, 椛島 由佳, 大島 晴美, 大野 勉
    2008 年 49 巻 6 号 p. 390-398
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    さまざまな畜水産物に対応可能な頑健性を有し,高感度かつ定量性に優れた残留農薬の多成分分析法を検討した.固体試料はアセトン/ヘキサン,液体試料はアセトニトリルで抽出し,GPCにおいて脂質成分などが重なって溶出する農薬画分のみを選別してグラファイトカーボン/PSA 2層式カラムにより精製したのち,NCI-SIM/スキャンモードGC/MSにより測定して定性した.さらに,フロリジルカートリッジカラムにより精製/分画したのち,デュアルカラムGC-μECDにより測定して定量した.添加回収率は,クロロタロニルなど5成分を除いて,76.8~107.9%(相対標準偏差<9.7%)と良好であった.
ノート
  • 望月 直樹, 青木 恵理, 須賀 啓子, 石井 里枝, 堀江 正一
    2008 年 49 巻 6 号 p. 399-402
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    プロポリスエキス(エタノール抽出液)中のクロラムフェニコール(CAP)のLC/MS/MSを用いた分析法を検討した.前処理はプロポリスエキスを精製水で希釈後,塩化ナトリウムを加え塩析を行い,Oasis HLBにて精製を行った.LC条件は逆相カラム(Mightysil RP-18 GP Aqua, 2.0 mm×150 mm, 5 μm)を用い,移動相は10 mmol/L酢酸アンモニウム水溶液-アセトニトリル(75 : 25), 0.2 mL/minのアイソクラティックで行った.MSのイオン化はESIのネガティブモードで行った.本分析法によるプロポリスエキス中CAPの検出限界は0.05 ng/g, 定量下限は0.15 ng/gとなり,0.5 ng/gでの回収率は111.2%であった.本分析法を用いて,市販されているプロポリスエキス8検体を分析したところ,すべての検体においてCAPは不検出であった.
  • 高橋 邦彦, 堀江 正一, 広瀬 義文
    2008 年 49 巻 6 号 p. 403-406
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    GC/MSを用いた農産物中のジフェニル(DP)およびオルトフェニルフェノール(OPP)の簡便な分析法を検討した.DPおよびOPPは無水硫酸ナトリウム-酢酸エチルで抽出し,n-ブタノールを加えて濃縮した.精製はグラファイトカーボン(Supelclean ENVI-Carb)を加えて振とうすることにより行った.ポリエチレングリコールを添加することによりGC分析におけるOPPのピークのピーク形状が改善されシャープなピークが得られた.9種の農産物に0.01および0.5 μg/g添加したときの回収率は,OPP 0.01 μg/g添加大麦の約50%を除き,おおむね70~120%以内であった.DPおよびOPPの定量限界(S/N ≥10)は0.0013および0.005 μg/g(大麦および大豆は0.0025および0.01 μg/g)であった.
  • 秋場 哲哉, 田中 達也, 新井 輝義, 林 志直, 森 功次, 野口 やよい, 永野 美由紀, 吉田 靖子, 矢野 一好
    2008 年 49 巻 6 号 p. 407-410
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    食中毒関連検査において,食品からノロウイルス(NV)が検出される事例は非常に少ない.これは,食品成分由来の夾雑物の影響や,微量に含まれるNVを効率よく回収することが難しいためと考えられる.今回筆者らは,細菌(Klebsiella oxytoca)を利用して食品成分由来の夾雑物を分解,消化する前処理法を考案し,有用性の検証を試みた.NVを添加したカキ乳剤18検体,他の食品乳剤15検体を用いて,添加したNVをリアルタイムPCRによって検出し,その回収率を求めた.その結果,厚生労働省通知による処理法ではカキからの平均回収率はGI/8で0.3%, GII/13で0.5%, 他の食品はそれぞれ1.9%, 7.9%であったのに対し,細菌を用いた前処理を行った場合ではカキは8.6%, 11.6%, 他の食品では13.9%, 19.6%に上昇した.以上の検査結果から,細菌を利用した前処理法は食品からのNV検出のための有効な手法であると考えられた.
  • 藤田 瑞香, 田口 修三, 尾花 裕孝
    2008 年 49 巻 6 号 p. 411-415
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    食品中に残留するサルファ剤25成分を高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC/MS/MS)により測定する一斉分析法を検討した.ガラスビーズ粉砕法により抽出を行い,抽出液をODSと塩基性アルミナを連結した固相抽出カラムに通過させる精製方法により,迅速な前処理が可能となった.食品への添加回収試験の結果,一部を除き平均回収率は70~120%,相対標準偏差は15%以下と良好であった.また,定量下限は0.0025~0.005 μg/gであり,食品中の妨害成分の影響を受けない迅速かつ高精度な試験法を確立することができた.
調査・資料
  • 藤田 光穂, 田村 航, 戸澤 孝大, 米谷 俊
    2008 年 49 巻 6 号 p. 416-421
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    加工食品の安全性を確保するため,由来および加工工程の異なる加工食品への一斉分析の適用を試み,検討した.
    分析対象化合物は過去の違反事例や自社使用原料の調査情報などから検出の可能性が高い89化合物を選択した.LC/MS/MSを用い分析条件として幅広い極性の化合物に対応できるC18カラムを使用し,移動相として0.1%ギ酸水溶液と0.1%ギ酸含有アセトニトリルの組み合わせでグラジエント分析を行うことにより,良好なピーク形状とシグナル強度が得られた.
    本法を用いて,牛・鶏・エビ・乳・イカの加工食品で添加回収試験を行ったところ,試料により差はあるものの89化合物中79~89化合物で回収率60~120%,変動係数30%以下であり,加工食品のスクリーニング検査に適用可能であることが確認された.
  • 門田 信幸, 成田 弘子, 村上 りつ子, 野口 玉雄
    2008 年 49 巻 6 号 p. 422-427
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2009/01/21
    ジャーナル フリー
    日本海側の富山湾に生息するヒトデ類9種179個体を2002年7月~2004年5月に採集し,マウスアッセイによる毒性試験およびLC/MS分析による成分組成を調べた.
    その結果,Astropecten 属のトゲモミジガイ,モミジガイ,ヒラモミジガイにのみ毒性が認められ,なかでもトゲモミジガイの毒性が最も強く,最高毒性値75.4 MU/gを示し,1年を通じて毒性が認められた.3種の有毒ヒトデからテトロドトキシンとその関連物質が検出された.
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