食品衛生学雑誌
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52 巻, 5 号
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報文
  • 上井 恵理, 寺田 岳, 秋山 純基, 一色 賢司
    2011 年 52 巻 5 号 p. 271-275
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    各種抗菌物質がヒスチジン脱炭酸酵素の活性に及ぼす影響を検討した.Morganella morganii NBRC3848の粗酵素液を調製し,酵素活性に及ぼす影響を評価した.45種類の供試試料のうち26種類を作用させると酵素活性が有意に( p<0.05)低下したため,26種類の供試試料が酵素活性を阻害していると考えられた.しかし,これらの供試試料がヒスチジンおよびヒスタミンを分解した可能性があるため,ヒスチジンおよびヒスタミンを反応させた後の回収率を測定した.次亜塩素酸ナトリウムでは両物質の回収率は0%となり,過酢酸では2~3割の回収率の低下が見られたが,後者は酵素活性を阻害していると考えられた.その他の25種類の供試試料では,ヒスチジンおよびヒスタミンの回収率はほぼ100%となった.そのため,25種類の物質が酵素活性阻害能を有していることが明らかとなった.
ノート
  • 上井 恵理, 寺田 岳, 秋山 純基, 一色 賢司
    2011 年 52 巻 5 号 p. 276-280
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    精油成分蒸気を利用したヒスタミン産生菌の制御の可能性を検討した.14種類の精油成分蒸気のヒスタミン産生菌 で あ るMorganella morganii NBRC3848お よ びRaultella planticola NBRC3317の2菌株に対する最小発育阻止量(MID)を測定し,精油成分蒸気がヒスタミン産生菌の制御に利用可能か検討した.14種類の精油成分のうちアリルイソチオシアネート(AIT)およびサリチルアルデヒド(SA)の2種類が両者に対して高い抗菌効果を示した.M. morganii NBRC3848 および R. planticola NBRC3317を接種したメバチマグロおよびサバをAITおよびSAを充填して貯蔵したところ,魚肉中の一般生菌数の増殖,ヒスタミン産生菌の増殖および魚肉中に蓄積するヒスタミン量が抑制された.ヒスタミン食中毒を防ぐためには,食品の基本的な温度管理が重要であるが,食品中のヒスタミン産生菌の制御にAITおよびSAを利用することが,ヒスタミン食中毒を防止するために有効であると考えられた.
  • 山口 瑞香, 柿本 健作, 山口 貴弘, 尾花 裕孝
    2011 年 52 巻 5 号 p. 281-286
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    LC-MS/MSを用いた畜産物中のポリエーテル系抗生物質およびマクロライド系駆虫薬一斉分析法を検討した.試料にアセトニトリルを加えて抽出し,分散固相抽出とシリカゲル固相抽出カラムを用いて精製を行った.10検体を約3時間で前処理することができ,迅速一斉分析が可能であった.畜産物での添加回収試験を実施した.マトリックス添加検量線を用いた定量結果は,牛肝臓のナラシンおよび牛乳のナラシン,ラサロシドを除き真度は70~117%,相対標準偏差はガイドラインの目標値以内と良好であった.また,定量下限は0.00005~0.0005 μg/gであった.
  • 八津川 洋一, 飯田 華子, 永田 和子, 宮本 雅史, 松田 高博, 伊藤 裕信, 中村 宗知, 藤田 和弘
    2011 年 52 巻 5 号 p. 287-293
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    セレウス菌嘔吐毒であるセレウリドのLC-MS/MSによる分析法を開発した.試料にはチャーハン,焼きそば,小豆あんおよび乳児用粉ミルクを用い,メタノールで抽出後,Oasis HLBカートリッジにより精製し,試験溶液とした.LC-MS/MSの移動相にはギ酸アンモニウム含有のギ酸溶液およびメタノールの混液を採用し,ESI(+)で測定した.開発した分析法の性能評価を実施したところ,すべての試料において真度70%以上,併行・室内精度10%以下の結果が得られた.なお,定量限界は1 μg/kg以下と見積もられた.
  • 齊藤 静夏, 坂井 隆敏, 根本 了, 松田 りえ子
    2011 年 52 巻 5 号 p. 294-298
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    畜水産物およびはちみつ中のピンドン分析法として,酢酸酸性下アセトンで抽出し,ヘキサンで転溶後,アセトニトリル/ヘキサン分配,シリカゲルミニカラムおよびODSミニカラムで精製してLC-MS/MSで定量および確認する方法を開発した.牛の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓,鶏の筋肉,さけ,うなぎ,しじみ,鶏卵,牛乳およびはちみつの10食品を用いて添加濃度0.001 mg/kgで添加回収試験を行った結果,真度76~92%,併行精度4~8%の良好な結果が得られた.本法を用いた試料中のピンドンの定量限界(S/N≥10)は,いずれの食品においても0.001 mg/kgであった.
  • 森田 幸雄, 古茂田 恵美子, 小野 一晃, 熊谷 進
    2011 年 52 巻 5 号 p. 299-303
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    ステンレスネジ山の表面に塗布した非チフスサルモネラ(NTS)のバイオフィルム産生株2株およびバイオフィルム非産生株2株の乾燥状態における生存性を調査した.NTSを109 cfu/mLに増菌したトリプトソイおよび卵黄液5 μLを六角ボルトの雄ネジの表面に塗布した.菌液塗布後,雌ネジを雄ネジにねじ込んだ後,離したものをセパレートタイプ,ねじ込んだままのものをユニットタイプとした.この2つのタイプを20.0~25.0℃,湿度2~15%に保持し,定期的にNTS数を算出した.バイオフィルム産生株は336日経過後においてもすべての検体(8検体) から検出された.しかし,非産生株は336日経過後で8検体中2検体からのみの検出であった.ネジ山表面に塗布したNTSは約1年間生存したことから,溝や平面でない表面がある施設・器具にNTSが汚染した場合,NTSは長期間施設・器具に生存することが判明した.また,二次汚染の危害はバイフィルム非産生株より産生株のほうが高いと思われた.
  • 石原 三知代, 藤田 和弘, 伊藤 裕信, 松田 高博, 八津川 洋一, 中村 宗知, 坂井 隆敏, 根本 了
    2011 年 52 巻 5 号 p. 304-308
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    LC-MS/MSによる畜水産物中のベダプロフェン(VPF)の分析法を開発した.試料中から酸性アセトンでVPFを抽出し,この抽出液に塩化ナトリウム溶液を加えて酢酸エチルに転溶した.精製は弱陰イオン交換カートリッジ(Bond Elut DEA)を用いて行った. 測定条件として, 分析カラムはC18, 移動相はアセトニトリル-0.0025 mol/Lギ酸溶液(3 : 2),イオン化モードはESIのネガティブモードを用いた.検量線は,0.001~0.1 μg/mLの範囲で良好な直線性を示した.馬筋肉,牛筋肉・肝臓・脂肪,さけ,うなぎ,しじみ,牛乳,鶏卵および蜂蜜(そば蜜)の10試料用いて添加回収実験を行った結果,平均回収率は72~94%,併行精度(RSD%)は1.1~2.0%の良好な結果が得られた.本法による定量限界は,0.001~0.007 μg/gであった.
調査・資料
  • 阿部 裕, 六鹿 元雄, 平原 嘉親, 河村 葉子
    2011 年 52 巻 5 号 p. 309-313
    発行日: 2011/10/25
    公開日: 2011/12/27
    ジャーナル フリー
    ポリ塩化ビニル(PVC)製品中のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル),フタル酸ジブチル,フタル酸ベンジルブチル,フタル酸ジイソノニル,フタル酸ジイソデシルおよびフタル酸ジ-n-オクチルの試験法を検討した.測定にはGC/MSをSIM条件下で用い,定量イオンとしてDBP,BBPおよびDEHPにはm/z 149,DNOP,DINPおよびDIDPにはm/z 279,293および307を用いることにより分別定量が可能であった.また,添加回収試験により抽出法および溶解法は試験溶液の調製法としていずれも有用であることが確認された.一方,GC/MS測定には,試料溶液に混入するPVCのマトリックス効果により測定値がばらつくという問題点があり,それを抑制するためには試験溶液の希釈が有効であった.9機関による共同試験を実施したところ,機関内再現性は良好であったが,一部機関では測定値がばらつくことがあった.したがって本法により合否判定を行うことは難しいものの,試料中のフタル酸エステル含有量を明らかとする方法としては十分な実用性を有すると考えられた.
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