食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
Print ISSN : 0015-6426
ISSN-L : 0015-6426
53 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
報文
  • 新藤 哲也, 貞升 友紀, 鈴木 敬子, 田中 康一, 外川 明子, 中嶋 順一, 中里 光男, 植松 洋子
    2012 年 53 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    R40使用表示のある中国産乾燥いちごから検出された2種類の不明赤色色素(AおよびB)について化学構造の解明を行った.赤色色素AはUV-VISスペクトルおよびMSスペクトルなどから,R40製造時に生成することが知られている4種類の副成色素の一つであるクレシジンスルホン酸アゾR塩色素であると同定した.また,赤色色素BはMSおよびNMRを用いて構造解析を行った結果,R40とスルホン基の結合位置が異なる異性体で,これまでに報告のない3-ヒドロキシ-4-(2'-メトキシ-5'-メチル-4'-スルホナトフェニルアゾ)-2-ナフタレンスルホン酸二ナトリウムであると決定した.これらの2種の赤色色素AおよびBはいずれも乾燥いちごに添加されたR40由来であると考えられた.
  • 嶋倉 邦嘉, 綿谷 ゆきな, 塩見 一雄
    2012 年 53 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    サケ類のアレルギー表示は遡河型のみが対象となっている.本研究では,サケ類Oncorhynchus masou masouの陸封型(ヤマメ)と遡河型(サクラマス)のアレルゲンを比較した。SDS-PAGE分析により,主要アレルゲンであるパルブアルブミンの含量はヤマメのほうが高いことが示唆され,ELISAによる定量(ヤマメ:1.8~7.8 mg/g,サクラマス:0.28~0.52 mg/g)で裏づけられた.また,患者血清を用いたELISAでは,ヤマメ抽出液のほうが強いIgE反応性を示した.次に,ヤマメおよびサクラマスから,それぞれ3成分のパルブアルブミンをゲルろ過,逆相HPLCにより精製した.逆相HPLCにおける保持時間およびMALDI/TOF-MSにより測定した分子量から,両魚種は同じパルブアルブミンアイソフォームを含むと考えられた.以上の結果から,アレルゲン性はヤマメのほうがサクラマスより高いと推測された.
  • 久保田 浩樹, 箕川 剛, 小関 良宏, 佐藤 恭子, 穐山 浩
    2012 年 53 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    国内で流通する食品添加物ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)の成分について,TLCおよびLC-MSを用いて質的,量的に解析した.ステアロイル乳酸(SL)およびステアロイルラクトイル乳酸(SLL)の標準試薬は,TLCおよびシリカゲルクロマトグラフィーを用いてSSLより単離精製し実験に用いた.SSLの成分は,乳酸が8.4%,ステアリン酸が15%,ステアロイル乳酸が57%,ステアロイルラクトイル乳酸が13%であった.本解析で得た成分比から求めたSSL中の乳酸量は,JECFAの総乳酸試験で求めた総乳酸量の実測値と近似した.
  • 阿部 裕, 山口 未来, 六鹿 元雄, 平原 嘉親, 河村 葉子
    2012 年 53 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    わが国で流通するポリ塩化ビニル(PVC)製玩具101検体の可塑剤使用実態を調査した.指定玩具からは,いずれのフタル酸エステルも検出されず使用は認められなかったが,指定玩具以外の半数以上からフタル酸ビス(2-エチルヘキシル),フタル酸ジイソノニル,フタル酸ジイソブチル,フタル酸ジブチル,フタル酸ジイソデシル,フタル酸ベンジルブチルが検出された.また,フタル酸エステルの代替可塑剤として2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート,o-アセチルクエン酸トリブチル,アジピン酸エステル,ジアセチルラウロイルグリセロールなども検出された.さらに構造解析の結果,国内では今までに報告例がないテレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル),クエン酸トリブチル,1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルおよびネオペンチルグリコールエステル類の含有も認められた.このように,指定玩具に使用される可塑剤はフタル酸エステルから代替可塑剤へ移行しており,その種類も増加していることが明らかとなった.
  • 六鹿 元雄, 建部 千絵, 平原 嘉親, 河村 葉子
    2012 年 53 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    ヘッドスペースGC法を用いた洗浄剤中のメタノール試験法を確立した.試料1 gに内部標準として2-プロパノールを0.4 mg加え,さらに水を加えて20 mLとした.この試験溶液5 mLをヘッドスペース用バイアルに採り,密封した.60℃で30分間加温後,ヘッドスペースガスをGC-FIDで測定した.試料に1 mg/gのメタノールを添加した際の回収率は95.6~100.6%であり,定量限界は0.1 mg/gであった.本法を用い14種の洗浄剤についてメタノール含有量を調査した結果,2検体から検出され,その量は0.13および0.27 mg/gであった.
  • 王 俊杰, 荒木 泰一朗, 辰野 竜平, 新名 真也, 池田 光壱, 高谷 智裕, 荒川 修
    2012 年 53 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    トラフグとマフグの人工交雑個体にフグ毒テトロドトキシン(TTX)を投与し,毒の体内移行プロファイルについて検討した.シリンジを用いてTTX添加飼料を強制的に経口投与したところ,24時間後までは消化管の毒量(組織1 g当たり)が急速に減少し,これに呼応して肝臓の毒量が増加したが,その後は肝臓の毒量が漸減するとともに,皮への毒の移行が見られた.一方,筋肉内投与した場合,TTXは血液を介して速やかに肝臓と皮に移行した.各部位の蓄積毒量(投与毒量に対する相対値)を見ると,経口投与,筋肉内投与ともに8時間後以降は肝臓が23~52%と最も多く,72時間後以降は皮(11~21%)がこれに次いだ.
ノート
  • 佐藤 徳子, 杉浦 義紹, 田中 敏嗣
    2012 年 53 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    GMダイズ検査において,通知法に収載されているDNA抽出キットのうちGM quickerとその他のキットから得られるDNAの品質とキットの簡便性を比較検討した.DNAの品質はDNA溶液の吸光度と内在性遺伝子であるレクチン遺伝子のコピー数を指標に,簡便性は抽出開始からリアルタイムPCRに供するDNA溶液を得るまでの作業時間を指標にして評価した.穀粒ではGM quickerが品質・簡便性共に他の抽出法より優れていたが,加工品への応用では通知法どおりに行うと良好な結果が得られなかった.加工品用キットGM quicker3を用いた場合品質の良いDNAが抽出できたため,GM quicker3用プロトコルでGM quicker とその付属の試薬を用いて加工品からの抽出を試みたところ品質・簡便性共に大幅に改善された.以上のことからGM quicker用プロトコルを一部変更することでGM quickerは加工品にも適用可能であり,GMダイズ検査キットとしてその有用性が明らかになった.
  • 屋方 光則, 倉光 良造, 甲斐 茂浩, 工藤 尚史, 矢本 亮介, 松尾 信吾
    2012 年 53 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    エテホンは植物成長調整剤として多くの作物に利用されている.飼料中のエテホンの残留基準値は国内では設定されていないが,飼料に利用される作物の多くにエテホンは使用されており,飼料に残留するエテホンについて信頼性のある分析法が求められていた.そこで,国内の食品中の最低残留基準値から諸外国の飼料中の残留基準値の範囲を測定可能な分析法の確立を目的として,GC-FPDを用いた分析法の検討を行った.酢酸エチル–塩酸(100 : 1)を用いて30分間振とう抽出した後,抽出液のメチル化操作を3回繰り返して行い,ミニカラム(グラファイトカーボン,シリカゲル)で精製後GC-FPDに供し測定した.4種類の飼料を用いて単一試験室内で添加回収試験を実施した結果,回収率は78.8~89.3%であった.分析法の性能評価のため,3種類の飼料を用いて7試験室において共同試験を実施した.平均回収率は81.8~90.8%,併行および室間再現精度は相対標準偏差(RSDrおよびRSDR)として6.4%以下および11%以下,HorRat値は0.58~0.94であり分析法の妥当性が確認された.
  • 金子 令子, 羽石 奈穂子, 河村 葉子
    2012 年 53 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    食品用の,塩素を含むゴム材質中の2-メルカプトイミダゾリン分析法の検討を行った.公定法のTLC法では測定値を数値化できないため定量ができないという問題があった.そこでHPLCによる測定を検討した結果,移動相を水–メタノール(9 : 1)とし,またメタノール抽出溶液に水を加えて50%メタノール溶液とすることにより妨害ピークの影響を抑え,試験溶液で2 μg/mLまで良好に測定できることを確認した.GC-MSについては5 μg/mL,LC-MSについては1 μg/mLまで,いずれもSCANモードでスペクトル確認が可能であった.試験溶液の調製法については,試料を共栓付フラスコに入れメタノール20 mLを加え密栓し約40℃で一夜放置する浸漬抽出法が,公定法のソックスレー抽出法とほぼ同等以上の測定値が得られ簡便であった.以上の結果より塩素系ゴムの2-メルカプトイミダゾリンは,浸漬抽出法により試験溶液を調製し,HPLCで定量を行い検出された場合はGC-MS,LC-MSのいずれかで確認することが適当であると考えられた.
調査・資料
  • 荻本 真美, 鈴木 公美, 樺島 順一郎, 中里 光男, 植松 洋子
    2012 年 53 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    ベーキングパウダーを使用した菓子・パン類,ミョウバンを使用した食品として野菜加工食品,海産物などを中心とした105試料について,食品中のアルミニウム(Al)含有量調査を行った.菓子・パン類は57試料中26試料で0.01~0.37 mg/g,小麦粉調製品は6試料中3試料で0.22~0.57 mg/g,野菜加工食品は3試料すべてで0.01~0.05 mg/g,海産物は6試料中4試料で0.03~0.90 mg/g,即席めんは11試料中3試料で0.01~0.03 mg/g,春雨は4試料中3試料で0.04~0.14 mg/g,大豆は不検出,大豆加工食品は16試料中1試料で0.01 mg/gのAlが検出された(定量限界0.01 mg/g).週一度摂取すると体重16 kgの幼児のPTWIに相当するものが,菓子類2試料,小麦粉調製品2試料,くらげ1試料の5試料あった.以上の結果から,子供,特に幼児では製品や喫食量により,PTWIを超過する可能性があることが示唆された.
妥当性評価
  • 浦西 克維, 山下 浩一, 山本 圭吾
    2012 年 53 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 2012/02/25
    公開日: 2012/03/09
    ジャーナル フリー
    超臨界流体抽出による野菜・果実中の残留農薬分析法を検討した.ペースト状に細切均一化した試料を吸水性ポリマーおよび珪藻土と混和させた後,抽出容器に充填し,超臨界状態の二酸化炭素で抽出操作を実施した.抽出成分をアセトンに溶解させ,ミニカラム(グラファイトカーボン)で精製した.測定はGC-MS/MSを用い,試験溶液のマトリックス効果の影響を加味し,マトリックス検量線で定量した.5種の農産物について334農薬,添加濃度0.01および0.1 μg/gにおける妥当性評価(2試行×5日)を実施した結果,189農薬が真度,精度の目標値を満たした.また,71農薬は真度が50~70%である一方,精度は目標値を満たした.本法は精度,迅速性に優れ,さらに簡易である点において,野菜・果実中の残留農薬分析法として利用可能と考えられる.
feedback
Top