食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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56 巻, 5 号
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報文
  • 西﨑 雄三, 多田 敦子, 石附 京子, 伊藤 裕才, 小野田 絢, 杉本 直樹, 穐山 浩
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 185-193
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    既存添加物ジャマイカカッシア抽出物中のクアシンおよびネオクアシンを,4-ヒドロキシ安息香酸(4HBA)とのモル吸光係数比(S/M)を利用し,HPLCを用いる新規定量法を開発した.4HBAとクアシンおよびネオクアシンの混合液を,定量NMR(qNMR)を用いてモル比(M)を,HPLCを用いて吸光度比(S)を算出し,4HBAに対するクアシンおよびネオクアシンのS/M,0.84および0.85を求めた.添加物製品中のクアシンおよびネオクアシンを直接qNMRを用いて定量した値と,純度既知の4HBAを内標準物質として,S/MとHPLCを用いた定量値との差は,1.2%以下で有意な差異はなかった.本分析法は,添加物や加工食品中のクアシンおよびネオクアシンの定量に適用可能であることが示された.
  • 小林 征洋, 掛本 聖子, 嶋倉 邦嘉, 塩見 一雄
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 194-199
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    アニサキス第III期幼虫が魚類やイカ類とともにヒトに摂取された場合,時としてIgEを介したアレルギー症状を誘発することがある.これまで13種類のアニサキスアレルゲンが同定されているが,複数の未知アレルゲンの存在も示唆されている.本研究では,第III期幼虫から構築した発現型cDNAライブラリーの化学発光抗体スクリーニングを行い,IgE反応性を有する新規クローンを単離した.本クローンは217残基よりなる23.5 kDaのタンパク質(Ani s 14)をコードしており,その領域4~147はAni s 7の領域796~940と31%,領域34~123はAni s 12の領域2~91と32%の配列相同性を示した.26名のアニサキスアレルギー患者のうち14名(54%)が,大腸菌で発現した組換えAni s 14にIgE反応性を示した.Ani s 14はアニサキスアレルギー患者に特異的な新規主要アレルゲンである.
  • 杉浦 潤, 中島 正博
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 200-204
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    人工甘味料サッカリンナトリウムおよびアセスルファムカリウムについてHPLCを用いた新規分析法を開発した.本研究において,凝集沈殿剤を試料の前処理に用いたところ,試料抽出液中に分散している微粒子を容易に取り除くことができ,簡単な前処理でHPLCに導入することができた.本法により得られたサッカリンナトリウムおよびアセスルファムカリウムの回収率は,96~101%,併行精度は1%以下,室内精度は2%以下であり,定量限界値はサッカリンナトリウムで0.025 g/kg,アセスルファムカリウムで0.025 g/kgであった.また試験液の調製に要する時間は20分程度と透析法と比較し非常に短かった.
  • 今井 浩一, 尾上 恵子, 石井 里枝, 髙野 真理子, 根本 了, 手島 玲子
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 205-210
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    LC-MS/MSを用いた農産物および畜水産物中のイプフェンカルバゾンの分析法を開発した.農産物はアセトンで抽出し,n-ヘキサンと飽和塩化ナトリウム溶液を加えて液–液分配後,GC/PSAミニカラムとC18ミニカラムで精製した.一方,畜水産物はアセトンおよびn-ヘキサン混液で抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配で脱脂後,PSAミニカラムとC18ミニカラムで精製した.測定条件として分析カラムにC18を,移動相に0.01%酢酸含有アセトニトリル–水混液のグラジエントで,イオン化はESIのポジティブモードを用いた.農産物および畜水産物の計16食品を用いて,残留基準値濃度または一律基準値濃度(0.01 ppm)における添加回収試験を行った結果,真度(n=5)は73~101%,併行精度は1.3~5.1%であった.また,本法による定量下限値は0.01 mg/kgであった.
  • 山田 貴子, 飯田 哲郎, 高峰 啓, 林 範子, 大隈 一裕
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 211-216
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    異性化糖をアルカリ異性化した,希少糖を含むシロップである希少糖含有シロップの安全性を確認するために,ラットにおける単回投与毒性試験,細菌を用いた復帰突然変異試験,ほ乳類の培養細胞を用いた染色体異常試験,ヒトにおける緩下作用発現に対する最大無作用量試験を実施した.復帰突然変異試験および染色体異常試験において,希少糖含有シロップは陰性であった.ラットを用いた単回投与試験においては,希少糖含有シロップの投与(15,000 mg/kg)に関連した変化は認められず,希少糖含有シロップのLD50は15,000 mg/kgを超える量であると結論づけられた.ヒトにおける緩下作用発現に対する最大無作用量は,男女とも0.9 g/kg体重(固形分)であると考えられた.
  • 多田 敦子, 石附 京子, 杉本 直樹, 吉松 嘉代, 川原 信夫, 末松 孝子, 有福 和紀, 深井 俊夫, 田村 幸吉, 大槻 崇, 田 ...
    原稿種別: 報文
    2015 年 56 巻 5 号 p. 217-227
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    既存添加物製品の基原植物の確認は品質や安全性確保の上から重要である.既存添加物カンゾウ油性抽出物(酸化防止剤)の基原として,既存添加物名簿収載品目リストにはカンゾウ属植物のGlycyrrhiza uralensis, G. inflataまたはG. glabraの根または根茎と記されているが,カンゾウ油性抽出物流通製品がどのカンゾウ属植物種の油性抽出物の成分組成に類似するかは確認されていない.本研究で,カンゾウ油性抽出物流通製品8検体をLC/MSにより分析した結果,7製品ではG. glabraに特徴的なglabridinが,1製品ではG. inflataに特徴的なlicochalcone Aが検出された.さらにこれら流通製品に加え,各カンゾウ属植物種の乾燥試料や市販のカンゾウ由来製品のエタノール抽出物など,計31検体をLC/MS(SIR)およびNMRで測定し,主成分分析(多変量解析)を行った結果,カンゾウ油性抽出物製品の基原種は主にG. glabraであると確認された.またNMR測定結果を用いる多変量解析が,既存添加物製品の基原種推定に有用かつ簡便な方法であることが示唆された.
ノート
  • 吉岡 直樹, 林 幸子, 稲田 忠明
    原稿種別: ノート
    2015 年 56 巻 5 号 p. 228-232
    発行日: 2015/10/25
    公開日: 2015/11/03
    ジャーナル フリー
    かんきつ類中の7種の防かび剤,チアベンダゾール(TBZ),ピリメタニル(PYR),オルトフェニルフェノール(OPP),フルジオキソニル(FLD),アゾキシストロビン(AZX),イマザリル(IMZ)およびジフェニル(DP)の迅速分析法を検討した.かんきつ類からアセトニトリルで防かび剤を抽出し,脂質除去剤Z-Sep/C18により精製を行い,LC-MSおよびHPLC-FL(OPP, DP)で測定した.回収率は,基準値濃度の添加では85.4~106.3%であり,0.1 μg/g添加では75.8~99.7%であった.また定量限界は0.03~0.07 μg/gであった.本分析法には濃縮や定容の工程がなく,かんきつ類中の防かび剤のスクリーニング分析法として有用であると考えられた.
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