食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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57 巻, 4 号
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報文
  • 曽我 慶介, 亀井 俊之, 蜂須賀 暁子, 最上(西巻) 知子
    2016 年 57 巻 4 号 p. 81-88
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所事故以後,トリチウム(3H)を含んだ汚染水の環境中への放流の危険性が浮上し,食品の3H安全性評価が求められている.本研究では,食品中自由水に存在する3Hの実用的な分析法を確立するため,利便性と検出感度を指標に液体シンチレーション法の最適化を行い,食品中の自由水単離法として共沸蒸留法の検討を行った.検出下限値は年間1 mSvの約0.01%となる10 q/Lを満たすように3H測定条件を設定した.3H添加回収実験では,3H回収率が果実・野菜・肉・魚介類で85~90%,米や穀類で75~85%であった.一方,含水量の低い菓子類では,3H回収率が50%以下であったが,蒸留前に加水処理を行うことによって,3H回収率と精度が向上した.その結果,用いた全13食品群で,3H回収率75%以上,RSDが10%以内であった.したがって,本分析法は食品の3H安全性評価のための感度,精度を有し,広範囲の食品に適用可能と考えられる.本分析法を用いて流通食品42種類の3H分析を実施したところ,すべて検出下限値以下であった.

  • 小林 麻紀, 酒井 奈穂子, 上條 恭子, 大谷 陽範, 林 真輝, 小池 裕, 馬場 糸子, 笹本 剛生, 根本 了, 新藤 哲也, 高野 ...
    2016 年 57 巻 4 号 p. 89-95
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー

    畜水産物中のフルオピコリド試験法について検討を行った.試料に塩化ナトリウムを加え,ギ酸酸性下でアセトン抽出し,ケイソウ土カラムで脱脂後,GC (グラファイトカーボン)およびPSA (エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル)カラムで精製して,LC-MS/MSで測定した.10種類の畜水産物(牛の筋肉,鶏の筋肉,牛の脂肪,牛の肝臓,鶏卵,牛乳,はちみつ,うなぎ,さけ,しじみ)を対象にして基準値濃度で添加回収試験を行った結果,真度(n=5)は96~100%,併行精度2.3~6.2%,定量限界は0.01 mg/kgを設定できた.

ノート
  • 比企 麻子, 山嶋 裕季子, 植松 洋子
    2016 年 57 巻 4 号 p. 96-100
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー

    食品中のニコチン酸(NA)およびニコチン酸アミド(NAA)の分析法について検討した.抽出はアスコルビン酸およびの分析法を参考にメタリン酸水溶液を用いた.精製は弱陽イオン交換-逆相ミックスモードのOasis MCXを用い,測定はHPLCおよびLC-MS/MSにより行った.分析カラムには両イオン交換型マルチモードODSのScherzo SM-C18,移動相には20 mmol/L酢酸アンモニウム水溶液–アセトニトリル(97 : 3)を用い, HPLC UV 261 nm,LC-MS/MSはMRMモードにより検出した.1~25 μg/mLでの検量線の直線性は相関係数0.998以上,回収率はHPLCで84~108%,LC-MS/MSで79~105%, CV値は5.8および9.0%以下であった.定量下限値はNAで0.005~0.01 g/kg,NAAで0.01~0.02 g/kgであった.従来法で分析した実試料中のNAAは,本法での結果と近似した値であった.

  • 長島 英夫, 平尾 あき帆, 徳田 優樹, 宇留田 久美子
    2016 年 57 巻 4 号 p. 101-106
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー

    柑橘類について7種類の防黴剤ジフェニル(DP),オルトフェニルフェノール(OPP),ピリメタニル(PYRI),チアベンダゾール(TBZ),イマザリル(IMZ),フルジオキソニル(FLUDI),およびアゾキシストロビン(AZO)について簡易なガスクロマトグラフ質量分析計による同時定量法について検討した.試料はアセトニトリルで抽出し,グラファイトカーボン/アミノプロピルシリル化シリカゲル固相抽出カートリッジに負荷し,アセトニトリル–トルエン(3 : 1, v/v)で溶出した.0.5 μg/mLのトリフェニレンを内標準としてマトリクス添加法により,GC-MS測定した.ミカンに添加した0.01~10.0 μg/gの範囲での回収率はOPP,PYRI,TBZ,IMZ,FLUDIおよびAZOについて70.8~104%であり,定量限界は0.01 μg/gであった.同じくミカンに添加した0.01~70.0 μg/gの範囲での回収率はDPについては70.8~80.4%であり,定量限界は同じく0.01 μg/gであった.

妥当性評価
  • 佐藤 環, 宮本 伊織, 上村 聖子, 仲谷 正, 角谷 直哉, 山野 哲夫
    2016 年 57 巻 4 号 p. 107-115
    発行日: 2016/08/25
    公開日: 2016/08/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    LC-MS/MSを用いた野菜および果実中の残留農薬迅速一斉分析法の妥当性確認を行った.試験溶液の調製には,QuEChERS法と固相抽出法を組み合わせたSTQ法を用いた.抽出溶媒にアセトニトリルを用い,ホモジナイズ抽出を行った後,塩析および脱水を同時に行った.得られたアセトニトリル層をC18 (30 mg)/PSA (30 mg)連結ミニ固相カラムおよびC18 (50 mg)ミニ固相カラムを用いて精製し試験溶液とした.厚生労働省通知の妥当性評価ガイドラインに従い,14種類の野菜および果実を対象として,一律基準濃度における残留農薬130成分の一斉分析法の妥当性確認を実施した.その結果,それぞれの野菜および果実において,75~120成分の農薬が対象となる場合に,分析法の性能はガイドラインの目標値(真度:70~120%,併行精度:25%未満,室内精度:30%未満)を満たした.以上のことから,本試験法は残留農薬の迅速一斉分析法として有用であると考えられた.

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