食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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57 巻, 5 号
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総説
報文
  • 安井 明子, 大石 充男, 早藤 知恵子, 小林 千種, 新藤 哲也, 小沢 秀樹, 中里 光男
    2016 年 57 巻 5 号 p. 133-138
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    小麦粉および小麦粉調製品中のアゾジカルボンアミド(ADA)の分析法を,トリフェニルホスフィン(TPP)による誘導体化法を用いて検討した.試料から超音波を用いてアセトンで抽出したのち,室温条件下でADAはTPPにより容易にADA-TPPに誘導体化した.逆相固相抽出を用いて濃縮・精製をした後,HPLCおよびLC-MS/MSで分析を行った.HPLCの測定では,ADAはADA-TPPとして0.1~40μg/mLの範囲で直線性を示し,試料中濃度0.25~100 μg/gの範囲の定量が可能であった.食品へのADAの添加回収試験では,87%以上の回収率が得られた.検出限界は,試料中濃度で0.25 μg/gであった.LC-MS/MSの測定では,[M+H] m/z 379をプリカーサーイオンとしてプロダクトイオンスキャンを行ったところ,m/z 379→304, 379→226, 379→183などのイオンにより定性確認が可能であった.

  • 岸 映里, 尾崎 麻子, 大嶋 智子, 山野 哲夫
    2016 年 57 巻 5 号 p. 139-149
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    代表的な乳幼児用玩具の1つである粘土を対象にHPLCを用いた着色料の試験法を確立し,実態調査を行った.試料は小麦粘土10品目,米粘土2品目,とうもろこし粘土2品目,紙粘土3品目および樹脂粘土3品目の計20品目とし,HPLCでは許可着色料12種類および指定外着色料25種類を測定した.その結果,6歳未満の乳幼児を対象とした粘土15品目のうち,小麦,米およびとうもろこし粘土(計13品目)は食品衛生法に適合していることが確認されたが,紙粘土(2品目)からは指定外着色料の溶出が認められた.また,食品衛生法規制対象外である対象年齢6歳以上の紙粘土や手芸用材料である樹脂粘土でも同様に測定対象外の着色料の溶出が示唆され,印刷インキやプラスチックなどに用いられる顔料が使用されていることが推測された.

  • 岩越 景子, 大塚 健治, 田村 康宏, 富澤 早苗, 増渕 珠子, 八巻 ゆみこ, 中川 由紀子, 増田 諒子, 須藤 将太, 小鍛治 好 ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 150-154
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー
    電子付録

    LC-MS/MSを用いた豆類中残留農薬の迅速分析法について検討した.試料5 gに水10 mLを加え,30分間静置した後,アセトニトリル30 mLを加えてホモジナイズし,無水硫酸マグネシウム4 g, 塩化ナトリウム2 gおよびクエン酸塩を加え,かく拌・振とう・遠心し,アセトニトリル層を分取した.さらに,アセトニトリル30 mLを加えて抽出し,80 mLに定容した.また,大豆中に多く含まれる脂質成分を除去するため,著者らが開発した3層固相カラム(C18–GC–PSA; 60 : 30 : 60 mg)に20 mgの分散系のジルコニア結合型シリカゲルと50 mgのC18 (SHIGMA-ALDRICH®社製)を追加し使用した.LC-MS/MSによる測定は,スケジュールドMRMモードで実施した.大豆,レンズ豆,白いんげん豆およびひよこ豆を使用し,既法と本法による添加回収実験を行い,比較したところ,本法のみが真度および精度において良好な結果を示した.また,厚生労働省通知の妥当性評価ガイドラインに従って,大豆における本法の妥当性評価を行った.その結果,ガイドラインによる評価基準を満たしたものは,107農薬中97農薬であった.

  • 山本 純代, 田原 正一, 杉木 幹雄, 宮川 弘之, 植松 洋子, 山嶋 裕季子, 坂牧 成恵, 門間 公夫
    2016 年 57 巻 5 号 p. 155-159
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    食品中のステビオシドおよびレバウジオシドAについて,迅速分析法を開発した.透析効率を上げるため,透析液に30%メタノールを用い,試料10 g,透析の総量100 mLに対して有効長30 cmの透析チューブを使用した.さらに,透析時に50℃で加温しながら振とうすることにより,従来48~72時間要した透析時間を2時間に短縮した.得られた透析後の外液をC18固相抽出カートリッジで精製し,逆相のHPLC条件で分析した.種々の食品について添加回収試験を行ったところ,回収率は83.0~105.1%,相対標準偏差はおおむね5%以下であった.

ノート
  • 伊藤 志保美, 近宗 雅人, 猪之鼻 修一, 藤田 和弘
    2016 年 57 巻 5 号 p. 160-165
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    植物性油脂,動物性油脂および乳脂肪は,赤外吸収スペクトルは同様なパターンを示し,識別が困難である.これらの油脂について,APCIダイレクトプローブをイオン源としたTOF/MSにより,簡単かつ迅速に直接分析する方法を検討した.本法を用いることにより,数mgの微量な試料でも,マススペクトルパターンおよびステロール由来のイオンを詳細に観察することで識別することが可能であった.また,バター,チーズ,チョコレートなどの油脂加工食品について分析した結果,原料油脂由来のスペクトルパターンや特有成分のイオンを確認することができた.

  • Nguyen Khanh THUAN, Kamrun NAHER, 久保 亮一, 谷口 隆秀, 林谷 秀樹
    2016 年 57 巻 5 号 p. 166-168
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    代表的なエルシニアの選択分離培地として知られるCefsulodin–irgasan–novobiocin寒天培地(CIN)は,Yersinia enterocolitica血清型O3やYersinia pseudotuberculosisの一部の菌株の発育を阻害することが知られている.最近,新しいエルシニア選択培地,CHROM agar Yersinia enterocolitica (CAYe)が開発されたので,その能力についてCINと比較検討を行った.Yersinia属菌株251株(病原性Y. enterocolitica 176株,Y. pseudotuberculosis 59株,および非病原性Yersinia 16株)について,CINとCAYeでの発育を検討した.その結果,病原性Y. enterocolitica O3 104株中10株とY. pseudotuberculosis 59株以外の198菌株は,32℃ 48時間の培養で両培地に発育可能であった.いずれかの培地に発育できなかった病原性Y. enterocolitica O3 10株のうち,9株はサプリメント添加CINで,1株はサプリメント添加CAYeで発育できなかった.サプリメント添加CINに発育できなかった9株のうち,3株は,サプリメント非添加のCINでも発育できなかった.しかし,サプリメント添加CAYeで発育できなかった1株は,サプリメント非添加のCAYeでは発育可能であった.これらのことから,前者ではCINの培地成分が,後者ではCAYeのサプリメントが発育の阻害にかかわっているものと思われた.また,Y. pseudotuberculosis 59株は,サプリメント非添加のCAYeではすべて発育できた.CAYeは,コロニーの色で病原性Y. enterocoliticaを他の非病原性Yersinia属菌や他菌種から選択的に識別でき,CINと同等またはそれ以上の選択力があり,病原性Y. enterocoliticaの分離には適しているものと思われた.

調査・資料
  • 薗部 博則, 六鹿 元雄, 阿部 孝, 阿部 智之, 阿部 裕, 大坂 郁恵, 大野 春香, 大野 浩之, 大野 雄一郎, 大畑 昌輝, 尾 ...
    2016 年 57 巻 5 号 p. 169-178
    発行日: 2016/10/25
    公開日: 2016/10/26
    ジャーナル フリー

    食品衛生法におけるポリスチレン製器具・容器包装の揮発性物質試験の性能を評価するため,ポリスチレン,アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂,アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂のペレットを検体として試験室間共同試験を行った.当試験には21機関が参加し,3検体(各2測定)について規制対象であるスチレン,トルエン,エチルベンゼン,イソプロピルベンゼンおよびプロピルベンゼンの含有量をGC-FID,GC-MSおよびヘッドスペース(HS)-GCにより定量した.GC-FIDを用いた方法による併行精度(RSDr)は1.0~2.6%,室間再現精度(RSDr)は2.5~5.8%であり,その性能は目標値を満たしており,規格試験法として十分であった.GC-MSにおけるRSDrは1.4~7.8%,RSDrは4.9~13%,HS-GCにおけるRSDrは2.0~2.6%,RSDrは3.3~6.9%であり,それらの定量値はGC-FIDとほぼ同等であった.そのため,これらは規格試験法の代替法として適用可能であった.

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