農産物中の塩酸ホルメタネート分析法について検討を行った.塩酸ホルメタネートはアセトニトリル中で安定であったことから,試料からアセトニトリルで抽出し,エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル(PSA)およびグラファイトカーボン(GC)ミニカラムで精製し,LC-MS/MSで測定を行い,絶対検量線法で定量した.10品目の農産物(玄米,大豆,ほうれんそう,キャベツ,ばれいしょ,オレンジ,ライム,りんご,ネクタリン,緑茶)を対象に残留基準値濃度または一律基準値濃度(0.01ppm)における添加回収試験を行った結果,真度(n=5)は92.3~103%,併行精度は1.3~5.4%,定量限界は0.01mg/kgであった.
オレンジジュースが充填されたチルド流通用ゲーブルトップ型紙容器からの香気漏出の実態把握を目的に,調査を実施した.オレンジの香気成分limoneneを香気漏出の指標成分として選択し,市販12製品の容器表面と内容物中のlimonene量をGC-MS分析により測定した.その結果,3日保管した8製品の容器表面からlimoneneが検出され,内容物中のlimonene量も減少傾向が認められた.これにより,容器表面からのlimonene漏出が確認され,その漏出量は容器のバリア性によって異なった.さらに未開封のオレンジジュースと同一デシケーター内で冷蔵保管した緑茶飲料および牛乳からもlimoneneが検出された.香気成分の移行は牛乳において顕著であり,官能評価でも確認することができた.香気成分が容器を透過してほかの飲料へ移行する可能性が示唆された.
健康食品の利用が原因と思われる健康被害の事例において,保健所を介して厚生労働省へ報告が上がってくるのは年間20件程度しかない.その原因を明らかにするために,消費者(調査1:44,649名,調査2:3,000名),医師・薬剤師(各500名)を対象にアンケート調査を実施した.2016年の一年間に健康食品の利用が原因と思われる体調不良を経験した消費者は17%いたが,保健所に連絡した人はそのうちの11%のみであった.保健所に連絡しなかった理由は「報告するほどの被害ではなかったから」が最も多かった.2016年の一年間に患者から健康食品の利用が原因と思われる健康被害の相談を受けたことがある医師は7%,薬剤師は4%であった.保健所に報告したのは医師,薬剤師ともに6%のみであった.保健所に報告しなかった理由は「健康食品が原因と断定できなかったから」が最も多かった.
ドクササコの毒性成分であるアクロメリン酸A, BのLC-MSによる迅速な分析法を検討した.キノコ試料から50%(v/v)メタノール水溶液を用いて2回抽出を行い定容後,シリンジフィルターでろ過したものを,マルチモードODSカラムを用いLC-MSで測定した.シイタケにアクロメリン酸A, Bを2.5μg/g相当添加したときの回収率はそれぞれ93%, 74%であった.本法を用いて兵庫県内で発生した中毒事例の喫食残品中のキノコを分析した結果,アクロメリン酸A, Bをそれぞれ2.0μg/g, 1.4μg/g検出したほか,クリチジンと推定される物質も確認できた.