A型肝炎は潜伏期間が約1か月と長く,聞き取りによる感染源調査が困難な場合が多い.感染経路の解明や広域集団発生の確認を行うためには,患者検体から検出されたウイルス株の分子疫学的解析が有用であるとされている.そこで2016~2017年に都内で積極的疫学調査として発生届が提出された患者検体108例について遺伝子検査を実施し,HAV陽性となったものについて分子疫学的解析を実施した.99例からHAV遺伝子が検出され,遺伝子型の内訳は,IAが91例,IBが2例,IIIAが6例であった.また,系統樹解析から,最も多く検出されたIAは4つの大きな系統に分類され(IA-1,IA-2,IA-3,IA-4),各患者にはそれぞれに特徴的な疫学的背景が認められた.今回の解析で得られたHAVのシークエンスデータおよびそれらが検出された患者の疫学的背景に関する情報は,今後新たにA型肝炎患者が発生した場合の感染源や感染経路を推定するための科学的根拠として活用できると考えられた.
ミトコンドリア遺伝子ND5の多型を利用して,昆虫をその主要な5つの分類学上の目(双翅目,膜翅目,半翅目,鞘翅目,鱗翅目)のレベルで識別する方法を開発した.すなわち,複数の種のDNA塩基配列を決定し,それぞれの目に特徴的な塩基を19塩基以上見いだした結果,従来技術より正確にまた簡易に,目のレベルでの識別を行えることが分かった.
チョコレートとココアは,カカオ豆から作られる主な製品である.これらの製品は,土壌などの環境に由来するカドミウム(Cd)を含むことが知られている.Cd濃度を調査するために,国内流通していたダークチョコレート,ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,ココア粉末製品を購入した.分析には誘導結合プラズマ質量分析計による妥当性確認された分析法を用いた.チョコレートおよびココア粉末中のCd濃度は,それぞれ0.00021~2.3および0.015~1.8 mg/kgの範囲であった.各製品のCd濃度を製品のラベルに記載されているココア固形分の含有量に基づき評価した結果からは,Cd濃度とココア固形分の含有量との間に弱い正の相関があることが示された.調査した180種類のチョコレート製品のうち8製品,140種類のココア粉末製品のうち26製品中のCd濃度は,EUが設定した基準値を超過していた.
硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)等が含まれる膨張剤の使用が考えられる食品について,これまでのわれわれの調査では調査数が少なかった和菓子や小麦粉加工品を中心にアルミニウム(Al)含有量を調査した.その結果,123製品中41製品から0.01~0.40 mg/gのAlを検出した.和菓子以外の菓子類に関しては,われわれが行った過去の調査と比較してAlの検出率が低下していた.一方,和菓子および小麦粉加工品はAlの検出率が高い傾向にあった.Alを検出した41製品のうち,中華風揚げパン,今川焼,たこ焼の計4製品については,製品を1週間あたり1食喫食することで,小児(体重16 kg)の場合は暫定耐容週間摂取量を超えてAlを摂取する可能性があった.