HPLCおよびLC-MS/MSを用いた食品中のエリスリトール,マルチトール,ラクチトールおよびトレハロースの分析法を開発した.HPLC分析では,アミノ基結合型ポリマーカラムを用い,カラム温度を室温とすることで定量することが可能になった.LC-MS/MSでは,SRMモードにより定量・確認を行うことができた.また,試験溶液を1,000倍以上に希釈することで,試料由来のマトリックスによる影響を抑えられた.紅茶飲料,ゼリー,ラムネ菓子およびチョコレートを用いた添加回収試験の結果,回収率はいずれもHPLCで90%以上(CV≦6.1%),LC-MS/MSで94%以上(CV≦4.8%)であった.クッキーについては,まず水で抽出してからエタノールを加えることで,HPLCで回収率83%以上(CV≦4.1%),LC-MS/MSで回収率90%以上(CV≦3.0%)と良好な結果が得られた.
サプリメントによる健康被害の未然・拡大防止には,現時点で発生している有害事象を短期間に全国レベルでできるだけ多く収集し,行政的対応を検討する取り組みが求められる.そこで全国的なオンライン調査により,消費者から直接情報を収集して有害事象の把握を試みた.有害事象としては下痢に着目し,4つの調査会社で実施した.その結果,軽微な症状が多いが痛みや吐き気を伴う事例もあること,下痢経験者の8割以上はどこにも報告していないこと,関与する原材料として植物エキスが疑われることが明らかとなった.有害事象の経験頻度に調査会社間で誤差はあるが,オンライン調査はサプリメントによる有害事象の発生を全国レベルで短期間に把握できる有用な方法と考えられた.
希少糖の1つであるd-アラビノースの機能性食材としての利用の可能性を検討するために,ラットに50%(w/v)のd-アラビノース溶液を10~14 g/kgの範囲で段階投与し,急性毒性試験を行った.その結果,半数致死量(LD50)は,雄で12.1 g/kg,雌で11.6 g/kgと算出され,普通物であることが示唆された.一方,短期毒性試験では,今回の実験における食餌中への最小添加量である5%添加でもd-アラビノースの影響と思われるいくつかの症状が認められたことから,無毒性量は5%添加未満と推定された.すでに食品素材として利用されている希少糖d-プシコースは,10%の食餌への添加で毒性が見られないと報告されていることから,d-アラビノースはd-プシコースに比べて毒性が強いと推察された.以上の結果から,d-アラビノースを機能性食材として利用できるか否かについては,さらに詳細な検討を要すると考えられた.
測定時間短縮を目的として,フルオレスカミン蛍光誘導体化UPLC法を用いたヒスタミンの迅速分析法を検討した.トリクロロ酢酸を用いて抽出し,遠心分離後の上清をろ過後,固相抽出をせずに蛍光誘導体化し試験溶液とした.移動相にはイオンペアを使用せずに10 mMリン酸塩–アセトニトリル(75 : 25)を用いた.鮮魚,調味料およびそれらの加工品などを対象に妥当性試験を実施し,食品ごとの平均回収率は95.8~117.7%であった.本法は前処理から測定まで迅速に行うことができることから,緊急性を要する食中毒発生時の測定に有用である.
高速液体クロマトグラフ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOF-MS)を用いた乳および卵主要アレルゲンの一斉分析法を開発した.乳,卵の主要アレルゲンタンパクであるα-カゼイン,β-ラクトグロブリン,オボアルブミンを分析対象とした.これらタンパクのそれぞれをトリプシン消化しLC-QTOF-MS分析を行った結果,消化物のアミノ酸配列の精密質量に整合した16種のピークが検出された.消化物の定量には,これら各ピークのプロダクトイオンスペクトルを用いた高分解能MRM法を適用した.次に,さまざまな濃度の牛乳および卵標準液を同時添加した各種飲料について定量性能を評価したところ,飲料中濃度10 μg/g付近で良好な直線性,再現性,真度が得られた.さらに,両標準液添加飲料のELISA法による定量値とLC-QTOF-MS法の定量値で良い一致が認められた.これらの結果から今回開発したLC-QTOF-MSを用いたアレルゲン消化ペプチド分析法は,飲料中の乳および卵タンパクの一斉定量法として有用であると考えられた.
自然毒,特に有毒植物の誤食による食中毒は症状が重篤なことが多く致死率が高いことが特徴である.そのため,原因植物の迅速かつ正確な同定が求められている.本研究では1989~2015年に厚生労働省に報告された植物による食中毒事例を調査した.植物由来食中毒の傾向を鑑みて,発生件数の多い4種(バイケイソウ類,チョウセンアサガオ類,トリカブトおよびスイセン)および死亡事例があるイヌサフランの迅速・簡便な同定法を構築した.PCR-RFLP法を利用した本法は電気泳動像において,有毒植物では2本,食用植物では1本のバンドを検出することで判定できる.また,本法は簡便な操作で,高価な機器を必要とせず,短時間に一義的な結果が得られる.また,調理した試料に対しても適用