国内の市販ポリ塩化ビニル(PVC)製おもちゃに使用されている可塑剤の実態を明らかにするため,2014年度に購入したPVC製おもちゃ約500検体の可塑剤を調査した.その結果,テレフタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(DEHTP)など15種類の可塑剤が検出された.その種類は2009年度に購入した試料の調査と大きく変わらなかった.おもちゃからの検出率はDEHTPが最も高く,指定おもちゃでは60.3%,指定おもちゃ以外では73.7%であり,2009年度の調査と比べいずれも20ポイント以上高い値であった.指定おもちゃにおいて使用が禁止されている6種類のフタル酸エステル類(PAEs)は引き続き使用されていなかった.一方,指定おもちゃ以外からは6種類のうち4種類が検出され,検出率は2.8~15.5%であったが,2009年度の調査と比べ10~26ポイント低い値であった.一方,試料あたりの可塑剤総含有量の平均値は2009年度の調査に比べて低い値であった.このように,現在国内で流通するPVC製おもちゃに使用されている主な可塑剤はDEHTPであり,可塑剤の使用量は減少していることが明らかとなった.
食肉から分離された大腸菌における薬剤耐性の動向を把握するために,2011~2017年に東京都で流通した鶏肉,牛肉,豚肉,鹿肉および猪肉から分離された1,115株の大腸菌について,14薬剤の薬剤感受性試験を行った.その結果,14薬剤すべてに感受性であったのは,鶏肉由来株の18.7%(135/721株),牛肉由来株の77.0%(117/152株),豚肉由来株の47.6%(89/187株),鹿肉由来株の100%(28/28株),猪肉由来株の92.6%(25/27株)であった.14薬剤の中では,テトラサイクリン(TC)に対して耐性の株が多く,鶏肉由来株の56.7%(409/721株),豚肉由来株の40.6%(76/187株)が耐性であった.鶏肉由来株では,国産由来株の4.9%(25/506株),輸入由来株の23.7%(51/215株)がセフォタキシム(CTX)に耐性であった.国産鶏肉由来株のCTX耐性率は,2012年(10.6%,17/161株)よりも2016年(0.9%,1/111株)と2017年(0.8%,1/121株)で有意に低かった.本調査の結果から,食肉由来大腸菌株のTC耐性率が高いこと,鶏肉由来株では,輸入由来株の方が国産由来株よりもCTXへの耐性が高いことが示された.
畜水産食品中の抗真菌薬15剤,抗寄生虫薬2剤およびその他の動物用医薬品3剤のLC-MS/MSによる高感度な一斉分析法を開発した.薬剤の分解を抑制するため,対象食品に50%エタノールを加えてホモジナイズをした調製試料から,アセトニトリルを用いて薬剤を抽出した.抽出液をアルミナNカラムに通液して精製し,得られた試験溶液を全多孔性オクタデシルシリル化シリカゲルカラムで分離しMS/MS測定を行った.これらにより,食品由来成分の影響を受けやすく分析が困難とされる魚介類にも適用可能となった.畜水産物8食品において妥当性評価を実施した結果,選択性は十分で,真度70.2~109.3%,併行精度18.0%以下,室内精度18.7%以下となり,ガイドラインの基準に適合した.定量下限値は,3 ng/gに設定可能と考えられた.
食品中の不揮発性アミン類分析法として,試料からヒスタミン,チラミン,プトレシンおよびカダベリンを5%トリクロロ酢酸溶液で抽出し,強陽イオン交換カラムInertSep MC-1を用いて精製した後,フルオレスカミンで誘導体化し,HPLC-FLで定量,LC-MS/MSで確認する方法を検討した.検討した分析法を用いて,生鮮魚介類,魚介加工品および発酵食品計11食品に不揮発性アミン類を100 mg/kgで添加し,添加回収試験を行った結果,真度81~100%,併行精度0.4~3.1%の良好な結果が得られた.これらの結果から,本法は食品中の不揮発性アミン類分析法として有用と考えられた.
著者らは迅速性,選択性,汎用性を勘案し,通知法で採用されている加熱抽出法の原理でサイクラミン酸の抽出を行い,抽出液を固相カラムで精製せず,希釈するのみでLC-MS/MSを用いて測定する分析法について,30種類の食品試料を対象に0.5 μg/gの添加濃度で妥当性確認を実施した.その結果,真度85.0~106.6%,併行精度1.7~9.4%,室内精度4.1~9.7%であり,試験したすべての試料は満足のいく評価となった.本方法は,さまざまな食品中のサイクラミン酸の迅速な検査法として有用であることが示された.