食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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61 巻, 6 号
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報文
  • 下島 優香子, 西野 由香里, 福井 理恵, 黒田 寿美, 鈴木 淳, 貞升 健志
    2020 年 61 巻 6 号 p. 211-217
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    サルモネラ汚染実態把握を目的として,2009~17年に東京都内に流通した食肉からのサルモネラの分離,血清型別,薬剤感受性試験を行った.サルモネラは鶏正肉353/849検体(41.6%),豚正肉9/657検体(1.4%),牛正肉1/517検体(0.2%),鶏内臓肉6/8検体(75.0%),豚内臓肉43/142検体(30.3%),牛内臓肉4/198検体(2.0%)から検出された.血清型は,国産鶏肉はS. Infantis,S. Schwarzengrundの順に多く,年次推移としてはS. Infantisの減少とS. Schwarzengrundの増加が認められた.輸入鶏肉はS. Heidelberg,豚肉はS. Typhimurium,O4:i:-,牛肉はS. Derbyが多かった.薬剤感受性は,全種類の食肉でTC耐性率が高く,カルバペネム系およびフルオロキノロン系薬剤には耐性は認められなかった.セフォタキシム耐性菌は14株,ESBL,AmpC産生菌はそれぞれ7株および23株,いずれも鶏肉から検出された.食肉の種類によりサルモネラの血清型,薬剤感受性が異なることが示された.

  • 吉田 精作, 渡邊 美咲, 橋本 多美子
    2020 年 61 巻 6 号 p. 218-222
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    精白米の調理過程における有機リン系難燃剤(PFRs)の消長を検討した.精白米にPFRsを添加(500 ng/g)した後,水洗および炊飯を行い,PFRsの減少を観察した.3回の水洗において,観察した7種類のPFRsでは添加量の68~86%が除去された.最初の水洗において,添加量の約50~70%のPFRsが除去されていた.水洗および炊飯後の飯中PFRsの除去率は,電気炊飯器では74~94%,電子レンジ炊飯器では78~96%であった.水洗なしの無洗米(500 ng/g)での除去率は水洗および加熱をした場合より低く,電気炊飯器では10~50%,電子レンジ炊飯器では10~70%であった.精白米からのPFRs摂取量の低減には,炊飯前の水洗が効果的である.

ノート
  • 林 真輝, 田村 康宏, 大谷 陽範, 森岡 みほ子, 笹本 剛生, 橋本 常生
    2020 年 61 巻 6 号 p. 223-228
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    魚介類中のトリブチルスズ化合物(TBT)およびトリフェニルスズ化合物(TPT)の高速溶媒抽出装置(ASE)およびLC-MS/MSを用いた分析法を開発した.LC分離は,コアシェル性オクタデシル化シリカゲルカラムを用いて0.1%ギ酸70%メタノール溶液によるアイソクラティック移動相条件で行った.試料を抽出温度125℃,抽出溶媒n-ヘキサンの条件でASE抽出し,フロリジルカートリッジカラムを用いて精製した.これらにより,脂質が多い魚介類に対しても適用可能となった.定量は重水素標識したTBTおよびTPTを用いたサロゲート法により行い,検量線は0.2~250 ng/mLの範囲で直線性が得られた.本法による定量下限値はTBT,TPTともに0.8 ng/gであった.本法を用いて,TBTおよびTPTの認証値が付与されたホタテ貝柱の環境標準物質の分析を行ったところ,分析値は認証値と有意差がない結果が得られた.スズキ,ボラ,アナゴ,カレイ,アサリを対象に2併行,5日間の添加回収試験を行った結果,真度89.3~105.3%,併行精度(RSDr) 1.0~4.5%,室内精度(RSDwr) 1.3~7.6%の良好な結果が得られた.

  • 佐々木 隆宏, 田原 正一, 豊原 律子, 森川 麻里, 坂牧 成恵, 貞升 友紀, 牛山 慶子, 山嶋 裕季子, 小林 千種
    2020 年 61 巻 6 号 p. 229-234
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    第2版食品中の食品添加物分析法の方法(2版法)において,チーズでは抽出液が懸濁する場合,固形物が浮遊して定容が困難な場合,夾雑成分によりHPLC-UV分析が困難な場合がある.清酒では,共沈操作が不要と考えた.そこで,チーズについては抽出液の懸濁の原因となる水酸化ナトリウム溶液の添加量を減らし,固形物を除くため吸引ろ過後に定容する方法を確立した.清酒については,希釈後,遠心分離する方法とした.また,カーボンモレキュラーシーブが充てんされたカートリッジによる固相抽出法も開発した.添加回収試験(n=5)では,91.3~99.6%(CV 0.9~4.5%)と平均回収率および併行精度が良好であり,チーズで0.010~0.20 g/kg,乳で0.010~0.20 g/L,清酒で0.010~0.10 g/kgの範囲に適用可能であった.本法は2版法の問題を解消し,操作が効率的である点で有用な分析法と考えられた.

調査・資料
  • 高畠 令王奈, 大西 真理, 真野 潤一, 岸根 雅宏, 曽我 慶介, 中村 公亮, 近藤 一成, 橘田 和美
    2020 年 61 巻 6 号 p. 235-238
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー

    安全性審査済み遺伝子組換え(GM)トウモロコシおよびダイズの粉砕試料中の混入率を,重量混合比として算出するためには,内標比が必要である.内標比は,GMダイズに関しては,リアルタイムPCR新機種QuantStudio5, QuantStudio12K Flex, LightCycler 96およびLightCycler 480において,組換え配列と内在性配列のコピー数比を基に既に測定されているが,GMトウモロコシに関しては未対応であった.本研究では,GMトウモロコシのスクリーニング検査法の対象であるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター,GA21構造特異的領域,MIR604系統特異的領域,MIR162系統特異的領域において,上記リアルタイムPCR4機種を用いて内標比を算出した.

  • 大久保 祥嗣, 向井 健悟
    2020 年 61 巻 6 号 p. 239-246
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    農作物に含まれる農薬の多成分簡易迅速試験法の検討を行った.本研究では,精製工程の簡素化および使用する溶媒の量と種類を少なくすることを試みた.

    試験溶液は農作物のQuEChERS法による抽出液を,3層(C18,SAX,PSA)の固相を積層したミニカラムにより精製して調製し,この試験溶液を大量注入装置・胃袋型ガラスインサート搭載GC-MS/MSにより分析した.この試験法により,8種類の農産物を用いて添加回収試験を実施したところ,241~331成分が,真度70~120%,併行精度25%未満の目標基準に適合した.

妥当性評価
  • 渡邊 趣衣, 八巻 ゆみこ, 富澤 早苗, 増渕 珠子, 上條 恭子, 中島 崇行, 吉川 聡一, 山本 和興, 髙田 朋美, 小鍛治 好恵 ...
    2020 年 61 巻 6 号 p. 247-253
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2020/12/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    LC-MS/MSによる乾燥唐辛子中残留農薬分析法の開発を行い,その妥当性評価を実施した.分析法はマトリクス効果を抑制するため,LC条件,精製カラムおよび試験溶液の希釈倍率を検討した.精製カラムはENVI-CarbIITM/PSA (300/600 mg,6 mL)を使用した.さらにマトリクス効果を抑制するため試験溶液の検討では,マトリクス効果および一律基準値相当の測定感度の観点から,8倍希釈液を採用した.これらを元に107農薬について2濃度(0.01および0.1 μg/g)で2併行5日間の妥当性評価を実施した結果,96農薬で真度70.1~112.6%,併行精度11.5および3.4%以下,室内精度24.3および19.9%以下となり,ガイドラインの基準に適合した.また不適合であった主な原因はマトリクス効果と抽出での低回収であると示唆された.

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