わが国は乳・乳製品のうち生乳のみを動物検疫の対象としていたが,2017年11月から新たに乳・乳製品の輸入検疫を開始した.口蹄疫発生地域から輸入する場合,ウイルス不活化のため72℃ 15秒の加熱処理等が求められ,輸入検査では一部の現物で加熱履歴を確認する.乳の加熱履歴確認は,IDF63等に準拠したアルカリホスファターゼ(ALP)活性測定法が有効だが,手順が煩雑で時間を要す.そこで,ALPの反応により生成された蛍光物質量を簡易迅速に測定する手法を基に測定を試みた.種々の条件で加熱したウシ,ヒツジ,ヤギの乳と各種乳製品を供試し,各動物種乳において72℃ 15秒とほぼ同等の加熱でALPが失活することを確認した.今回確立した方法は,IDF63等より簡易で,少量かつ短時間での測定が可能であった.また,材料を懸濁することで各乳製品の加熱履歴確認も可能であった.
臭素化植物油(Brominated Vegetable Oil:以下BVOとする)の分析において,前処理として知られるメチル化について,その反応効率を算出する場合に有用と考えられた1H-NMRの適用性について検証した.検討の結果,BVOをメチル化した際,未反応物の構造に由来するメチン基と生成物の構造に特徴的なメチル基,およびおのおののプロトン数とそのシグナル積分比を用いて1H-NMRにより簡便にBVOのメチル化効率を算出することができた.また,1H-NMRのシグナルおよびGC上のピーク面積の経時変化から,計算により得られた結果とGCで定量した結果は相対的にほぼ一致していた.したがって,BVOのメチル化効率を算出する際に1H-NMRを適用することは有効であることが判明した.
本研究では,5種の毒性試験事例から得たさまざまな病理組織学的所見の発生頻度データに実際にベンチマークドーズ(BMD)法を適用し,本法を発生頻度データに適用する際の留意点をまとめた.事例検討の結果,重要な所見について,毒性学的意義や用量相関性等が担保できれば,病変の程度毎に発生頻度データがある場合はある程度以上の発生頻度に対して,あるいは重症度が高い続発性病変ではなく,より毒性学的意義があると判断された前段階の病変の発生頻度データに対して,BMD法を適用することは妥当であることが確認された.また,BMD法を適用する必要性が高く,入手した個別所見の発生頻度データでは毒性学的にも統計学的にも妥当な計算結果を得られない場合は,可能であれば個体別の病理組織学的検査データまで遡り,新たに求めた総括的な所見名(診断名)に対する発生頻度データに基づきBMD法適用を試みることを提言した.BMD法適用の際は,必ず毒性病理学,毒性学,統計学の専門家が本法適用の対象となる所見やその発生頻度と計算結果を分析し,可能な限り統計学的にも毒性学的にも妥当な適用となるよう議論する必要がある.
健康食品に含まれていたタダラフィルおよびタダラフィル構造類似物質であるノルタダラフィルおよびホモタダラフィルの立体配置を確認した.製品はインターネットで購入し,タダラフィルを検出したはちみつ加工品1製品および錠剤1製品ならびにノルタダラフィルおよびホモタダラフィルを検出した飴1製品を使用し,各製品から各成分を単離精製した後,円二色性(CD)分散計を用いてCDを測定した.その結果,各製品より単離精製した成分のCDスペクトルは6R,12aR体標準品のCDスペクトルと一致したことから,製品に含まれていた成分は6R,12aR体であると確認された.タダラフィルは6R,12aR体が立体異性体の中で最もホスホジエステラーゼ5阻害作用が強いという報告があることから,ノルタダラフィルおよびホモタダラフィルも作用の強さを期待して,6R,12aR体を製品に使用した可能性がある.