既存添加物であるカラシ抽出物およびセイヨウワサビ抽出物の品質確認試験として,市販のイソチオシアン酸アリル(AITC)試薬を標品とするGC-FID法が公定法としてあるが,AITC標品に不純物の存在が確認されていた.そこで,AITCとは別の高純度なシングルリファレンス(SR)を標品とし,より正確にAITCを定量するGC-FID法およびLC-RID(示差屈折率検出器)法を検討した.それぞれのクロマトグラフィー条件下におけるAITC/SRの相対モル感度(RMS)を,定量1H-NMR(qNMR)を用いて正確に決定した.このRMSを用いたSR GC-FID法およびSR LC-RID法から算出された製品中のAITC含量は,製品に対して直接qNMR法で算出されたAITC含量と2%以内で一致した.SR法は,従来法よりも正確なAITC含量の算出が可能である.
ゆでめん類は水分含量が多く,水分活性が高いために腐敗しやすい食品の1つとなっている.そのため製めん業ではHACCPマニュアルを参考とした衛生管理を行うことが推奨されている.しかし,中小企業のゆでめん工場で包装後の製品から一般生菌数が自主基準より高く出る事例が数例あった.その微生物汚染源を特定するために, PDCAサイクルを基本として検討を行った.その結果,汚染原因は環境由来菌であり,殺菌後の冷却工程で二次汚染されたこと,水洗冷却工程の強い水流により環境浮遊菌および酸素が水洗冷却槽に取り込まれ冷却水中の微生物の増殖を招き,最終製品を汚染することが示唆された.このような現象が起こることは,HACCPマニュアルでは提示されておらず新しい知見であり,本知見が今後のHACCPプラン構築に貢献することが期待できる.
二枚貝の麻痺性貝毒(PSTs)はマウス毒性試験(MBA)で検査されているが,動物愛護に対する社会的関心の高まりとともに高感度・高精度なPSTs分析法も開発され,動物実験代替法の利用が可能となった.本研究では,PSTsのモノクローナル抗体を利用したイムノクロマトキットによるスクリーニング法の開発を試みた.食品衛生法規制値(4 MU/g)を下回る2 MU/gをスクリーニング基準として試験液の希釈倍率を80倍とした条件で試験した.目視に加え,画像解析判定も併せて検証した.MBA 2 MU/g以上の20試験品はすべて本キットで陽性を示し,偽陰性はなかった.また,2 MU/g未満の327試験品のうち偽陽性は3%であった.以上のように,本法は高い正確度を示し,迅速・簡便なPSTsスクリーニング法として有用であることが示された.
2017年7月から2019年1月に,ベトナム・メコンデルタの市場やスーパーマーケット19か所から購入した計645検体の市販新鮮野菜における腸管出血性大腸菌 (EHEC) ならびに毒素原性大腸菌 (ETEC) の汚染状況を調べた.供試検体645検体中,EHECおよびETECがそれぞれ1検体の計2検体 (0.3%) から分離された.病原性大腸菌が分離された野菜はいずれもヘッドレタスであった.分離されたEHECの血清型は市販抗血清では型別されなかったが,ETECはO20であった.EHECとETECの2菌株は,用いた9種の抗生物質に対し,いずれも4と7薬剤に耐性を示す多剤耐性株であった.これらの結果から,ベトナム・メコンデルタにおいては,市販生鮮野菜はEHECとETECの感染源としては重要でない可能性が示された.
マイクロ波分解装置を用いたミネラルウォーター類以外の清涼飲料水のスズ,ヒ素,鉛分析法の検討と性能評価を実施した.3元素を通して,真度93~100%,併行精度0.7~6.1 RSD%,室内精度0.9~8.6 RSD%であった.スズの試料調製においては,マイクロ波分解処理後に硫酸を添加する操作を追加することによって添加回収率および再現性の向上が確認された.また,本手法の適用性を検証するため,性状の異なる5種類の清涼飲料水について添加回収試験を実施した結果,回収率は92~102%であった.本手法によって幅広いミネラルウォーター類以外の清涼飲料水の分解処理およびスズ,ヒ素,鉛の定量分析への適用が期待でき,さらに既開発法と比較して作業時間の短縮および作業の簡便化が実現できた.
食肉製品中の亜硝酸根含量は,ジアゾ化法による定量法が用いられる.この測定法は,試料中にアスコルビン酸,システインなどの還元物質が存在すると,それらが定量妨害となり亜硝酸根の測定値が低くなることが知られている.一方,食肉製品に原材料として使用される,醤油,魚醤やみりんが有している抗酸化作用が,この還元物質に該当するのではないかと推測し,これらを使用している食肉製品について検討を実施した.検討の結果,原材料として醤油や魚醤が使用されている食肉製品中における亜硝酸根分析において,定量妨害が認められる場合があった.ただし,醤油や魚醤はその製法により抗酸化力に差があることから,これらを含んだ食肉製品において,亜硝酸根の定量妨害が一律に生じるとは言及できない.しかしながら,醤油や魚醤を含んだ食肉製品中の亜硝酸根含量を測定する場合は,亜硝酸根の定量妨害が生じることを考慮し,異なる試料量を用いて同時に定量を実施し,定量値に差が生じていないかを確認する必要があると考えられる.