食品衛生学雑誌
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62 巻, 6 号
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報文
  • 青木 奈穂, 笠原 帆乃佳, 佐藤 吉朗
    2021 年 62 巻 6 号 p. 175-179
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    食品には,本来感じられないにおいが感じられることがある.我々はこのにおいをオフフレーバーと呼んでいる.牛乳においても,餌あるいは乳牛の体調によりヘキサナールのようなオフフレーバーが感じられることはよく知られている.我々はすでに市販牛乳からオフフレーバー物質として2-ヨード-4-メチルフェノール(以後2I4MPと略称する)を初めて発見し,その構造を明らかにした.

    今回,以下の3点について検討した.第一にどのような化合物を出発物質として2I4MPが生成されたのか.この問題は有機合成手法を用いて推定し,候補物質としてp-クレゾールを挙げた.第二に牛舎内でどのようにして2I4MPが発生したのか.牛から排泄された牛糞にヨウ素を作用させることによって2I4MPが発生のすることを確認した.第三に,2I4MPがどのようにして生乳に移行したのか.デシケーターを用いたモデルを作成して移行推定を実施し,2I4MPが牛舎内で生乳に移行する可能性を示した.この結果から,2I4MPを牛乳中に混入させないための方策を提案した.すなわち,搾乳時に乳房殺菌に使用されるヨウ素系殺菌剤を他の殺菌剤に代替する,あるいはヨウ素系殺菌剤を牛糞や床敷きに落下させないようにする.以上を守ることが重要である.

  • Sabina Yeasmin, 高畠 令王奈, 鍵屋 ゆかり, 岡﨑 法子, 峯岸 恭孝, 橘田 和美
    2021 年 62 巻 6 号 p. 180-186
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    食品あるいは飼料において,遺伝子組換え(GM)作物の検出法を開発するためには,種特異的な内在性配列が不可欠である.本研究では,ナス科作物のβ-fructosidase遺伝子の部分配列を用いて,loop-mediated isothermal amplification (LAMP)法によるナスの種特異的検出法を開発した.LAMP法は,迅速,特異的かつ低コストで実施可能な検出技術である.開発したプライマーセットを用いて,ナスの種特異性および安定性を,18品種のナスおよびナス科植物を含む作物種を用いて検討した.また,検出限界を評価した.その結果,本LAMP検出法は,ナスに特異的であり,かつナス品種間で安定した増幅を示した.以上の結果から,LAMP法によるGMナス検出法が開発される際には,有用な陽性コントロールとして利用可能であることが示された.

  • 穐山 浩, 高木 彩, 井之上 浩一, 鈴木 美成, 伊藤 里恵, 涌井 宣行, 浅井 麻弓, 杉浦 淳吉
    2021 年 62 巻 6 号 p. 187-192
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    食品中の残留農薬に関する正確な知識を促進するために,残留農薬のリスクコミュニケーションに関するシンポジウムプログラムをWeb開催した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム前後のオンラインアンケート調査を使用して統計学的に評価した.105名の有効な参加者のアンケートを回収した.リスクコミュニケーションプログラムは,プログラム後のアンケート結果の分析により,プログラム後の理解と関心の点において効果的であったことが示された.プログラム前の残留農薬のリスク認知や安全性評価の認知は,残留農薬の基準値を確立に関する認識と有意に正の相関性があった.プログラム後のリスク認知はプログラム前よりも有意に高く,プログラムによりリスク認識が増加したことが示唆された.重回帰分析では,プログラム前に残留農薬の安全性評価に関する意識や基準値設定に対する認知が高い参加者ほど,プログラム後の理解度やリスク認知が高くなることが示唆された.

  • 渡邊 裕子, 秋山 晴代, 大澤 伸彦, 井村 香織, 伊関 直美, 植田 壽美子, 政岡 智佳, 赤星 千絵
    2021 年 62 巻 6 号 p. 193-202
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー

    大豆の調理・加工によるタンパク質定量への影響を検討した.リン酸緩衝食塩水抽出画分はビシンコニン酸法で測定し,ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と2-メルカプトエタノール(ME)含有緩衝液抽出画分は2-D Quant Kitで測定し,各画分のSDSポリアクリルアミド電気泳動分析を行い,さらに各種ELISAで測定を行った.豆腐調理過程では浸漬大豆と生呉でタンパク質濃度が変動し,試料均一化時の水分量によるタンパク質溶解性の変動が要因と考えられた.豆乳作製時の生呉の加熱でのタンパク質濃度の低下は熱変性を表すと考えられた.豆腐ではSDS,ME抽出による測定系への影響が考えられた.加熱調理では炒り豆を除き50 kDa付近以上と20 kDa付近のタンパク質が変性し,2度揚げ豆腐で40 kDa付近のタンパク質が変性したが,煮豆を除いたタンパク質濃度は低下しなかった.さらに炒り豆,ゆば,炒りおから,揚げ豆腐では調理時間に伴いタンパク質濃度が増加したことから,水分の低下に伴いタンパク質の変性温度が高温にシフトしたと考えられた.食品表示法に準拠した2種のELISAは大豆調理加工品や納豆を除いた発酵食品,健康食品中のタンパク質とペプチドを検出し,大豆タンパク質の検出に有用であった.

調査・資料
  • 桐明 絢, 石崎 松一郎, 長島 裕二
    2021 年 62 巻 6 号 p. 203-208
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2021/12/25
    ジャーナル フリー
    電子付録

    日本で頻発する巻貝によるテトラミン食中毒のリスク管理に資することを目的に,日本沿岸で採集した5科16種巻貝唾液腺中のテトラミン含量をLC-MS/MSで定量した.バイ以外の15種の巻貝唾液腺からテトラミン(0.700~9,410 μg/g)が検出され,本研究により,エゾバイ科ウスムラサキエゾボラ,ミクリガイ,トウイト,ヒモマキバイ,アニワバイならびにイトマキボラ科ナガニシ,コナガニシ,イトマキナガニシの唾液腺にテトラミンが含まれることが初めて明らかにされた.特に,ウスムラサキエゾボラは,調べた5個体全てがテトラミン含量1,000 μg/gを越えていたため,他のエゾボラ属巻貝と同様にテトラミン食中毒を起こす可能性が高いと考えられ,テトラミン食中毒のリスク管理上重要な種であることがわかった.

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