食品衛生学雑誌
Online ISSN : 1882-1006
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65 巻, 3 号
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報文
  • 大屋 賢司, 池内 隼佑, 林谷 秀樹, 工藤 由起子
    2024 年65 巻3 号 p. 41-47
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    米国で中国産乾燥きくらげに関連したサルモネラ食中毒が発生したことを契機に,輸入時の自主検査で乾燥きくらげから分離されたサルモネラ属菌の型別および陽性検体における定量試験,衛生指標菌数の測定を行った.サルモネラ属菌が20検体から分離され,主な血清型は,Weltevreden,London, Typhimurium (単相変異型を含む),Saintpaul,Stanley,Potsdam,Newportなどであった.検体残量のあった10検体について定性・定量試験を行ったところ,3検体で25 gあたりサルモネラ属菌陰性であり,1検体で220 MPN/g,6検体で<0.6 MPN/gであった.また,一般生菌数および大腸菌群数は,平均7.8および6.1 log10 CFU/gであった.また,国内流通乾燥きくらげ製品の調査では,25 gあたりサルモネラ属菌陽性の検体はなく,一般細菌数および大腸菌群数は上述の10検体よりも平均2 log10 CFU/g程低い値を示した.本研究では,国内流通製品からサルモネラ属菌は分離されなかったが,輸入時の自主検査では食中毒の報告がある血清型も分離されたことから,国内においても,乾燥きくらげを喫食する際には注意が必要であることが示された.

  • 菅野 陽平, 青塚 圭二, 細川 葵, 鈴木 智宏
    2024 年65 巻3 号 p. 48-52
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー

    アミは真軟甲亜綱フクロエビ上目アミ目に属する小型の甲殻類であるが,エビ・カニが属する真軟甲亜綱ホンエビ上目十脚目には含まれないため特定原材料の表示義務の対象ではない.これまでエビ・カニを対象とした食品中のアレルギー物質検査において,アミによる偽陽性が疑われるワカサギ加工食品があったが,アミの確認法がなく特定には至らなかった.そこで,本研究でアミ検出用PCR法を構築した.本PCRは,エビ類,カニ類,オキアミ,シャコ,ワカサギ(筋肉部)では増幅が認められず,極めて高いアミ特異性を有していた.ワカサギ内臓部から抽出したDNAでは本PCRで増幅を示し,この増副産物のシークエンスは,アミと一致した.この結果からワカサギの内臓内にアミが残存することが明らかとなった.本アミ検出用PCRを用いることにより,偽陽性の原因がアミの混入かどうかを明確に判定可能となる.

  • 宮崎 仁志, 谷口 賢
    2024 年65 巻3 号 p. 53-60
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    有毒植物の属を迅速に鑑別する方法を開発した.検知手法はTaqMan® プローブ法を用いたリアルタイムPCRとし,増幅領域は葉緑体DNAの“trnL(UAA)-intron”領域および“trnL–trnF intergenic spacer”領域とした.検知対象は,我が国で食中毒事例が多数報告されている6属(トリカブト,イヌサフラン,シュロソウ,キダチチョウセンアサガオ,ハシリドコロ,スイセン)とした. DNAの抽出には30分程度で完了する組織溶解液を,リアルタイムPCR試薬はこの組織溶解液に対応したマスターミックスを使用した.これらにより,DNA抽出から属特定までの全工程を4~5時間で完了可能であった.検知感度は6属すべての植物においてDNA量として1 pgであり,粗抽出DNA溶液でも増幅曲線が得られた.模擬調理(茹でる)を行った3属の植物試料においても増幅曲線が得られた.本法により迅速に6属の有毒植物を検知できる可能性が示唆された.

ノート
  • 柴田 識人, 中阪 聡亮, 成島 純平, 田口 千恵, 杉野 御祐, 吉場 聡子, 曽我 慶介, 梶原 三智香, 渡辺 卓穂, 近藤 一成
    2024 年65 巻3 号 p. 61-66
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    組換えDNA技術応用食品の安全性審査の手続きが制定されて以降,安全性審査を受けていない遺伝子組換え食品の製造・輸入・販売は食品衛生法に基づいて禁じられている.したがって,遺伝子組換え食品検査体制の信頼性確保の面から,各検査機関の遺伝子組換え食品検査操作を確認する外部精度管理調査は非常に重要である.2022年度は安全性未審査の遺伝子組換えパパイヤPRSV-YK系統を検査対象とし,パパイヤペーストおよびDNA溶液を調査試料とした.これらの試料により,DNA抽出操作およびリアルタイムPCR操作の外部精度管理調査を実施した.参加した18機関は概ね正しくDNA抽出操作およびリアルタイムPCR操作を実施していることが確認されたが,PRSV-YK検知法について,一部のリアルタイムPCR装置で特定のDNA増幅試薬を用いた機関で,判定不能となる現象が見られた.すなわちこれらの装置と試薬の組み合わせでは,PRSV-YK検知法では正しく検知できない可能性が示唆された.検査法の信頼性確保のため,リアルタイムPCR装置とDNA増幅試薬の組み合わせがPRSV-YK検知法の検出限界にどう影響をするのか詳細に検討し,適切な対策を実施する必要がある.

  • 田口 千恵, 曽我 慶介, 菅野 陽平, 細川 葵, 杉野 御祐, 成島 純平, 吉場 聡子, 安達 玲子, 柴田 識人
    2024 年65 巻3 号 p. 67-71
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    安全性未審査遺伝子組換えパパイヤ検知法では,主に2種類のDNAポリメラーゼ(TaqMan Gene,FastGene)のいずれかが使用される.令和4年度に安全性未審査遺伝子組換えパパイヤPRSV-YK系統を対象に外部精度管理調査を実施したところ,PCR機種ABI7500とQS12KでTaqMan Geneを用いるとCq値が高くなる傾向がみられ,偽陰性となる可能性が生じた.監視体制の信頼性確保のため,PRSV-YK系統を含め全ての安全性未審査遺伝子組換えパパイヤ系統について偽陰性の可能性を検証する必要がある.本研究では,2種類のDNAポリメラーゼを用いて,3種類のPCR機種(ABI7500,QS12K,LC480)で安全性未審査遺伝子組換えパパイヤ(PRSV-YK,PRSV-SC,PRSV-HN)検知試験,CaM配列検知試験およびパパイヤ陽性対照試験を実施し,DNAポリメラーゼとPCR機種の組み合わせによる各検知法の検出限界への影響を比較した.その結果,PRSV-YKおよびPRSV-SC検知試験をABI7500やQS12KでTaqMan Geneを用いて行うと,本検討に用いた標的配列のコピー数では,指数関数的な増幅がみられるものの,Cq値を得られない,またはFastGeneを用いた時よりも高いCq値が得られた.従ってABI7500やQS12KでPRSV-YK及びPRSV-SC検知試験を行う場合,これらの系統を低い混入率で含む食品の偽陰性判定を回避するためにFastGeneを使用すべきである.PRSV-HN検知試験,CaM配列検知試験およびパパイヤ陽性対照試験では,PCR機種やDNAポリメラーゼによる影響はみられなかった.

調査・資料
  • 山田 恭平, 設樂 紘史, 神田 典子, 近藤 貴英, 西田 道弘, 大城 直雅
    2024 年65 巻3 号 p. 72-77
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/20
    ジャーナル フリー
    電子付録

    シガテラ食中毒は,原因毒素シガトキシン類(CTXs)に起因する魚類による食中毒で,近年全国的な発生リスクの増加が懸念されている.魚肉に含まれるCTXsは極めて少量であるためLC-MS/MSによる高感度検出法が求められるが,現在報告されている検出法は特定の装置にのみ適用可能で,多くの試験所で対応困難な状況にある.今回,CTXsに対して広く適用可能なLC-MS/MS分析法を検討した.ギ酸および水酸化リチウムを添加した水/アセトニトリル系移動相により開裂しづらいリチウムイオン付加分子:[M+Li]が特異的に形成された.CTXs9物質を対象にmultiple reaction monitoring測定において[M+Li]>[M+Li]をモニターするLC-MS/MS分析を実施した結果,LOD 0.005~0.030 ng/mLおよびLOQ 0.010~0.061 ng/mLの検出が可能であった.魚肉5 gから試験溶液1 mLを調製した場合のLODとLOQはそれぞれ0.001~0.006 μg/kgおよび0.002~0.012 μg/kgと推算され,食用不適水準(0.175 μg/kg CTX1B当量)の検査に対応可能であることが示唆された.本法は特定の装置に依存しない普遍的な手法であることが示唆され,全国の試験所のCTXs検査体制整備に資するものと考えられた.

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