沖縄島,宮古島,八重山諸島および伊江島等周辺海域で2003年から2018年に漁獲された沖縄県内でシガテラの主な原因魚種であるバラハタ,イッテンフエダイ,バラフエダイとそれらに類似した形態をもつニセクロホシフエダイ,クロホシフエダイ,ゴマフエダイ,スジアラ,オジロバラハタからDNAを抽出し,16S rRNA領域をPCR増幅後,制限酵素BmgT120 I, Dde I, SnaB Iで消化し,得られた切断パターンから上記8種を判別する方法を確立した.また2016~2017年に沖縄県内で発生したシガテラの原因食材(魚肉の唐揚げ,形態学的同定が困難な魚の切り身,魚汁の残品,焼魚の残品,魚のあら)の筋肉からDNA抽出し,同様の操作を行った.実際のシガテラ食中毒検体を用いて原因魚種の判別を行った結果,PCR-RFLPで分子系統樹解析と同様の判別結果が得られ,PCR-RFLPによる魚種判別の有効性が確認された.
ドクササコ有毒成分の1つであるクリチジンは,試薬として市販されておらず,標準品が入手困難であることから,標準品を必要としない定量NMR法について検討を行った.両法の定量値を比較するにあたり,LC-MS/MS法で用いる標準品について,定量NMR法による絶対純度の算出を行った.その結果,従来のHPLC純度と比較して10%以上低い89.8±1.5%と算出された.これは,結晶中に水を含有するためと推察され,用時絶対純度を算出して使用することが重要であると判明した.また,ドクササコ子実体の抽出液について従来法であるLC-MS/MS法と定量NMR法の2法で定量値を算出・比較したところ,定量値に大きな差はみられず,ほとんどの場合,誤差5%以内におさまることが示唆された.
加えて,定量NMR法の方が定量値のばらつきが小さいこと,測定対象物質の標準物質が不要であること,測定に要する時間が短時間で済むことなど,LC-MS/MS法に対する優位性が複数挙げられる.これらを踏まえ,突発的に発生し,結果報告までの迅速性が求められる自然毒分析において定量NMR法は非常に有用な手段であると判断した.
厚生労働省(現在は消費者庁)が運用するゲノム編集技術応用食品等(以下,ゲノム編集食品)の届出制度では事前相談において届出に該当するかの確認が行われ,加えて,食品として安全性の解析が十分に行われたかの確認が行われているが,今後さらなる技術の進歩が見込まれるゲノム編集食品に対して,現在の安全性確認手法は十分であると国民が受容するのかを検討しておく必要がある.そこで,ゲノム編集食品に関する安全性確保の取り組みに関する情報提供媒体を作成し,現在の安全性確保に対する認識や受容を調べるとともに,生命科学分野の研究者から現在の安全性確認手法についての意見を聞くことで課題や今後取り入れるべき新たな視点を見出すことを目的とした調査を実施した.その結果,一般消費者の62%,生命科学分野の研究者の68%は安全性が確保されている/必要な確認が行われていると認識し,安全性が確保されていると認識することが受容の向上につながることや,安全性の確認が不十分だと感じた生命科学分野の研究者は第三者の検証がないことを懸念していることが明らかとなった.したがって,ゲノム編集食品に関する国民理解を得るためには,事前相談で行われている安全性確保の取り組みをわかりやすく発信して国民に周知していくことが有用であることが示唆された.
環境への残留性が問題となっている有機塩素系農薬アルドリンおよびディルドリン,γ-BHC, DDT,エンドリン,ヘプタクロルについて,牛の筋肉における一斉分析法を構築した.構築にあたり,採取する試料の均一性を向上させるために,粉砕した試料を均等な高さで広げ,区画に分け各区画から等量ずつ採取するインクリメント縮分法を試料採取法として採用した.採取した試料は,アセトニトリル-エタノール(1 : 1)混液による抽出後,冷却遠心分離および固相抽出カラムによる,簡便でゲル浸透クロマトグラフィーを使用しない脱脂・精製によって調製し,GC-MSによる測定を行った.構築した分析法について妥当性評価試験を実施した結果,すべての試験対象農薬で妥当性評価ガイドラインが示す目標値に適合した.