Campylobacter jejuni (C. jejuni)あるいはCampylobacter coli (C. coli)は鶏の消化管に存在していることから,鶏肉は食鳥処理の工程でC. jejuni/C. coliに汚染されることがある.そこで,食鳥処理場8施設の協力の下,盲腸内容物中の菌数と鶏肉中の菌数との関係を調査した.51鶏群から盲腸およびその鶏肉を採取した.40鶏群(78.4%)の盲腸内容物からC. jejuni/C. coliが分離された.陽性鶏群の平均菌数は7.6 1og10 CFU/gであった.51鶏肉のうち,35鶏肉(68.6%)が汚染されており,平均菌数は1.7 1og10 CFU/gであった.陽性鶏肉は,すべて陽性鶏群の鶏肉であった.ブロイラー群の盲腸内容物中の菌数と鶏肉中の菌数には弱い正の相関関係(R=0.37)があることが示された.1 gあたりの菌数が2.0 log10 CFU以上であった14鶏肉のうち,9鶏肉(64.2%)は盲腸内容物中の菌数が8.4 log10 CFU/g以上と高い鶏群の鶏肉であった.盲腸内容物中の菌数が6.2 log10 CFU/g以下の鶏群の鶏肉の汚染率は50%(3/6)であり,また,最大菌数は1.4 log10 CFU/gであった.
三重県で流通している,サバ切り身製品におけるアニサキス幼虫の寄生頻度を調査し,アニサキス症のリスクを評価した.調査した136枚のサバの切り身のうち,30枚(22.1%)からアニサキス幼虫を検出した.分離したアニサキスの幼生の数は169匹で,そのうち147匹(87.0%)が生存していた.また,アニサキス幼虫の約半分は,サバ切り身の腹部中央部に局在していた.日本海で捕獲されたサバは,太平洋のサバと比較して,アニサキス汚染の頻度が高かった(p<0.01).日本では,マサバ(Scomber japonicus)とゴマサバ(S. australasicus)の2種がよく流通しているが,今回の研究では,アニサキス幼虫は主にマサバから観察された.これらのことから,サバ切り身製品を介しアニサキス症を起こす可能性が示唆されたが,サバの種類,産地,地域ごとのサバ流通状況によってリスクは異なるかもしれない.アニサキス食中毒を予防するためには,各地域のアニサキス汚染の状況を継続的に調査し,科学的根拠に基づいて消費者に注意喚起することが重要である.
LC-MS/MSによる乳,卵,そばおよび落花生アレルゲンの定性分析法を開発した.測定条件,タンパク質前処理における抽出工程およびトリプシン消化工程を最適化した.分析法の性能について,抽出工程も含め評価するため,各アレルゲンを含む添加回収用試料の測定を実施した.いずれのアレルゲンにおいても併行精度および室内精度が目標値を満たしており,分析法の安定性が確認できた.また,S/N比,保持時間およびペプチド比から,定性試験としての有用性が示された.さらに,乳および卵アレルゲンでは,開発法で算出した定量値とELISA法との同等性が確認できた.ただし,乳および卵アレルゲンでは市販の加工食品や一部の精度管理試料において,そばおよび落花生アレルゲンでは添加回収用試料において,定量値とELISA法との同等性が確認できなかった.以上より,本分析法は,迅速かつ簡便な定性試験として有用であることが示された.また,廃棄物が少なく環境負荷を低減できる点でELISA法の代替法として優れた方法である.
ビーム試薬(5%水酸化カリウムエタノール溶液)を用いたツキヨタケ簡易鑑別法の呈色成分であるテレフォール酸について,ツキヨタケ子実体の傘表皮および石突シミの色調との関係を明らかにした.傘表皮および石突シミの濃淡とテレフォール酸濃度は相関関係があった.当該鑑別法には直接法と抽出法の2種類の方法があるが,この結果から,子実体の状態に合わせて適切な鑑別法を選択することで,鑑別の精度向上と省力化につながると考えられる.また,ツキヨタケの有毒成分の一つであるイルジンSとテレフォール酸の濃度関係を調べたところ,両者に相関はなかった.よって,食中毒発生時の確実な原因特定においては,イルジンSの分析が必要と考えられた.
LC-MS/MSを用いた食物アレルゲン検査法は,複数のアレルゲンを一斉に分析でき,高い検出感度と特異性を持つことから開発が進められている.本研究では,複数のアレルゲンを一定量含有したモデル加工食品を加熱調理して作製し,LC-MS/MSによる食物アレルゲン一斉検査法を検討した.また複数の試験機関と室間共同試験を実施して手法の有効性を評価した.試験はおかゆとパンケーキの2種類のモデル加工食品を用い,対象アレルゲンは特定原材料8品目(小麦,卵,乳,落花生,そば,甲殻類(えび・かに),くるみ)と特定原材料に準ずるもの1品目(大豆)を含む計9品目で実施した.室間共同試験の結果,定性試験および一部のアレルゲンを除いた定量試験の精度が良好であり,他機関との比較でも高い一致率が確認された.このことから,本手法が食物アレルゲンの一斉検査に実用的であり,実際にアレルゲンを含有する食品への適用が可能であることが示された.