BCA法を用いたタンパク質ふき取り検査法について食物アレルゲンを含む特定原材料の検出感度を評価した.ステンレス板表面25 cm2に,BSAおよび特定原材料8品目(エビ粉末,カニ粉末,くるみペースト,小麦粉,そば粉,液卵,牛乳,ピーナッツ粉末)の試料を付着させて乾燥後,スワブでふき取った場合での検出感度を測定した.BSA溶液を標準溶液として目視により判定可能な検出限界値は2~2.25 μgと得られ,この時の吸光度562 nmの値は約0.3と得た.低・中・高(2.5・5.0・7.5 μg/25 cm2)汚染度の試験区を作成してふき取り法による回収試験を行った結果,誤差範囲はいずれも±0.03の範囲に収まった.また,スワブによる回収率は78.2~94.4%と求められた.特定原材料試料での回収試験を行った結果,検査面に10 μg以上の原材料が付着している場合,本法で検出が可能と考えられた.タンパク質ふき取り検査法は食品製造現場におけるアレルゲンの交差接触防止のための清浄度管理法として活用できると考えられた.
ヨウシュヤマゴボウの有毒成分であるフィトラッカサポニンB,E,Gの3成分について,ヨウシュヤマゴボウの根から単離精製した.精製では,シリカゲル,ODS,ジオールを固定相としたカラムクロマトグラフィーにより各成分が高純度で得られた.続けて,得られた精製物を用いてLC-MS/MSの測定条件を最適化し,3成分の同時分析法を新規確立した.本分析法の精度を確認するため,添加回収試験を実施したところ,回収率が74-119%,併行精度が1.0-7.1%と良好な結果が得られた.さらに,2018年に発生した食中毒の検体を分析したところ,葉からは3成分,根からは2成分のフィトラッカサポニン類が検出され,多成分同時分析の有用性が示唆された.以上をふまえ,ヨウシュヤマゴボウ食中毒発生時,喫食残品が原型をとどめていない場合や根以外を原因とする場合,より確実に原因特定をするには今回確立した多成分同時分析法が必要であると推察された.
市販野菜・果物からSARS-CoV-2を効率的に検出する方法の検討とその汚染実態調査を行った.SARS-CoV-2の定量解析にはリアルタイムRT-PCR法を用いた.拭き取り用資材や拭き取り方法の比較検討の結果,ポリエステル綿球資材を用いて,4方向で拭き取り,各方向の拭き取り終了ごとにPBSに懸濁・回収する方法の回収率が最も高かった.5種類の市販野菜・果物表面の添加回収試験において,この検査法の回収率は8~26%であった.また,ナスを用いてSARS-CoV-2の水洗効果を検証したところ,水拭きや擦り洗いにより9割以上のウイルスを除去できた.2023年6月~10月に購入した市販野菜90検体(キュウリ45検体,トマト45検体)の汚染実態調査では,8月に購入した1本のキュウリからのみSARS-CoV-2 RNAが検出されたが,感染性ウイルス数は不明であった.これより,市販野菜がCOVID-19の感染源となる可能性は低いと考えられた.咳エチケット等の感染予防対策は流通食品へのSARS-CoV-2付着予防に繋がり,食材の水洗いや基本的な感染予防対策である手洗い,マスク着用等は食品を介した感染リスク対策においても重要である.
食品試料中の対象物質の濃度を推定するためには標準曲線が用いられ,その標準曲線は一般に最小2乗法で作成される.最小2乗法を使うには測定値が分散一定の正規分布だけに従っているという条件がある.しかし,実際には試料の測定値が高いほどそのバラつきも大きくなると考えられる.そこで,本論文では分散が一定とした正規分布モデルと濃度に応じて変動させた正規分布モデルを用い,測定値の分散が試料の濃度推定に与える影響を検討した.解析する測定データは様々な分散の正規分布から生成させた乱数を用いた.その結果,対象物質の濃度と測定値が線形関係の場合,濃度と共にバラつきが増すデータで後者モデルが統計学的に適していた.しかし,標準曲線および推定濃度では両モデル間にほとんど差は認められなかった.濃度と測定値が下方および上方にくぼんだ非線形の場合でも同じ結果が得られた.以上の結果から,各種のデータについて分散を変動させた後者モデルは一定としたモデルよりも実際の測定データに適しているが,両モデルは未知試料の濃度をうまく推定できることが明らかとなった.
コーデックス規格では,蜂蜜の鮮度を示す指標として,また製造工程中の過加熱を検知する手段としてジアスターゼ活性を採用している.しかしながら,ジアスターゼ活性を偽るために,蜂蜜に外来アミラーゼを添加することがある.我々は以前の研究で非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った後,活性染色することで外来アミラーゼを簡便かつ高感度にスクリーニングする方法を開発した.本研究では,この方法の有効性を確認するために,国内で検出頻度の高かったアスペルギルスおよびゲオバチルス由来のアミラーゼを対象に,AOACの定性分析法のガイドラインに従い,12研究室が参加する共同試験を実施した.事前試験で確認した検出確率(POD)曲線から,ジアスターゼ活性値として計算された3濃度(低濃度,中間濃度,高濃度)を設定し,各濃度8試料(合計24試料)をブラインドで配付して評価した.その結果,中間濃度でのPODは予想よりも高かったものの,この方法は外来アミラーゼの有無を判定するのに十分な性能を有していることを示した.