第10版食品添加物公定書のサルモネラ試験法におけるテトラチオネート培地(TT)とラパポート・バシリアジス培地(RV)の培養温度が検出状況に及ぼす影響を評価した.食品添加物製品を分散した乳糖ブイヨンにSalmonella AbonyおよびTyphimuriumを単独接種または低菌数及び高菌数のEscherichia coli と共接種し前培養した.前培養液を接種し,TTは35±2℃,42±0.2℃および43±0.2℃で,RVはE. coli 非接種または低菌数共接種では42±0.2℃および43±0.2℃で,高菌数共接種では42±0.2℃で培養した.培養液を選択分離培地に塗布し,Salmonella の分離状況を評価した.その結果,ほとんどの条件で培養温度による差は認められなかった一方で,一部の酵素製剤共存下の高菌数共接種でS. Typhimurium非検出の例がみられた.また,一部の選択平板培地上で集落を検出できない条件もみられたが,培養温度を変更しても選択培地3種を並行して試験すれば検査結果に差異は生じないことが確認できた.
魚介類の養殖飼料に添加される酸化防止剤(ブチルヒドロキシアニソール(BHA),ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびエトキシキン(EQ))の魚体への残留を想定し,養殖サーモンにおける分析法の検討を行った.試料を塩化ナトリウム存在下,アセトン・n-ヘキサン混液(1 : 1)で抽出後,オクタデシルシリル化シリカゲル(C18),エチレンジアミン-N-プロピルシリル化シリカゲル(PSA)およびトリメチルアミノプロピルシリル化シリカゲル(SAX)ミニカラムで精製し,GC-MS/MSで測定を行い,絶対検量線法で定量した.
天然の太平洋サケを対象に残留基準値濃度,0.1 mg/kg(BHT)および0.01 mg/kg (BHA,EQ)における妥当性評価(実施者3名による1日2併行2日間)を行った結果,BHAでは真度(n=12) 92.7~99.8%,併行精度2.1~2.6%,室内精度2.4~4.1%,BHTでは真度(n=12) 91.0~92.9%,併行精度1.9~6.2%,室内精度3.2~7.1%,EQでは真度(n=12) 90.7~101.1%,併行精度2.2~2.7%,室内精度2.2~3.1%と良好であり,定量限界はBHTでは0.1 mg/kg,BHAおよびEQでは0.01 mg/kgであった.
天然由来の安息香酸(BA)の含有量を透析法で分析するにあたり,課題となった定性および定量性向上のため分析条件の検討を行った.透析法は加熱操作が無いため,加水分解等の影響を反映せずBAそのものの含有量が得られる.しかしながら,透析法におけるLC分析では,食品由来成分がBAの定性および定量に影響を及ぼす.そこで本研究では,妨害が著しい柑橘類36試料についてLCカラムおよび検出器の選択の検討を行った.その結果LCPDA測定ではPhenyl-Hexylカラムを用いることで,7試料で影響を受けることなく結果判定が可能であった.残りの29試料は選択性を向上したLC-MS/MS測定を用いることでBAの有無の判定が可能となった.オレンジ1試料は,マトリックス効果補正のため標準添加法で定量しBAの含有量を算出した.
自動生菌数測定装置を用いた検査法(テンポ法)について従来法と比較し,有用性を検討した.また,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)で提供された食品の細菌検査にテンポ法を活用した.テンポ法と従来法の比較検討において,市販流通食品を用いた試験では,多くの検査項目で概ね一致していた.しかし,野菜や果物では結果に差異が見られた(一致率: 71%~88%).大規模な国際イベントとして開催された東京2020大会では,テンポ法を使用することで,培地の作製や希釈系列の調製,混釈作業,菌数の計測,確認試験など多くの作業が不要となり,検査時間と検査人員を削減することができた.したがって,このような大規模イベントにおいて,食の安心・安全を担保するために迅速検査法は有用であると考えられる.
「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている「オニノダケの根」を含有する健康食品を対象に,フォトダイオードアレイ検出器付液体クロマトグラフ質量分析計(LC-PDA-MS)を用いた分析条件を検討した.分析対象成分は,日本薬局方,大韓民国薬局方および中華人民共和国薬典において指標とされる成分(スコポレチン,フェルラ酸,ノダケニン,リグスチリド,デクルシン,デクルシノールアンゲレート)およびフロクマリン類(プソラレン,キサントトキシン,ベルガプテン)とした.逆相系のフェニルヘキシルカラムを用い,カラム温度を45℃に設定することで,全対象成分の良好な分離が可能となった.検出波長は250 nmまたは340 nmに設定し,装置検出限界濃度(S/N≧3)は0.03~0.1 µg/mLであった.確認用として各成分のプロトン付加分子イオンを観測する選択イオンモニタリング(SIM)条件を設定した.本分析法を実試料に適用した結果,フェルラ酸,ノダケニン,プソラレン,キサントトキシン,ベルガプテン,デクルシンおよびデクルシノールアンゲレートを検出した.
LC-MS/MSによる畜産物中の残留農薬一斉迅速試験法を開発し,バリデーション試験を実施した.抽出方法は,QuEChERS法を応用し,試料をアセトニトリルで抽出し,塩析及び脱水を行った.精製については,GPCの代わりにC18カラムとPSAカラムを使用した.厚生労働省の妥当性ガイドラインに基づき,牛の筋肉,豚の筋肉及び牛乳について,0.01 µg/g及び0.1 µg/gの濃度で48項目の残留農薬の評価を行った.その結果,両濃度で3種類すべての畜産物についてガイドラインの目標値を満たした農薬は43項目であった.これにより,本法は,畜産物中の残留農薬の一斉迅速試験の有用性を示した.
GC-MS/MSによる多機能型固相抽出カラム前処理法を用いた大豆および玄米中の残留農薬一斉分析法を検討した.試料は厚生労働省の通知法に従い抽出後,QuEChERS法を参考に50 mL容PP遠沈管内での抽出液のpH調整および塩析・脱水を検討し,多機能型固相抽出カラムによる精製で使用溶媒の少量化を目指した.大豆の抽出液にはpH調整にクエン酸塩を使用し,脱水に無水硫酸マグネシウムを使用した.玄米の抽出液には,pH調整および塩析に塩化ナトリウム含有クエン酸緩衝液と塩化ナトリウムを使用し,塩析後下層の水層の一部を除去した.精製には,C18,PSAおよびSAXが混合されたInertSep VRA-PR (1600 mg/6 mL)を使用し,試験溶液を調製した.本分析法について,2濃度(0.01 µg/gおよび0.1 µg/g),5併行2日間の妥当性評価試験を実施したところ,玄米では268成分,大豆では231成分が厚生労働省の妥当性評価ガイドラインの目標値に適合した.