小児耳鼻咽喉科
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31 巻, 3 号
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第5回 日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
シンポジウム I 睡眠時無呼吸症候群―よりよい診療のために―
  • —これだけは知っておきたい診断のポイント—
    中田 誠一
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      成人と小児の睡眠時無呼吸症候群はいくつかの相違点があり,注意が必要である。通常,無呼吸低呼吸指数は成人のそれに比べて低くでても臨床症状がでやすい。また閉塞性無呼吸に伴う覚醒反応は成人に比べて起こりにくく,昼間の過度の眠気という臨床症状はでにくい。小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断基準は現在のところ無呼吸低呼吸指数が 1 以上でかつ臨床症状を伴うということが基本であるが,今後,無呼吸の重症度指標である無呼吸低呼吸指数が 2 以上という数値に変わる可能性がある。簡易スクリーニング検査においては寝ている状態を観察しているビデオ記録やいびき音録音が比較的、感度・特異度がよく,パルスオキシメーターは使い方に注意が必要である。
  • —学校保健の立場から—
    工藤 典代
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      睡眠時無呼吸症候群の小児では睡眠中のイビキや寝返りが激しい,夜尿のみならず,日中の落ち着きのなさや過活動などが話題となっている。本邦での学童におけるイビキや睡眠時無呼吸症候群の有症率を調べ,また,日常生活にはどのような傾向があるのか,啓発を目的とし,2007年に日本学校保健会が調査委員会を立ち上げ小学 1 年,5 年あるいは 6 年を対象に全国的な調査研究を行った。保護者や担任教諭,養護教諭に対する調査の結果,「イビキがある」や「睡眠中に息が止まる」と回答したのは低学年ほど多く,高学年は少ない傾向があった。日常生活面においては,「イビキをかく」群は「イビキはかかない」群と比べ,有意に「学習意欲が低下している」,「落ち着きがない」ことが判明した。また「鼻がよくつまる」群は「鼻のつまりはない」群と比べ,有意に「落ち着きがない」ことが分かった。これらの結果をもとに,日本学校保健会では小冊子を作成し,啓発資料とし,さらに日本学校保健会のホームページにも掲載した。これらの結果や資料を日常診療に活用していただきたいと考えている。
  • 加藤 久美
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は成人と異なり,眠気よりも学力低下や,多動性・攻撃性などの注意欠陥/多動性障害(AD/HD)様の認知・行動面の問題が生じやすく,発達に影響を及ぼすとされているが,そのメカニズムはまだ明らかではない。脳に器質的な影響を及ぼすとの報告,全例ではないが OSAS 治療後に落ち着きや集中力などが改善することより,小児 OSAS に対する早期介入が重要であると考えられる。小児睡眠診療では AD/HD,広汎性発達障害(PDD)の発達障害を持つ児の受診が多く,未診断のケースも少なくない。小児睡眠診療を行う上では,発達面に留意して診療を行い,保護者の困り感や,脳波所見など気になる所見がある場合に,小児科や児童精神科,療育センターなどにコンサルテーションできる体制を整えておくべきである。小児 OSAS では,発達面を含めた長期視野でのフォローが重要である。
  • —治療効果の予測含めて
    新谷 朋子, 才川 悦子, 氷見 徹夫, 宮崎 総一郎
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
シンポジウム II 小児の言語発達支援
  • 福島 邦博
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 220-223
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      平成19年には,テクノエイド協会を研究実施主体とした「感覚器障害戦略研究」がスタートしているが,聴覚分野では「聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究」が行われている。我々は,この研究課題に基づいて平成21年より難聴児の全国における言語発達の現状を調査する症例対照研究を実施してきた。この症例対照研究の目的は,本邦における難聴児の言語発達評価を行い,その問題点を明らかにすることにあり,またその過程で新生児聴覚スクリーニング等による難聴の早期発見や早期療育が,難聴児の言語発達へどのような影響をもたらしたか,と言う点につて検討することにある。平成22年 4 月30日現在,全国から 8 学年(幼稚園年中~小学校 6 年生)770名の研究参加同意が得られ,そのデータ解析を行っている。本稿では,まだデータクリーニングが進行する以前での crude な段階でのこの戦略研究の概要と,目標とする概念を紹介し,ここまでの解析で判明してきた難聴児の言語発達について報告する。
  • ~広汎性発達障害を中心に~
    宮本 信也
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 224-227
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      発達障害が小児の言語発達に与える影響は,音声言語と文字言語への影響に分けられる。音声言語に影響を与える発達障害として,知的障害,広汎性発達障害,コミュニケーション障害がある。文字言語に影響を与えるものとしては,読字障害がある。言語発達に影響を与える発達障害の中で,その影響が最も大きいのが広汎性発達障害である。広汎性発達障害では,言語発達の遅れの他,言語の使い方の問題,言語の意味の理解の仕方の違いなど,語義・語用論的な問題が大きい。そのため,広汎性発達障害児は,知的障害がない場合でも,偏った言語理解や使い方をしやすい。広汎性発達障害児への対応においては,彼らの特性に配慮した言語指導が必要となる。
  • 北川 可恵, 新谷 朋子
    原稿種別: シンポジウム
    2010 年 31 巻 3 号 p. 228-232
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      重複障害児は周産期医療の発達とともに増加傾向にあるが,正確な聴力評価が困難である。また難聴の診断のみが早期に行われ,当初は難聴単独の障害として療育が開始されるが,後に広汎性発達障害(PDD)などの他の合併症が顕著になることがある。重複障害児の聴力評価は定型発達の難聴児と同様に行われるが,脳性麻痺(CP)など脳の器質的障害を伴う児では,条件詮索反応聴力検査(COR)などの行動反応聴力検査と,聴性脳幹反応(ABR)・聴性定常反応(ASSR)の結果が一致せず,聴力確定が困難な場合がある。また,合併症の医療ケアが優先されるため,補聴器(HA)装用のタイミングは個人差が大きい。PDD を伴う児では過敏性のために HA 装用や音の刺激を嫌がることがあるため,疾患の特性を理解した上で慎重に行う必要がある。重複障害児であっても補聴効果が見られない場合は重複障害の程度を総合的に判断して人工内耳を考慮するが,療育に関わる人達の理解と見解の共通性が求められる。
ワークショップ 扁桃の免疫機能と病態
  • 高原 幹
    原稿種別: ワークショップ
    2010 年 31 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      小児 IgA 腎症における扁桃摘出術(+ステロイドパルス療法)の有効性は成人と同様に高いと考えられるが,残念ながらあまり浸透していない。その一つの理由として,扁桃と IgA 腎症の関係を証明する基礎的な背景が十分に理解されていないことが挙げられる。我々の研究結果から,IgA 腎症の扁桃では常在菌の菌体や DNA に対する過剰免疫応答が存在し,その結果,IFN–γ や BAFF(B cell activating factor)を介した扁桃 B 細胞による IgA の過剰産生とケモカイン・ケモカインレセプターを介した TCR Vβ6, CXCR3 陽性扁桃 T 細胞の腎へのホーミングが病因に関与している可能性が示唆された。これらの知見がさらに発展し,その全貌が明らかになることで,新たな治療法の開発,他科医師へのより説得力のある啓蒙の一助に繋がれば幸いである。
  • 山内 一真, 山中 昇
    原稿種別: ワークショップ
    2010 年 31 巻 3 号 p. 238-243
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
  • 小笠原 徳子, 郷 充, 高野 賢一, 氷見 徹夫
    原稿種別: ワークショップ
    2010 年 31 巻 3 号 p. 244-247
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      近年,粘膜免疫において上皮が,抗原提示経路としてより能動的な役割を果たしていることが明らかとなってきている。なかでも鼻咽腔関連リンパ組織(NALT ; nasal-associated lymphoid tissue)に代表される上気道の粘膜面は,さまざまな微生物やアレルゲンなどの抗原に常に晒されており,その上皮における粘膜免疫誘導および制御機構が,下気道や消化管粘膜と比較して特異な発達を遂げていることが指摘されているが,その詳細は未だ不明な点が多い。ここでは,口蓋扁桃,咽頭扁桃,舌根扁桃から主に形成されている NALT のうち小児期によく発達を示すことが知られている扁桃上皮について,M 細胞,樹状細胞と上皮バリアとの関係に焦点を当て,抗原提示経路としての役割について述べる。
スポンサードセミナー II
モーニングセミナー 小児気道疾患のマネジメント
  • 佐野 光仁
    原稿種別: モーニングセミナー
    2010 年 31 巻 3 号 p. 253-256
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      新生児医療のめざましい進歩の反面,気管切開症例数は年々増加の傾向にある。また最近は出生前診断がさかんに行われるようになり EXIT 法による新生児の気管切開症例も報告され,今までは致死性の疾患であった症例も生存できるようになった。しかし気管切開口が閉鎖できない症例も増加の傾向がある。気管切開受けている子どもたちが使用しているカニューレの取り扱い方について報告する。
  • 及川 敬太
    原稿種別: モーニングセミナー
    2010 年 31 巻 3 号 p. 257-263
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      喉頭気管分離術を施行した難治性誤嚥を有する重症心身障害児16例を対象に,本術式の適応,手術手技上の注意点,合併症,有用性と限界について検討を行った。16例中14例に喉頭気管分離術(Lindeman 変法)を施行し,2 例に喉頭気管分離・気管食道吻合術(Lindeman 原法)を施行した。早期合併症として永久気管孔12時の位置に出現した気管皮膚瘻を 2 例認めた。この合併症を予防するため喉頭側気管断端の縫合を慎重に行い,甲状腺と前頸筋群による同部位の被覆と死腔の充填を十分に行うことが重要である。長期合併症としては気管孔狭窄,カニューレ不適合による気管内肉芽,気管狭窄などが問題となり,気管孔及び気管内の術後管理には長期間にわたる細心の注意が必要と考えられた。術後は全例とも誤嚥による喘鳴,呼吸苦が消失し,誤嚥性肺炎が消失したことで,患児及びその家族の QOL は大きく改善したと考えられた。
ランチョンセミナー
原著
  • 成尾 一彦, 高瀬 彩子, 細井 裕司, 澤西 和恵
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 270-275
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      3 歳男児で,副鼻腔炎からの鼻性眼窩内合併症の 1 例につき報告した。感冒後に発熱,膿性鼻汁,湿性咳嗽,右眼瞼腫脹と眼球突出がみられた。CT ならびに MRI 検査で右篩骨眼窩板の骨膜下膿瘍の形成ならびに骨破壊がみられた。セフトリアキソンの点滴静注など保存的治療を 2 日間施行されたが右眼球突出の改善がみられず,当院に転院の上全身麻酔下に鼻内視鏡手術を施行した。篩骨眼窩板を介して排膿がみられており篩骨眼窩板の摘出は行わず右篩骨洞と右上顎洞の開放のみを施行した。術後経過良好で右眼瞼腫脹と眼球突出も消失し術後 6 日目に退院した。術後 2 カ月後の CT 検査では,右篩骨眼窩板の不連続性は復元され,右上顎洞ならびに篩骨洞も含気がみられた。小児鼻性眼窩内合併症(骨膜下膿瘍)は一般的に保存的治療が奏功するといわれているが,保存的治療に反応しない症例では時期を逸することなく外科的治療に踏み切るべきであると思われた。
  • —PFAPA 症候群の診断と治療—
    上羽 瑠美, 上原 貴博, 西村 信一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 276-282
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      PFAPA(Periodic Fever with Aphthous Pharyngitis and Adenitis)症候群は,周期性発熱・アフタ性口内炎・頸部リンパ節炎・咽頭炎を主症状とし 5 歳以下の乳幼児に発症する非遺伝性自己炎症性疾患である。病因や病態は解明されていないが,サイトカイン調整機能異常は重要な病態の一つであると考えられている。近年本邦での報告は増加しているが,診断に至っていない症例も多いと思われる。今回我々は,当初より口内炎などの症状に乏しく診断に苦慮した周期性発熱症例を経験した。臨床所見やサイトカインプロファイリングや遺伝子検査などの総合的な結果から PFAPA 症候群と診断した。周期性発熱を繰り返したため,両側扁桃摘出術を施行し,症状の改善を得た。周期性発熱で繰り返す咽頭炎や頸部リンパ節炎を伴う患児の診察においては,PFAPA 症候群を鑑別する必要がある。また,PFAPA 症候群と診断後は耳鼻咽喉科医として扁桃摘出術を考慮すべきである。
  • 田端 祐一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 283-292
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      2006年に小児急性中耳炎ガイドラインが発表され,中耳炎治療に対する基本スタンスが示された。当院小児科外来にて単純性の急性中耳炎と診断した 4 歳未満の217例にガイドラインを用いて重症度分類を行い,治療を行った。ガイドラインを利用して市内の耳鼻咽喉科 2 機関と治療連携を行った。耳鼻咽喉科紹介基準は,重症度分類にて重症例,中等症にて高度の鼓膜所見例,1 歳未満(全例ではない),初期・2 次・3 次治療後に鼓膜スコアが高度に悪化した例,治療中に再燃した例,3 週間以上の遷延例とした。紹介時には,スコア,重症度分類,治療内容,経過,鼻咽腔培養結果を記載し紹介した。結果,紹介率は36.8%で,鼓膜切開率は22.1%であった。本ガイドラインを用いたことで,耳鼻咽喉科医と治療の基本スタンスを共有でき,円滑に連携できた。今後,小児科医にも本ガイドラインを普及させ,耳鼻咽喉科医と密に連携をとっていくことが重要であると考えられた。
  • 長島 圭士郎, 内藤 健晴, 堀部 晴司, 堀部 智子, 清水 雅子, 木原 彩子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      当教室では,院内に口唇口蓋裂センターが開設された1992年以来,2006年 4 月までに382例の口蓋裂児に鼻咽腔閉鎖機能検査を行ってきた。当教室と日本光電社で共同開発した検査システム(NI–301)を使用した空気力学的鼻咽腔閉鎖機能検査は,構音時に鼻漏出する鼻気流速を数量的に判定することが可能となっている。鼻咽腔閉鎖不全の治療は原則的に言語訓練を主とするが,重度閉鎖不全例あるいは訓練抵抗例には咽頭弁形成術を併用する。言語訓練単独例と手術併用例の 2 群間を対象に,構音時に鼻漏出する鼻気流速の最大値を比較検討した結果,手術併用例の方が有意差をもって大きいことが明確となった。今回の検討から,本検査で鼻咽腔閉鎖不全の程度を客観的かつ定量的に評価でき,またこの 2 群間に有意差を認めたことから,本検査が咽頭弁形成術の適応を決定する評価要素の一つになりうる可能性が示唆された。
  • 菅谷 明子, 前田 幸英, 片岡 祐子, 平井 美紗都, 福島 邦博, 西﨑 和則
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 299-306
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      前庭水管拡大症は,変動する進行性の感音難聴をきたす先天性の疾患である。CT や MRI などの画像検査にて診断が可能であり,近年画像診断の普及により症例数が増加している。また,遺伝子検査が可能な疾患でもあり原因遺伝子としては SLC26A4 が知られている。聴力の悪化時にめまいを伴うことが多いため,めまいの訴えが見られた場合には聴力検査を行い,聴力低下を進行させないために迅速な治療が必要である。尚,小児の例ではめまいの訴えが不確実であり病歴の聴取が難しい。そのため,めまいの合併が考えられる場合には平衡機能検査にて前庭機能を調べる必要があるが小児に施行するのは比較的困難であり,前底機能検査を施行した報告は本邦では稀である。今回小児に急性回転性めまいを呈し,前庭水管拡大症と診断し加療された症例を 2 例供覧する。
  • 荒尾 嘉人, 小林 正佳, 北野 雅子, 坂井田 寛, 竹内 万彦
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 307-311
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      従来小児気管支異物の摘出では,術野を見ることができるのは術者に限られていた。今回,内視鏡付き小児用気管支鏡セットを使用して異物を画面に映し関係者で供覧し摘出した 2 症例を経験した。症例 1 は 1 歳 9 カ月男児でピーナッツ菓子誤嚥の 1 カ月半後に胸部 CT で左気管支異物が認められ,内視鏡付き小児用気管支鏡セットにてピーナッツ異物を摘出した。症例 2 は 2 歳 5 カ月男児で,屋内でピーナッツを食べながら走り回っていたところ,壁にぶつかり,その翌日より,咳と38℃台の発熱を認めた。3 日後の胸部 CT にて異物と無気肺を指摘され,当科入院当日に症例 1 と同様に異物を摘出した。この気管支鏡は先端に内視鏡が付いており,術者が大きな画面を見ながら操作できることから比較的簡単に異物を摘出でき,多人数で確認することにより異物の遺残を防げること,麻酔医も状況を把握でき,若い医師,学生への教育面などの利点があり,大変有用と考えられる。
  • 樋口 仁美, 中川 尚志
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 312-317
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      三歳児聴覚検診や新生児聴覚スクリーニングの普及で,難聴の早期診断やその後の療育体制の地域差がクローズアップされている。今回,診断が遅れた先天性難聴の一例を経験した。症例は12歳女児で,主訴は難聴であった。幼少時より両親が難聴に気付き,近医受診するも経過観察となっていた。小学校卒業前に難聴が原因で学業に支障がきているのではと指摘され,精査目的に当科受診となった。構音に若干の歪みを認め,先天性難聴が疑われた。しかし,言語面,学習面での大きな遅れは認めてなかった。地方都市の中心部より離れた地域に住んでいるので,各学年が少人数の一クラスしかなく,両親から学校への要望で教師も学習の進度を気に掛けていたためと推測した。また友人がほぼ同じという環境で,対人のトラブルもなく過ごすことができたものと考えられる。今後,進学や就労時に難聴によって生じる問題への対応などが必要になってくると思われる。
  • 仲野 敦子, 有本 友季子, 大熊 雄介, 舩越 うらら, 工藤 典代
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 318-323
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      千葉県こども病院では2009年 1 月から12月までに 0 歳から13歳の一側性感音難聴30例で CT 検査を施行した。CT で異常を認めた症例は17例(57%)で,その内訳は蝸牛神経管狭窄が最も多く17例中13例,内耳道狭窄も合併していた例が 4 例,明らかな内耳道狭窄を伴わずに蝸牛神経管狭窄のみを認めた例が 9 例であった。前庭水管拡大は 2 例,蝸牛および半規管の奇形は 2 例であった。
      NHS により発見された一側性難聴13例中11例(85%)で CT 上異常所見を認めた。低出生体重児と21トリソミー例が 1 例ずつで,その他は合併症のない症例であった。前庭水管拡大 2 例のうち 1 例は,ABR 精査の時点では一側性難聴であったが,CT では両側の前庭水管の拡大を認めた。
      NHS で発見された一側性難聴例では CT 検査で高率に異常を認め,CT 検査はその後の聴覚管理に有用な情報が得られることが示唆された。
  • 臼井 智子, 鶴岡 弘美, 石川 和代, 町野 友美, 増田 佐和子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 324-329
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      心因性難聴の診断をきっかけとして,思春期になって不注意優勢型の注意欠如・多動性障害(ADHD)が判明した同胞例を経験した。症例 1(16歳女性)は,14歳時に難聴と診断され補聴器を装用したが効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。症例 2(14歳女性)は症例 1 の妹で,幼少時からの滲出性中耳炎改善後も変動する難聴があり,姉と同様補聴器装用効果がなく,当科で心因性難聴と診断した。詳細な問診から 2 例とも聴覚的認知の悪さと能力のアンバランスが判明し,小児神経科での精査の結果不注意優勢型 ADHD と診断された。ADHD に対する薬物療法と介入を行って難聴は改善した。本同胞例は内因子として ADHD を有し,様々な環境因子に適応しにくい状態から二次的に心因性難聴が出現したと推察された。 心因性難聴の診断にあたっては,環境などの外因子だけでなく発達障害などの内因子の存在を念頭におき,小児神経科医などの専門家と協力することが必要であると考えられた。
  • —補聴器形の選択,VRA 閾値,RECD,きこえの発達評価について—
    富澤 晃文, 佐久間 嘉子, 遠藤 まゆみ, 坂田 英明
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 31 巻 3 号 p. 330-337
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      新生児聴覚スクリーニング後に難聴を診断され,0 歳 6 ヵ月前に補聴器装用を開始した乳児 3 例について,補聴の観点から論じた。対象児には,ベビー形または耳かけ形の装用が試みられた。0 歳 8~10ヵ月時には,インサートイヤホンを使用した visual reinforcement audiometry により各周波数における反応閾値が左右耳別に測定され,補聴器装用下の閾値も測定可能となった。実耳–カプラ差(RECD)は,周波数が高くになるにしたがい増すことが示された。補聴器装用下のきこえの発達評価のために EASD 質問紙による評価が試みられ,乳児期の聴覚的発達の様相が追跡された。本研究の手順を用いれば,満 1 歳前には各周波数の聴力閾値に基づいた補聴器の増幅効果の検証を行え,早期補聴による日常のきこえの経時的発達を 0 歳段階から評価できる可能性が示唆された。
  • Qing Zhang, Min Xu, Junrong Wei, Kimitaka Kaga
    原稿種別: Original Article
    2010 年 31 巻 3 号 p. 338-344
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      Objective: To investigate the prevalence of otitis media (OM) among Chinese children and to profile the difference between the lower and higher socioeconomic strata of society.
      Methods: Two groups of children in Xi'an, China, were selected. Group A comprised children from three kindergartens and four primary schools in rural areas, and group B children from three kindergartens and two primary schools in urban areas. All children aged 2 to 7 years were examined by both otoscopy and tympanometry.
      Results: Data of 1,967 children (834 in group A and 1,133 in group B) were analyzed. The overall prevalence rates were 3.71% for otitis media with effusion (OME), 0.51% for chronic suppurative otitis media (CSOM) and 0.51% for acute otitis media (AOM). Forty-five children (5.40%) in group A and 28 (2.47%) in group B were diagnosed with OME, with a statistically significance difference between the groups (P<0.01). No statistical significance was found between the two groups in the prevalence of CSOM and AOM (P>0.05).
      Conclusions: OME is the most prevalent types of otitis media among children in the sampled population; children with lower socioeconomic status were found to have a higher prevalence of OME; and CSOM is not prevalent among children from 2 to 7 years of age in Xi'an.
報告
  • 伊藤 真人, 安田 健二
    原稿種別: 報告
    2010 年 31 巻 3 号 p. 345-349
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/12/28
    ジャーナル フリー
      我国において新生児聴覚スクリーニング検査が開始されてから10年になるが,精査を要するリファー児の情報を一元化して管理するシステムがなかったために,どこに子育て支援を必要としている母子がいるのかについて把握できなかった。
      石川県では平成16年に耳鼻咽喉科医の有志が中心となって,「石川県難聴児ネットワーク勉強会」を立ち上げ,医師,ST,聾学校や支援学級の教師などが集まって,職種を越えた勉強会を続けてきた。そして平成20年からは石川県の健康福祉部少子化対策監室が,「健やか妊娠育児支援強化事業」の一環として,新生児聴覚スクリーニング検査でリファーであった児の情報を市町の保健福祉センターが把握して,地域で母子を支援していく体制作りが始まった。その結果リファー児の全例把握が可能となり,リファー児は精密検査を確実に受けるとともに,保健師による家庭訪問などを通した子育て支援を受けることができる体制が実現した。
診療メモ
学会参加記
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