先天性奇形である先天性後鼻孔閉鎖の手術には経口蓋,経鼻中隔,経鼻,経上顎洞など様々なアプローチ法が報告されている。内視鏡導入以前には経鼻的アプローチの手術は視野と手術操作が制限されるため再狭窄が多いという欠点があった。しかし内視鏡が導入されてから経鼻的アプローチは先天性後鼻孔閉鎖の手術において第一選択となった。
内視鏡により視野と術野が拡大され,後鼻孔を大きく開放することが可能となった。しかし依然として,再発を認めることがある。多くの術者が鋤骨の不十分な除去が再発の原因になると報告している。
われわれは鋤骨を除去したことで経過が良好であった先天性後鼻孔閉鎖の 1 例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例は 8 歳女児である。乳児期から左側の鼻汁と鼻閉と,時々いびきと睡眠時無呼吸を認めると訴えた。CT と内視鏡検査で左後鼻孔の膜性閉鎖を認めた。
全身麻酔下に後鼻孔開放術を行った。まず内視鏡下に閉鎖板を除去し,次の鋤骨を除去して後鼻孔を拡大した。手術後 1 カ月左鼻内にステントとしてエアウエイを留置した。
手術後に鼻閉などの症状は消失した。1 年間経過を観察したが再発はなかった。鋤骨の除去が再狭窄の防止に有効であった。
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