小児耳鼻咽喉科
Online ISSN : 2186-5957
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36 巻 , 3 号
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第10回日本小児耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会
教育セミナー 1
  • 鈴木 雅明, 杉本 晃, 一ノ瀬 篤司, 小谷 亮祐, 清水 理花
    原稿種別: 教育セミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     睡眠無呼吸症に対する夜間検査として終夜睡眠ポリグラフ(PSG)がゴールドスタンダードとされる。しかし実地臨床上は,多くの睡眠検査をセンター外睡眠検査等の簡易モニターに頼らなければならない。PSG が推奨されるケースは 1. 術前簡易モニターの結果呼吸イベント指数(REI)<10/h にて,手術適応判断のための精査データが必要な症例,2. 術前における中枢性無呼吸ハイリスク児,3. 術後にていびき・無呼吸,もしくは眠気,多動,感情,行動,学習の問題が残存し再評価が必要な患児,と考えられる。24か月以上の小児では,夜間モニターにて REI≧10回/時間の重症と診断されれば,積極的にアデノイド切除・口蓋扁桃摘出術の適応としてよい。一方,24か月未満児は成長を待った方がよいケースが多い。術後管理においては予想外の呼吸障害を早期に予見するため,SpO2 モニターのみならず CO2レベル,呼吸数,さらには呼吸努力のモニタリングが好ましい。
教育セミナー 2
  • 中川 隆之
    原稿種別: 教育セミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 240-245
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     小児副鼻腔炎の手術適応については,いまだ議論となることが多い。小児副鼻腔炎ガイドラインを参照し,小児副鼻腔炎の現時点で推奨される治療法,手術治療の適応についてまとめたい。急性副鼻腔炎については,日本,米国,欧州のガイドラインが存在し,推奨される治療法に大きな差異はない。急性副鼻腔炎が眼窩および頭蓋内に波及した場合が,手術適応となる。小児では,前頭窩周囲の炎症が眼窩および頭蓋内に波及することが多く,前頭窩および眼窩内側壁に関連する手術解剖の理解が必要となる。慢性副鼻腔炎については,欧州のみガイドラインが存在する。手術適応は,保存的治療が無効な場合に考慮すべきとされている。手術治療の第一選択は,アデノイド切除術と上顎洞洗浄とされており,アデノイドと慢性副鼻腔炎の関連性が注目されている。今後,小児慢性副鼻腔炎に対する手術治療に関するエビデンスの構築が求められる。
教育セミナー 3
  • 内藤 泰
    原稿種別: 教育セミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     側頭骨の画像診断において,骨性構造の観察には CT,神経や真珠腫,腫瘍など軟組織の観察には MRI が適しており,骨病変を伴う軟部組織病変や内耳疾患では両者が必要である。側頭骨 CT は耳科画像診断の中心的検査法であるが,一方で,放射線被曝への注意も必要である。小児において種々の耳症状が側頭骨 CT 検査の対象となるが,もっとも頻度が高いのは難聴である。その原因が先天性か後天性か,奇形か炎症・感染か,あるいは外傷かなど,臨床症状からあらかじめ目標となる病態を絞り込むことが見落としのない読影と,MRI など,さらなる精査への適応判断の基礎となる。一般的疾患の基本所見を理解するとともに,臨床上で遭遇した希少例について興味を持ち,成書や文献などで十分調べて正確な診断を行う経験を積み重ねることが診断力向上につながる
教育セミナー 4
  • 加我 君孝, 増田 毅
    原稿種別: 教育セミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     先天性難聴児を新生児期からその運動発達を観察すると,頸定が遅れ,抱くと頭部が後屈し,歩行の開始年齢も遅れる症例のあることにしばしば気が付く。われわれは先天性難聴児を内耳奇形のない群とある群の 2 つに分けてこの問題について調べた。前庭眼反射は回転椅子検査を用いて評価した。内耳奇形のない群で,前庭眼反射が消失している例では頸定も独歩も有意に遅れることを示した。内耳奇形のある群は,前庭半規管が形成されず一つの囊胞状になっているような症例でも前庭眼反射が出現する例が少ないことを見出した。さらに頸定・独歩は遅れるが,発達とともに獲得することを見出した。次に人工内耳が平衡バランスを改善するという報告があり,人工内耳の使用によって前庭頸筋電位が出現するか調べた。その結果,人工内耳のスイッチ OFF では出現はないが,ON にすると出現する例の少なくないことを示し,人工内耳は前庭神経を持続的に刺激しバランス機能を改善することのあり得ることを示した。
シンポジウム 1―先天性サイトメガロウイルス感染症をめぐる各科の取り組み
  • 錫谷 達夫, 生田 和史
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 259-263
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症が様々な程度の一側性または両側性難聴の原因となること,特に両側性高度難聴の主要な原因であることが明らかとなり,その診断法や予防法,治療法の開発が望まれている。300人の出生に 1 人存在する先天性 CMV 感染者の10~20%に聴覚障害が起こるが,その発症の危険因子は何だろうか? CMV 感染で人工内耳が有効な末梢性の聴覚障害が起こる発症病理はどのようなものなのか? バルガンシクロビル治療に反応する症例としない症例があるのはなぜだろうか? はたしてワクチンが開発されれば本疾患は予防できるのであろうか? 様々な疑問点が残されている本疾患に対する研究の現状を概説する。
  • 茂木 英明, 宇佐美 真一
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 264-268
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     新生児聴覚スクリーニングが普及し,先天性難聴が早期に診断できるようになった。先天性難聴の原因として,最も頻度が高いものが遺伝的素因によるものであり,次いで頻度の高いものに,先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染が知られている。先天性 CMV 感染による難聴は,先天性難聴のみならず,新生児聴覚スクリーニングを Pass し,のちに難聴を発症する,遅発性の難聴をきたす原因のひとつでもある。幼児期に発症した難聴の場合,それを見つけ出し,診断することは困難である。先天性 CMV 感染を早期に見出すには,何らかのスクリーニング以外に方法はない。我々は,長野県内の産科,小児科の協力のもと,新生児のタンデムマス・スクリーニングに着目し,これと一緒に血液を採取,血中からの CMV–DNA の検出で,スクリーニングを行う方法を検討した。先天性 CMV 感染の場合,明らかな症候がなくとも,高次脳機能になんらかの障害をきたし,いわゆる「神経発達障害」とされる場合も少なくない。耳鼻科医は聴力のみならず,全体の発達の状態を的確に評価するため,小児科医との密接な連携が必要不可欠である。
  • 稲葉 雄二
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 269-273
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     サイトメガロウイルス(CMV)の先天感染は全妊娠の約0.3%で生じ,新生児期から症状を認める症候性感染症は全感染の10–20%であるが,軽微な異常を呈する神経発達障害は見過ごされている可能性がある。先天性 CMV 感染症の自験例の検討では,発達段階に応じて特徴的な発達特性を示し,自閉スペクトラム症を呈するものを高頻度に認めた。皮質形成異常はなくても頭部 MRI の白質病変は発達および知能に強く相関することが示唆された。また,新生児期のスクリーニング体制を構築し,前方視的検討を開始した。治療においては,抗ウイルス薬治療による不可逆的な副作用は認めず,今後の長期的な神経予後の評価の下でより適切な時期の治療方法が確立することが望まれる。同時に,神経発達と聴覚の評価と支援を,耳鼻科医と小児科医が連携してより早期から介入していくことが重要である。
  • 大石 勉, 山口 明, 荒井 孝, 田中 理砂, 安達 のどか, 浅沼 聡, 小熊 栄二, 坂田 英明
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 274-281
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     先天性サイトメガロウイルス感染症(cCMV)は小児期感音難聴(SNHL)の最も一般的な非遺伝的原因であると共に神経発達遅滞の重要な原因である。
     症候性 cCMV の33%,無症候性感染症の10–15%が SNHL を呈し,さらにそのうちの10–20%は遅発性難聴として発症する。出生時一見して無症候性に見えても SNHL を合併していたり,また後に神経発達遅滞が明らかになるいわゆる無症候性 cCMV 感染症は多い。
     近年,cCMV における難聴治療にガンシクロビルやバルガンシクロビルを使用し,その有効性が明らかにされてきている。
     cCMV を早期に正確に診断して治療を開始するには,全新生児の尿や唾液を対象として PCR 法などによる迅速かつ簡便なスクリーニングをおこない(universal screening),ABR などで難聴の有無を検査することが最も有効と考えられる。さらに,難聴を呈さない cCMV 児を定期的にフォローすることにより,遅発性難聴を洩れなく診断することが可能となる。このスクリーニング体制を確立することにより遅発性難聴を含む cCMV 難聴の可及的に速やかな診断と治療が可能となる。早急な体制整備が期待される。
シンポジウム 2―小児耳鼻咽喉科領域における遺伝子医療
  • 小須賀 基通
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 282-285
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     ムコ多糖症は,ライソゾーム酵素の欠損により,ムコ多糖が細胞内に蓄積する先天代謝異常症である。ムコ多糖症は,遺伝性疾患であり 7 型に分類されている。Ⅰ・Ⅱ型は特異顔貌,関節拘縮,肝脾腫,心弁膜症,難聴,精神運動発達遅滞,Ⅲ型は重度の進行性精神発達遅滞,Ⅳ型は重度の進行性骨変形を主症状として呈する。Ⅵ型はⅠ型に類似するが,精神発達遅滞を認めない。診断は,尿中ムコ多糖分析と白血球中ライソソーム酵素活性測定によってなされる。根治的治療法は,造血細胞移植と酵素補充療法がある。共に,尿中ムコ多糖排泄の正常化,肝脾腫や関節拘縮の改善,粘膜肥厚・気道感染や伝導性難聴の改善などを認めるが,角膜・骨・中枢神経への治療効果は芳しくない。また造血幹細胞移植には安全性やドナー不足,酵素補充療法には週 1 回の投与が生涯必要であること,医療費が莫大であることなど改善すべき点がある。
  • 守本 倫子
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 286-290
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     ダウン症は800人に 1 人の割合で出生する染色体異常であり,ムコ多糖症はムコ多糖物質を代謝する酵素欠乏によるライソゾーム病である。どちらも滲出性中耳炎や感音難聴を合併しやすく,補聴器装用や鼓膜チューブ留置などの必要性やタイミングを見極めて治療を行っていく必要がある。また,咽頭狭窄があるため睡眠時無呼吸を来しやすい。アデノイドや扁桃摘出術は適応になるが,全身麻酔のリスクや,もともとの咽頭狭窄が原因で十分に治療効果が挙げられない可能性があることに注意する必要がある。2 つの疾患は遺伝的な原因も発症の機序も全く異なるものであるが,類似した共通の症状もある。手術治療が高い効果を挙げる一方,術後も症状が改善せず苦慮することも少なくない。こうした疾患においては,個々の治療方針についても小児科と連携をとっていくことが重要である。
  • 石川 浩太郎
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 291-294
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     感音難聴に関連する遺伝子は100以上存在すると言われており,個々の感音難聴患者の原因遺伝子を同定することは困難であった。これまでの遺伝性難聴研究の成果を基に,宇佐美らがインベーダー法という日本人に頻度の高い13遺伝子46変異の網羅的解析を行う検査法を確立し,2012年から健康保険の対象となった。この方法で同定されなかった場合は,共同研究による追加検査が可能である。先天性難聴の遺伝子診断を行う際は,遺伝カウンセリングの実施と書面での同意書の取得が重要である。遺伝学的検査を実施する耳鼻咽喉科医師は,十分な知識と責任を持って取り組む必要がある。遺伝子診断は難聴を診療する上で非常に有用なツールであり,今後の原因別個別化医療の発展のためにも,難聴遺伝子検査が進歩し,普及することを期待している。
  • 古庄 知己
    原稿種別: シンポジウム
    2015 年 36 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     難聴を中心に,新時代の遺伝医療のあり方を述べる。遺伝カウンセリングとは,遺伝に関する問題を抱える患者・家族に対し,遺伝に関する整理と疾患に関する情報提供を行うとともに,継続的な心理社会的支援を行っていくプロセスである。難聴に関しては,分子遺伝学上の進歩,新生児聴覚スクリーニングの導入,人工内耳など治療法の進歩により,遺伝カウンセリングのあり方が,子どもの将来の可能性を開くことを重視した最善の支援を目指す指示的対応へシフトしてきている。信州大学医学部附属病院では,平成19年より耳鼻咽喉科の難聴専門医・臨床遺伝専門医と,遺伝子診療部の小児科医・臨床遺伝専門医および認定遺伝カウンセラーが共同で,「難聴遺伝子診療外来」を運営し,主に遺伝学的検査結果説明をめぐる遺伝カウンセリングを行っている。難聴の遺伝医療そして遺伝学的検査が目指すものは,当時者である難聴児・者の健康・福祉の向上であり,そのためには難聴という障害の受容過程が治療・支援計画とともに切れ目なく進められていること,遺伝医療を支える分子遺伝学的基盤があることが重要である。そうした意味で,先天性高度難聴の早期診断・早期介入のプロセスが,遺伝カウンセリング・遺伝学的検査を適切に組み込みながら標準的医療として発展していくことが期待される。
ミニレクチャー 2
  • 原 浩貴, 田原 晋作, 山下 裕司
    原稿種別: ミニレクチャー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     アデノイド切除術・扁桃摘出術は合併症のない小児 OSA (obstructive sleep apnea)に対する治療として重要な位置づけにある。その改善率は66~80%程度とされており,現在国内でも多くの施設で施行されている。
     このうち,アデノイド切除術は,現在では,内視鏡下(経口,径鼻)や後鼻鏡下に cold instruments の他,各種のエナジーデバイスを用いて施行されることが多い。我々は2002年より coblater surgery system を使用してアデノイド切除術を行ってきた。本法では術中ほとんど出血がないことから術中の視野が良好であり,小児 OSA に対する術後成績についても microdebrider system 等を使用した場合と同等であることを確認している。
     現在,本システムでは,EVac 70 Xtra Wand と PROcise EZ Plasma Wand の 2 種類が,アデノイド切除術に使用できる様になっている。このうち後者は,小児にも使用しやすい様により小型で,かつ先端の工夫があり目詰まりを起こしにくい構造となっている。今後,より普及するためには,Wand のコストの問題が解決される必要がある。
モーニングセミナー
  • 林 達哉
    原稿種別: モーニングセミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 306-311
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     ガイドラインの整備,ワクチン環境の充実,新規抗菌薬の登場など,近年小児耳鼻咽喉科感染症を巡る状況は好転しているように見える。しかし,日常診療では相変わらず個々の症例に対して迷い,悩むことが多い。迷ったときには基本に立ち帰るのが古今東西最善の解決策であろう。今回,いくつかの論点を通じて基本を明らかにし,さらにこれを掘り下げる。この過程で小児感染症に対する理解が深まり,診療の質は向上すると考えられるからである。常識的内容も含まれるかも知れない。しかし,常識は偏見と表裏の関係にあり,打破するには時に外圧が必要となる。他科からの視点も外圧として用い,論点として取り上げた。すべての論点に正解が用意されているわけではないが,ともに考え診療の質向上につなげる材料としたい。
ワークショップ―小児人工内耳適応基準(2014)をめぐって
  • 山本 典生
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 36 巻 3 号 p. 312-315
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     小児人工内耳適応基準(2014)では適応年齢の下限が 1 歳に下げられ,体重の下限が 8 kg と設定された。また,両側人工内耳装用が有用と判断された場合は否定しないとされた。これらの変更に伴い,いくつかの手術手技上留意すべき点が生じることとなった。乳児は低体重で循環血液量が少ないため,少量の出血でも問題が生じうる。乳突蜂巣の発育が未熟な症例では,骨髄からの出血をこまめに止血しながら手術を進めることが肝要である。また,乳児では茎乳突孔が外側にあるため,顔面神経損傷を避けるべく皮膚切開が乳様突起先端にまで及ばないようにしなければならない。乳児における人工内耳本体の固定のための糸を設置する際,硬膜露出の可能性があり,セルフドリリングスクリューの使用が有用である。また,両側人工内耳手術を異時性に行う場合は加熱メスの使用が有用である。さらに両側手術による前庭機能障害を避けるため,低侵襲手術を考慮する必要がある。
  • 太田 有美
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 36 巻 3 号 p. 316-320
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     言語獲得前の小児に対する人工内耳手術においては,術後のハビリテーションに工夫を要する。成人と異なり小児は言葉で答えてはくれないため,言語聴覚士は患児の行動・反応をみてマップの作成や調整をしなければならない。セラピーに乗せるためには,興味を持つおもちゃを用いて条件付けをし,患児と“やりとり”ができるようにしなければならない。小児の人工内耳ハビリテーションを行うには,子供の遊びに付き合う根気強さ,行動・反応を見極める観察眼,発達の程度や個性に合わせて関わり方を変えられる柔軟性,保護者や療育施設の先生との連携をするコミュニケーション能力が必要である。言語獲得前の小児の場合,人工内耳手術はスタートであり,その後のハビリテーション・療育が言語発達ひいては社会性の発達に極めて重要である。
  • 片岡 祐子
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 36 巻 3 号 p. 321-325
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     2014年に改訂された人工内耳適応基準では,小児の適応年齢は従来の 1 歳 6 カ月以上から,1 歳以上に引き下げられた。この適応基準改定の背景には,近年の研究から低年齢での人工内耳の有用性や手術の安全性が確立されたことはさることながら,新生児聴覚スクリーニングの普及も大きく貢献していると言える。
     新生児聴覚スクリーニングにより早期の療育開始が可能となり,また早期に音声による言語情報が入力されることによりコミュニケーション能力が向上する確率は有意に高くなる。本邦でも2000年度よりモデル事業として新生児聴覚スクリーニングは開始され,以後全国的に拡大しているが,スクリーニング実施にはいまだ地域差が大きいのが実情であり,全例実施されている産科施設は約半数程度でしかない。新生児聴覚スクリーニングを受け,早期に精密検査,療育へと繋げられた児では,1 歳時点で難聴の程度を判断するのは困難ではなく,早期の人工内耳手術は可能である。新生児聴覚スクリーニングとその後の診断,療育体制の整備を行うことで,難聴児の音声によるコミュニケーション能力の向上を目指したい。
  • 吉田 晴郎, 神田 幸彦, 原 稔, 木原 千春, 高橋 晴雄
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 36 巻 3 号 p. 326-330
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     小児人工内耳については2014年に適応基準が見直され,日本耳鼻咽喉科学会の福祉医療・乳幼児委員会は「両耳聴の実現のために人工内耳の両耳装用が有用な場合にはこれを否定しない」としている。さらなる聞き取りの質(Quality of Hearing)改善を目指した両側人工内耳では,初回術側の対側の音源からの言語や騒音下での言語聞き取りの改善が得られることが報告されている。当施設で両側人工内耳埋め込み術を行い,単語了解度と語音明瞭度検査が評価可能であった小児36名に対し,どのような症例に対し有効かを調べた結果からは,対側手術時年齢が低い症例や手術間隔が短い症例で両耳聴による利点が特に大きいことがわかった。今後,両側人工内耳は効果が予想され同意が得られる症例には勧められる治療であると考えられた。
  • 宮川 麻衣子, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    原稿種別: ワークショップ
    2015 年 36 巻 3 号 p. 331-334
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     2014年 2 月に日耳鼻福祉医療・乳幼児委員会より公表された小児人工内耳適応基準(2014)により手術適応年齢が 1 歳以上(体重 8 kg 以上)に引き下げられ,小児人工内耳手術の低年齢化が加速している。
     個々の症例について,複数の聴力検査(COR, ABR. ASSR など)や,画像検査(CT, MRI)により手術時期を決定するが,画像検査では原因不明である例が多く,早期手術を躊躇してしまうことがある。
     そこで,近年発達した難聴の遺伝学的検査による原因診断が有効と考えられている。原因遺伝子の診断率は35%程度と高率であり,原因遺伝子が同定されれば,今後,自然経過による改善の見込みはないと考えられる。また,遺伝子型から予想される臨床像(聴力像,発症年齢,難聴の進行性,内耳奇形の有無,随伴症状,人工内耳の効果など)が人工内耳手術の時期や,残存聴力活用型人工内耳(EAS)の選択,電極の長さの選択に有効であると考えられる。
     このように,遺伝学的検査は手術適応や治療方針の決定に重要な情報を提供してくれる検査である。難聴の診断がついたら早めに検査を行い,検査結果に基づいた治療方針を決定するのが望ましいと思われる。
ランチョンセミナー 2
  • 湯田 厚司
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 335-341
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     小児スギ花粉症は増加し,低年齢化している。治療薬は最近増えているが,十分でない。小児治療の変遷と問題点を概説した。現在 6 カ月児から薬剤を使用できるが,剤型と年齢での用法に問題があり,特に 6 歳と 7 歳児での用量に違いが大きく,小児の代謝は早いので投与法に注意する。多くの抗ヒスタミン薬は食事の影響を受ける。ロラタジンは空腹時服用で血中濃度が減少し,他の抗ヒスタミン薬は逆に増える。濃度の高いフルーツジュースは薬剤吸収のトランスポーターを阻害し,吸収障害を起こす。おそらく多くの薬剤で見られる現象であり,服用時の注意となる。ウイルス性鼻炎での鼻汁過多は血管透過性亢進が主体である。抗コリン作用による鼻汁抑制は少ないので第 1 世代抗ヒスタミン薬の効果は少ない。舌下免疫療法は12歳未満に保険適応でないが,我々は小児舌下免疫療法を2006年から多数例に安全に効果的に行っており,今後の小児例への展開を期待する。
ランチョンセミナー 4
  • 山中 昇
    原稿種別: ランチョンセミナー
    2015 年 36 巻 3 号 p. 342-349
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     肺炎球菌ワクチンの普及や新規抗菌薬の登場により,小児急性中耳炎の臨床像は大きく変わってきている。しかし遷延性や反復性を示す難治性中耳炎患児はまだ明らかな減少は認められず,耳鼻咽喉科臨床において対応に難渋する場合が少なくない。中耳炎の難治化には,集団保育による細菌の容易な伝播,2 歳未満の低年齢における免疫未熟,薬剤耐性菌,特に耐性インフルエンザ菌の増加,バイオフィルム形成などの要因が複雑に絡み合っていると考えられる。急性中耳炎を難治化させないためには,(1) 両側罹患,(2) 集団保育,(3) 2 歳未満,(4) 鼻副鼻腔炎の併発,のリスクファクターを有する患児に対しては,初期から急性中耳炎診療ガイドラインの治療アルゴリズムの step-up 治療を行い,さらに細菌量を減少させ,バイオフィルム形成を阻止するために早期の鼓膜切開・開窓が必要である。難治化してしまった中耳炎に対しては,起炎菌の薬剤耐性やバイオフィルム形成などを考慮して,新規抗菌薬,マクロライド抗バイオフィルム治療,鼓膜換気チューブ留置術,十全大補湯による免疫賦活,免疫グロブリン製剤の補充療法,などを適確に組み合わせて治療を行うことが必要である。
原著
  • 成尾 一彦, 森本 千裕, 山下 哲範, 太田 一郎, 大山 寛毅, 北原 糺
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 36 巻 3 号 p. 350-355
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     2006年から2014年の 9 年間に当院で加療した小児頸部膿瘍10例(男児・女児各 5 例)につき検討した。年齢は 3 か月から14歳(平均 5 歳 3 か月)であった。造影 CT での膿瘍形成部位(重複含む)は,後頸間隙 7 例,咽頭後間隙 4 例,前頸間隙 2 例,傍咽頭間隙 1 例であった。膿瘍からの検出菌は,4 例(1 歳以下)が Staphylococcus aureus,2 例が Streptococcus pyogenes で,その他 4 例は菌増殖を認めなかった。手術アプローチについては,咽頭後間隙に膿瘍形成のあった 4 例には全身麻酔下に経口的アプローチが,その他 6 例には経皮的アプローチ(5 例は局麻下,1 例は全麻下)が選択されていた。気管切開を施行例や複数回の切開排膿を必要とした症例はなかった。小児頸部膿瘍に対しては,抗菌薬投与ならびに早期の切開排膿が肝要であり,適応を選択すれば,局所麻酔下の切開排膿も有効で早期治療に直結する。
  • 田中 康広, 海邊 昭子, 深美 悟, 春名 眞一
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 36 巻 3 号 p. 356-362
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     過去 5 年間に当科で手術を施行した先天性真珠腫初回手術症例23例における術式の変遷に関して調査を行い,真珠腫の進展度に応じた術式選択について検討を行った。
     2009年から2012年までは顕微鏡下手術を基本とし,補助的に内視鏡を使用する内視鏡補助下耳科手術がほとんどの症例で行われていた。術式に関しては真珠腫の進展範囲に応じ,鼓室形成術,経外耳道的上鼓室開放術および外耳道後壁保存型鼓室形成術が選択されたが,その割合に一定の傾向は認めなかった。
     一方,2013年からは経外耳道的内視鏡下耳科手術の割合が増加し,2014年では術式の 8 割を占めた。その背景として真珠腫の早期発見により Stage ⅠやⅡの症例が半数を超え,鼓室内の操作で真珠腫を一塊に摘出できる症例が増加したことが考えられた。しかしながら,進展例では外耳道を保存した乳突削開術が必要であり,進展度に応じた術式選択が必要と考える。
  • 竹久 誠, 鈴木 雅明, 安井 拓也, 伊藤 健
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 36 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     症例は 5 歳男児,先天性外耳道狭窄症を伴う小耳症として他医院でフォローを受けていたが,耳痛・耳後部痛,発熱,および開口障害を主訴に当科受診。初診時外耳道は高度に狭窄し,深部は悪臭を伴う黄色膿汁と白色角化堆積物で充満,CT では外耳道から鼓室を中心に顎関節周囲,耳介後方に至る広範な膿瘍を認めた。潜在的に存在していた外耳道真珠腫を起因として炎症が生じ,外耳,および中耳膿瘍に発展したと判断,耳処置と抗菌薬による加療にて膿瘍は軽減,退院後も debris を除去する耳処置を継続した。12歳となった時点で耳介,および外耳道形成術を行った。
     小耳症の多くは外耳道閉鎖症,ないしは狭窄症を伴う。このうち外耳道狭窄症から外耳道真珠腫を合併することは稀ではないものの,感染を契機に重症化し膿瘍形成まで至った例は珍しい。小耳症に膿瘍形成を生じた場合,耳瘻孔や乳様突起炎だけでなく,潜在的な真珠腫の可能性も念頭に置かなければならない。
  • 冨山 道夫
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 36 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
      症例は10カ月,男児で39℃の発熱,鼻汁を主訴に初診した。中鼻道に膿性鼻汁を認め,上咽頭には膿付着がみられた。上咽頭より A 群 β 溶血性連鎖球菌(A 群溶連菌)迅速診断を施行したところ陽性で,A 群溶連菌感染症を疑い clavulanic acid/amoxicillin (1:14) (CVA/AMPC (1:14))を投与した。3 日間内服後も発熱が続き再診した。初診時の細菌検査で膿性鼻汁,上咽頭の膿より AMPC の MIC が 8 μg/mL を示す A 群溶連菌が検出された。白血球数33700/μL(顆粒球58%)と顆粒球優位の白血球上昇を認め,ぺニシリン(PCs)に耐性を示す A 群溶連菌による急性鼻咽頭炎と診断した。ceftriaxone の 2 日間点滴静注により解熱し,その後 tebipenem pivoxil を 7 日間投与し治癒した。本症例で検出された A 群溶連菌は薬剤感受性検査からは PCs 耐性菌が疑われたが,遺伝子解析がなされておらず確定には至らなかった。今後の A 群溶連菌の薬剤感受性を注視する必要がある。
  • 安岡 義人, 中島 恭子, 村田 考啓, 紫野 正人, 近松 一朗
    原稿種別: 原著論文
    2015 年 36 巻 3 号 p. 374-380
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
     過去 6 年間に当科外来を受診した15歳以下の小児鼻出血77例の血管病態を電子内視鏡の通常光と狭帯域光観察(narrow band imaging: NBI)を用いて診断し,好発部位と血管形態別 6 型分類の特徴を明らかにした。好発部位は95%以上が鼻中隔前下方皮膚粘膜移行部付近とキーゼルバッハ部であった。血管形態分類では線状型(linear type)39例(50.6%),網状型(reticular type)34例(44.2%),肉芽型(granular type)2 例(2.6%),点状型(punctate type)1 例(1.3%),瘤型(aneurysmal type)1 例(1.3%)で陥凹型(recessed type)は該当例がなく,静脈性出血であった。小児の鼻出血の好発部位と血管病態に基づき,小児の鼻出血の初期対処法は患側の母指で鼻翼を正中の鼻中隔に圧迫し,手掌は開き他 4 指を対側下顎角部に当て挟む,母指圧迫止血法:thumb press maneuver (TPM)が合理的で効果的な止血法である。
学会報告
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