小児耳鼻咽喉科
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37 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 有本 友季子, 仲野 敦子, 金子 由佳, 松島 可奈, 小俣 卓, 福井 香織, 飯田 由紀子, 児玉 一男, 渡辺 淑, 猪野 真純, ...
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     正常発達で成長していた 4 歳女児の発語が徐々に消失し,精査の結果,小児後天性失語の代表的疾患である Landau-Kleffner 症候群(LKS)の診断に至った一例を経験した。睡眠時脳波検査では棘波が多焦点に頻発しており LKS 診断の決め手となった。ステロイドパルス療法は脳波所見の改善に有効であったが,その後ステロイドや抗てんかん薬の服薬困難が続き脳波所見は再び悪化を認めた。コミュニケーションについては視覚的言語の理解は良好で,主に聾学校で指導を受けている。正常発達であった小児の発語が消失した場合,進行性や後天性発症の難聴が疑われ耳鼻咽喉科を受診する例が少なくないが,本疾患のように神経科領域の疾患に起因することもあり,小児科医との連携が正確な診断や治療を進める上で重要と思われた。
  • 丸山 裕美子, 飯野 ゆき子, 吉崎 智一
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     当院では2013年 2 月より難治性滲出性中耳炎または鼓膜アテレクターシスに対し鼓膜輪下より鼓室内に T-tube を留置する subannular tube(SAT)法をおこなってきた。SAT 法を選択した症例は 4 症例 7 耳であり,SAT 法を施行した際の年齢の平均値は7.2(中央値 8)歳,男児 2 例,女児 2 例であった。SAT までの病悩期間は平均56.7(中央値:57)カ月であり,この間に平均2.0回の経鼓膜チューブの挿入術がなされていた。SAT 挿入後気導聴力は平均22.7 dB 改善した。SAT 後チューブが自然脱落した耳は 3 耳であり 1 耳で鼓膜穿孔の自然閉鎖を認めているが,すべての耳で滲出性中耳炎や鼓膜アテレクターシスの再発なく経過している。SAT 法はこれまで対応に苦慮してきた難治性滲出性中耳炎や鼓膜アテレクターシスに対する一選択肢となると考えられる。
  • 任 智美, 奥中 美恵子, 北條 和歌, 都築 健三, 西口 道子, 阪上 雅史
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     ダウン症は高率に感音難聴を合併し,CT にて内耳奇形を高率に合併することが報告されている。今回,ダウン症児33例62耳とコントロール群26例50耳を対象とし,左右別の聴力評価を行った。全例に側頭骨 CT を施行し,計27項目の内耳構造の計測を行った。ダウン症では13耳(21.0%)に高度以上の感音難聴を認めた。
     27項目の中でコントロール群の測定値−2SD を下回った割合が最も多かったのは外側半規管側骨島径で52耳(83.9%)であった。
     上半規管骨径,後半規管骨径,蝸牛長径,蝸牛の高さ,前庭長径,内耳道幅径においてダウン症児では有意に小さかった。各半規管腔径,蝸牛回転短径,前庭短径,内耳道長径には有意差を認めなかった。蝸牛神経管径,内耳道幅径と感音難聴は有意に関連していた。今回,ダウン症の内耳構造は61/62耳(98.4%)と高率に異常を認め,高度~重度難聴耳すべてに存在した。これは先天性難聴児の奇形率よりはるかに多い。
     今回,高度~重度感音難聴に関与する項目は蝸牛神経管径と内耳道幅径であり,ダウン症の難聴の原因として考えられた。
  • 本林 光雄, 稲葉 雄二, 西岡 誠, 川崎 洋一郎, 井坂 友一, 西尾 信哉, 茂木 英明, 大平 哲史, 岩崎 聡, 中村 友彦, 宇 ...
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は頻度の高い胎内感染症だが,出生直後は無症候性であっても遅発性に症候を呈する例も報告されており,臨床像は不明な点が多い。我々は先天性 CMV 感染の予後を明らかにすることを目的とし,前方視的研究を行っているので報告する。【方法】対象は我々の施設で出生した新生児3072名。新生児マススクリーニング採血時に専用ろ紙に血液を採取し,real-time PCR 法で CMV DNA を検出した。血液で陽性の場合,乾燥臍帯で CMV DNA を測定し,陽性の児を本症と診断した。【結果】8 例(0.26%)を先天性 CMV 感染と診断した。症候性は 2 例で,うち 1 例でガンシクロビル投与を行った。【考察】新生児先天性 CMV 感染スクリーニングは,本症の早期発見に有用であった。今後も研究を継続し,遅発性障害の発症率や抗ウイルス療法の有無による予後の相違について明らかにしたい。
  • 花田 誠
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     動静脈奇形は動脈と静脈の間に正常の毛細血管床を介さずに異常な交通(nidus)を生じた先天性の血管奇形であり,頭頸部領域では比較的発生頻度が低いとされている。今回咬筋内に発生した小児の動静脈奇形の一例を経験したので報告する。症例は12歳男児で,初診時に左下顎部に強咬合にて膨隆し内部に bruit 様血管雑音が聴取される径3.5×3.5 cm 大の弾性軟の無痛性腫瘤が認められた。受診後の頸部エコー検査と頸部造影 CT 及び MRI にて咬筋内動静脈奇形と診断され,3D–CT angiography では左咬筋内に流入動脈として顔面横動脈とこれに連続する nidus 及び導出静脈として咬筋静脈が認められた。治療は外切開による摘出術を施行し,現在まで再発の徴候なく経過良好である。本疾患は自然退縮が期待できないため可及的早期の治療が一般的であるが,第一選択として可能であれば手術療法が望ましく,その術前評価には 3D–CT angiography による血管系の把握が有用である。
  • 仲野 敦子, 有本 友季子, 星野 直, 工藤 典代
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     2012年から2013年の風疹大流行により40例以上の先天性風疹症候群(CRS)の報告があった。我々は出生時には症状がなく先天性風疹感染症(CRI)の診断であったが,1 歳 6 カ月時に左右差のある難聴の診断となり CRS となった症例を経験した。母親は妊娠10週に風疹に罹患し,出生時には児の血清抗体価上昇もあり胎内風疹感染が確認されたが,合併症状はなく自動 ABR は両側パスであり CRI と診断された。風疹分離が陰性となった後の ABR 検査で右60 dBnHL,左無反応で難聴の診断となった。
     2013–2014年の CRS 報告45例中 9 例はワクチン接種歴の母から出生しており,妊娠中の風疹罹患歴がなしあるいは不明であった症例は13例であった。このうち何症例で難聴を合併していたかは不明であるが,ワクチン接種歴があり不顕性感染であった母親からの CRS による難聴症例が発生した可能性もあると考えられた。
  • 上村 佐恵子, 島田 茉莉, 伊藤 真人, 西野 宏
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     4 歳 8 カ月女児。夜間の息苦しさで頻回に覚醒するため,睡眠時無呼吸症候群の疑いで受診した。後鼻孔を閉塞する咽頭扁桃肥大,アレルギー性鼻炎の所見に合致する鼻粘膜所見がみられたが,気道閉塞をきたすような口蓋扁桃肥大はなかった。肥満と低身長を認め,易疲労感の訴えがあったため,小児科で精査を依頼した。低身長に対する検査の結果,橋本病と診断され,甲状腺ホルモン補充療法が開始された。治療 2 週間で夜間覚醒の消失を認め,治療 3 カ月で甲状腺ホルモン値は正常化,鼻閉の消失といびきの改善を認めた。簡易終夜睡眠検査上は,初回の無呼吸低呼吸指数(AHI:回/時)53.8,治療 5 カ月後21.9,治療10カ月後26.4,最終的に治療16カ月後に AHI 8.5まで改善した。睡眠時無呼吸症候群と甲状腺機能低下症の症状は類似点が多く,低身長や易疲労感などの甲状腺機能低下症の臨床症状にも留意することが必要である。
  • 臼井 智子, 増田 佐和子
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     外耳道へ異物挿入を繰り返すことをきっかけとして自閉スペクトラム症(ASD)が判明した一例を経験した。症例は 6 歳男児で,頻回に外耳道への異物挿入を繰り返すことから耳鼻咽喉科を受診し,心療科を紹介して ASD と診断された。反復的な行動だけでなく社会的コミュニケーションの障害,衝動性の高さも合併しており,治療介入により症状は徐々に改善した。外耳道へ異物挿入を繰り返す機序として,ASD の特徴である常同行動が本児の内的要因と環境変化などの外的要因により強迫的行動まで発展したことと,感覚知覚異常により痛みに鈍感であったことが考えられた。ASD では適切な対応がなされないと不適応から二次的な精神障害に至る場合があり,早期発見と早期介入が重要である。外耳道異物挿入が ASD 発見のきっかけになる可能性があり,心療科や児童精神科,小児神経科と連携することが必要であると考えられた。
  • 野村 研一郎, 片山 昭公, 高原 幹, 長門 利純, 岸部 幹, 片田 彰博, 林 達哉, 原渕 保明
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     Video-Assisted Neck Surgery(以下 VANS 法)は,前胸部外側に作成した皮膚切開部から皮弁を吊り上げることでワーキングスペースを作成し,内視鏡補助下で甲状腺切除を行う術式である。創部が衣服で隠れるため,若年女性にとって有益な術式であるが,特殊な手術器具を要するため,小児での報告は少ない。当科で2009年から VANS 法で手術を行った210例のうち15歳以下の小児 3 例を認めた。よって,これらの症例の治療経過と小児甲状腺結節に対する手術適応についての検討を行った。全例甲状腺に約 3 cm 大の充実性の結節性病変を認めており,全例合併症なく成人と同様に手術を行うことが可能であった。3 例とも摘出病理は良性の結果であったが,濾胞腺腫と思われた一例で,実際は濾胞癌であり,術後半年後にリンパ節転移を認めたため,手術を含めた追加治療が行われた。成人同様,3 cm を超えるような甲状腺結節の際には手術治療を念頭におく必要があると考えられ,VANS 法は小児にも適応可能であった。
  • 長安 吏江, 菅谷 明子, 假谷 伸, 福島 邦博, 片岡 祐子, 前田 幸英, 大道 亮太郎, 西﨑 和則
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     平成26年の小児人工内耳手術のガイドラインの改正により,今後は人工内耳手術の低年齢化および両側人工内耳の症例が増えると予想される。両側人工内耳手術の効果については,本邦ではまだ報告が少なく,その検証が必要である。当科ではこれまでに50例の小児両側人工内耳症例を経験しており,その背景因子や術後の聴取能,言語発達等について検討した。当科では平成14年 4 月から平成27年 1 月までに50名の小児(18歳未満)が両側人工内耳手術を受けていた。これらの児のうち37名が新生児聴覚スクリーニングにて両耳要精密検査とされ,その全例が早期補聴をなされており,両側人工内耳術後の聴力閾値は 3 分法にて38.0 dB から32.1 dB へと,また語音明瞭度も72.5%から87.8%へと一側の人工内耳装用時よりも改善していた。言語発達についてはまだ十分なデータがないため,今後長期的なフォローアップを行う必要があると考える。
  • 成尾 一彦, 西村 忠巳, 大山 寛毅, 森本 千裕, 山下 哲範, 山中 敏彰, 北原 糺
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     2004年 1 月から2014年 8 月に奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科で手術加療し術後半年以上の経過を追跡しえた小児慢性穿孔性中耳炎19症例20耳(男児 9 例,女児10例)につき,診療録をもとに後ろ向きに検討した。鼓膜穿孔閉鎖は20耳中16耳(80%),聴力改善は評価可能であった19耳中18耳(94.7%)に得られた。術直前に耳漏があること,術後の鼓膜炎,は有意に穿孔閉鎖率を低下させていた。一方,手術時年齢,鼓膜穿孔の大きさ,中鼓室粘膜病変の有無,手術アプローチ(接着法と耳後切開),鼓膜形成法(inlay 法と underlay 法)では統計学的有意差を認めなかった。鼓膜穿孔閉鎖に際しては,手術前後の感染の制御が肝要と思われ,手術施行年齢,対側耳の状態も考慮し,可能なかぎり耳漏のない状態で手術にのぞみ,術後の鼓膜炎に注意が必要である。
  • 坪田 雅仁, 將積 日出夫
    原稿種別: 原著論文
    2016 年 37 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
     症例は 2 歳女児。1 歳時に小脳腫瘍に対し,化学療法と陽子線治療を施行された。陽子線治療終了後,半年で左聴力低下を訴え当科受診。COR や OAE で明らかな難聴が指摘されなかったが,ABR では左耳は無反応であった。出生後より難聴の既往がなかったことから陽子線治療の晩期障害と診断し,ステロイド治療を施行したが聴力改善は見られなかった。脳腫瘍に対する放射線治療は約 3 分の 1 の症例で感音難聴を来すという報告があり,治療後数年経過してから晩期障害として発症することもあるため注意が必要である。また,小児においては聴力評価が成人に比べて困難であることから,詳細な問診と ABR をはじめとする他覚的聴力検査を施行し正確な聴力の評価を行うことが重要であると考えられた。
診療メモ
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