重度感音難聴による重度感音難聴と診断された患児において,先天性難聴の遺伝子診断(インベーダー法)および難聴遺伝子129遺伝子を網羅した難聴遺伝子パネル(otogenetics deafness gene panel DA3)を用いた次世代シークエンサー(NGS)によるエクソームシークエンス解析を行った結果,
SLC26A4遺伝子においてc.919–2A>G(IVS7–2A>G)の単一ヘテロ接合体を認めた。両親の聴力検査を行ったところ,母親に中等度難聴を認め,同領域のエクソンに対してのダイレクトシークエンスの結果,母親にも同様の変異を認めた。今回の家系においては難聴においては優性遺伝型式を呈しているように見えるが,患者と母親の聴力図が大幅に異なっているため,母親のCT検査ができなかったものの,母親と患者では病態が異なっていることが想定された。本遺伝子変異は常染色体劣性遺伝であると一般的に認識されているが,文献的には二遺伝子変異やプロモーター領域の変異との組み合わせで発症した
SLC26A4遺伝子単一ヘテロ変異を持つ前庭水管拡張症例も報告されている。このため今回我々はこれら既知の変異や他の遺伝子変異の合併に関しても検討を行ったが,これら変異は同定できなかった。しかしながら,上記のような機序が報告されていることから,これら以外の形で
SLC26A4遺伝子単一ヘテロ変異が関与して発症した可能性も否定できなかった。遺伝カウンセリングにおいて,
SLC26A4遺伝子変異の場合はその発症可能性について,常染色体劣性遺伝ではあるものの,単一ヘテロ変異であっても他の要因との組み合わせで発症する可能性があることが報告されていることから,臨床遺伝専門医と相談して慎重に遺伝カウンセリングを行う必要があるといえる。
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