小児耳鼻咽喉科
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39 巻, 1 号
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巻頭言
追悼文
原著
  • 森本 千裕, 西村 忠己, 成尾 一彦, 大山 寛毅, 大塚 進太郎, 山中 敏彰, 北原 糺
    2018 年 39 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    ダウン症は難聴を高率に合併することが報告されている。伝音難聴の原因となる滲出性中耳炎はダウン症児に高率に合併し,両耳に遷延する場合は補聴器装用が必要になるが補聴器装用開始のタイミングに苦慮することがある。そこで当科で補聴器を装用した7名のダウン症児について,補聴器装用のタイミングや滲出性中耳炎の合併,聴力の経過について検討を行った。その結果7名中6名に滲出性中耳炎を認め,ダウン症児の聴力や補聴器の装用状態には滲出性中耳炎による伝音難聴が大きく関与していた。また早期に補聴器装用を開始した例では良好な言語発育を認め,のちに聴力が改善する例でも早期に補聴器を装用することが言語発育を促す結果に結びついたと考えられる。滲出性中耳炎の多くが遷延,再発を繰り返していたことからも,難聴をきたす両側性の滲出性中耳炎が合併する場合は,補聴器の装用を躊躇するべきでないと考えられた。

  • 津川 二郎, 西島 栄治
    2018 年 39 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    われわれが行っている小児の声門下腔狭窄症に対するpartial cricotracheal resection(PCTR)について術式の詳細を報告する。PCTRは,狭窄した声門下腔を構成する輪状軟骨の前壁,側壁および気管近位部を切除し,遠位の正常気管断端を輪状軟骨後壁にはめ込む形で甲状軟骨部と吻合する術式である。本症に対する初回手術としてPCTRを5例行った。先天性1例,後天性4例でNew Myer-Cotton分類は,Grade III 4例,Grade IV 1例であった。後天性の4例で気管切開管理が行われていた。手術時年齢は,3歳から10歳(中央値9歳)であった。5例全例で呼吸症状は改善し,気管切開を行っていた4例全例でカニューレを抜去した。PCTRは,気道粘膜の連続性と喉頭の構造を保った気道再建が可能であり,Grade III~IVの高度な声門下腔狭窄症に対して有効な手術術式である。

  • 坂井田 麻祐子
    2018 年 39 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    小児の気道異物による窒息死亡事故は年間約20件,気管・気管支異物事故は100件以上発生している。事故予防には,小児の保護者,保育者に対する啓発が重要であり,筆者は以前より,主に幼稚園教諭を対象に啓発活動を続けている。今回,気道異物に関する認識,園内での対策,事故啓発意志の有無について,三重県内国公立幼稚園長144名にアンケート調査を実施した。園長らの気道異物事故に関する知識は豊富であるが,園での給食や弁当等,食材に対する配慮や指導は,玩具に比し不十分であった。節分の際は,大半の施設で豆まき・福豆摂取が実施されていることが分かった。現状として,園から保護者への啓発はほとんど実施されていないが,啓発の場としては,健診,病院に次いで園がふさわしいとの意見が多かった。今後も,園教諭らから小児,保護者へ気道異物予防への認識がより普及するよう活動していきたい。

  • 民井 智, 新鍋 晶浩, 金沢 弘美, 飯野 ゆき子, 吉田 尚弘
    2018 年 39 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    難治性滲出性中耳炎,鼓膜アテレクターシス,癒着性中耳炎の治療にsubannular tube(SAT)留置術がある。SAT留置術を行った症例の臨床経過と有用性を検討した。

    2012年12月~2015年12月までにSAT留置術を施行した11症例(13耳)を検討した。年齢は6~13歳で,男児8例,女児3例であった。疾患は鼓膜アテレクターシス7例(8耳),癒着性中耳炎4例(5耳)であった。

    観察期間内で自然脱落は11耳,平均留置期間は14ヶ月であった。平均13.9 dBの気導閾値改善を認めた。術後感染が4耳で生じ,脱落後永久鼓膜穿孔は認めなかった。

    SAT留置術は永久鼓膜穿孔のリスクが低く,鼓膜アテレクターシスは脱落後も経過良好であったことから有用性が高いと考えられた。一方,癒着性中耳炎は感染・再挿入・鼓室形成術に至った症例が多く,適応は慎重に考慮しなければならない。

症例報告
  • 吉浜 圭祐, 小森 学, 藤井 可絵, 土橋 奈々, 守本 倫子
    2018 年 39 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    第1鰓裂瘻孔・嚢胞は外耳道から顎下部に病変を呈する。本疾患の手術例を3例報告する。【症例1】1歳2か月,女児。右外耳道に6.6 mm大の腫瘤を認めた。外耳道真珠腫の診断にて摘出術(TEES)を施行したが,2歳0か月時に右耳下部腫脹が出現し,翌月には同部に膿瘍形成したため,頸部外切開にて摘出術を要した。【症例2】1歳10か月,女児。左耳下部に4 cm大の腫瘤を認め,画像上皮膚へ水平方向に微小瘻孔を認めた。頸部外切開にて摘出した。【症例3】1歳3か月,女児。右外耳道に漿液性内容を伴う腫瘤を指摘。MRIにて垂直方向の瘻管を認めた。耳後部切開にて摘出した。

    真珠腫の術前診断例でも,嚢胞性病変を伴うなど本疾患を疑う場合は,鑑別目的でMRIを考慮すべきである。治療には手術を要するが,病変は顔面神経と近く,また小児発症例が多い。Belenky分類を参考にした上で,病変と顔面神経との位置関係を十分に評価しながら特に愛護的な手術操作をすべきと考えた。

  • 田端 秀之, 煙石 真弓, 額賀 真理子, 平井 康太, 加藤 政彦, 望月 博之, 濱田 昌史, 飯田 政弘
    2018 年 39 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    小児患者の中でも重症心身障害児は気管切開や経鼻胃管の留置などにより副鼻腔炎を合併する機会が多い。今回,我々は先天性大脳白質形成不全症により拡大したと思われる副鼻腔に感染を繰り返した症例を経験したので報告する。

    症例は,13歳の女児。生後7カ月頃より痙攣発作やジストニアを認め,頭部MRI所見から基底核および小脳萎縮を伴う髄鞘形成不全症(hypomyelination with atrophy of the basal ganglia and cerebellum; HABC)と診断された最重度重症心身障害児。13歳になり発熱を繰り返すようになり,頭部CTにおいて前頭洞を中心に著明な両側副鼻腔の拡大と粘膜肥厚,液体貯留を認め,急性副鼻腔炎と診断した。抗菌薬治療により改善するものの,その後も急性増悪を繰り返したため,内視鏡下副鼻腔手術を施行した。術後,液体貯留は残存したがマクロライド少量内服と去痰薬で感染の頻度は大幅に減少した。中枢神経疾患の既往のある児では,脳萎縮に伴い副鼻腔の拡大を来たし感染が難治化する可能性が考えられた。

  • 井上 彰子, 井田 裕太郎, 細野 祥子, 松浦 賢太郎, 松島 康二, 豊田 理奈, 和田 弘太
    2018 年 39 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は5歳女児で感冒症状の後,歩行障害,めまいが出現,当院小児科でマイコプラズマ先行感染による急性小脳失調症と診断され入院加療となり入院3日目に平衡機能検査目的に当科紹介となった。当科初診時にはめまい症状と眼振はすでに消失していたが立位保持が困難で,その他の体平衡検査は施行できなかった。入院6日目よりステロイドの点滴加療を行い徐々に症状が改善し,入院8日目に電気眼振図(ENG),15日目に重心動揺検査が可能になった。ENGではeye tracking test(ETT)は不良であった。入院15日目に歩行可能になり退院した。重心動揺検査は発症5.5か月で開・閉眼で総軌跡長,外周面積等が改善した。ETTは発症7.5か月で垂直眼球速度の改善を認めた。本症例において神経耳科検査は急性期における診断には必ずしも有効ではなかったが,回復過程における治療効果判定の他覚的指標としては有効であった。

  • 佐合 智子, 井上 真規, 田中 恭子, 小河原 昇
    2018 年 39 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    症例は4歳3か月男児。近医にて滲出性中耳炎の加療の際に上咽頭腫瘤を指摘された。前医でのMRI検査にて上咽頭に嚢胞性腫瘤を認めたため,手術加療目的に当科紹介受診となった。以前より睡眠時無呼吸が出現しており,両側口蓋扁桃肥大もみられた。簡易ポリソムノグラフィーではAHI(Apnea-Hypoxia Index)4.0回/時間と軽度の睡眠時呼吸障害を認め,全身麻酔下に両側口蓋扁桃摘出術および腫瘤摘出術を施行した。手術所見では,腫瘤は右耳管隆起から扁桃上極まで進展し,広基性であった。腫瘤摘出の際に黄白色の粘調な貯留液が流出し,嚢胞と判明した。病理組織学的所見では鰓原性嚢胞との診断であった。また発生部位より第2鰓裂嚢胞,Bailey IV型と考えられた。術後1年経過したが,再発を認めていない。

  • 天津 久郎, 金村 信明, 木下 彩子, 中野 友明, 植村 剛, 副島 千晶
    2018 年 39 巻 1 号 p. 56-63
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    小児では転倒などにより箸や歯ブラシなどの異物による口腔外傷が多く見られる。稀に異物が頚髄,頭蓋内などの深部に刺入するものの発見が遅れることや,異物が刺入しなくても気腫や深頸部感染症を生じること,時に遅発性の内頸動脈閉塞を合併することがある。したがって,小児口腔外傷は患者家族への十分な説明と厳重な経過観察が必要であり,注意を要する疾患である。

    口腔より箸が刺入し,頭頸部深部に達して異物として残存した小児2症例を経験した。1例は異物が上咽頭粘膜下,斜台前方の頭長筋内まで達して後咽頭間隙に蜂巣炎を併発しており,内視鏡を用いて経鼻的に異物を摘出した。もう1例は異物が頸動脈間隙に達して,周囲の間隙に気腫を生じており,外切開により異物を摘出した。両症例とも術後,遅発性の内頸動脈閉塞などの合併症は認められなかった。

    自験例と小児の口腔異物症例について,若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 細野 祥子, 松島 康二, 和田 弘太
    2018 年 39 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル フリー

    披裂部型喉頭軟弱症の手術方法はレーザーを用いた余剰粘膜切除の有効性が報告されているが,術後合併症として両側披裂部の癒着による声門上狭窄,肉芽形成などが報告されている。今回我々は後天性披裂部型喉頭軟弱症の2症例に対して,両側披裂部の粘膜を縫縮し,術後合併症を認めず良好な経過を得たので報告する。

    症例1はけいれん重積による脳症をきたし経鼻胃管栄養管理となっていた2歳女児で,SpO2の低下は認めなかったが努力性呼吸が著明のため手術加療の方針となった。症例2は後にJoubert症候群と診断された1歳男児で,酸素投与が必要な状態であったため手術加療の方針となった。両者ともに術後に呼吸状態の改善を認め再発も認めていない。本術式は喉頭に対して低侵襲であり,経鼻胃管の継続留置など,慢性的な刺激が披裂部に加わることが予想される症例に対しては肉芽形成等による声門上狭窄を防ぐ目的としても有効と考える。

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