小児耳鼻咽喉科
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最新号
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特別講演
  • 山中 龍宏
    原稿種別: 特別講演
    2024 年 45 巻 2 号 p. 49-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    乳幼児を中心に,食べ物による誤嚥,窒息事故が起こり続けている.国の保育管理下のガイドラインで危険な食べ物と指摘され,予防するための調理法が明記されているにもかかわらず,同じ窒息死が起こり続けている.保育管理下で窒息死が起こった場合,検証委員会を設置して,検証報告書を国に提出することが義務付けられているが,その報告書を見ると,保育士の心構えだけが強調されていて予防にはつながっていない.こどもの窒息を予防するためには,食べ物のサイズ,物性値,こども側の要因などの詳細な情報を収集する「窒息登録システム」を構築する必要がある.また,ピーナッツの袋に「5歳未満の子どもには食べさせないでください」という表記を企業に依頼したり,テレビコマーシャルで,丸のままのミニトマトの映像を流している食品会社に不適切な映像であることを指摘して,映像を変更してもらうなどアドボカシー活動を行うことも必要である.

シンポジウム2『小児難聴―いつ,誰に,何を,どう伝えるか―』
  • 中澤 操
    原稿種別: シンポジウム2『小児難聴―いつ,誰に,何を,どう伝えるか―』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    新生児聴覚スクリーニング(以下新スク)事業の大きな特徴は,保護者が予期していないことを突然告げられて耳鼻咽喉科に紹介されることである.この点が,何か心配してから受診する通常診療とは全く異なる.2001年に公的新スクが開始された秋田県では,不安を抱える保護者に対して誰からも同じ答え(子どものきこえはだいじ,など)が返ってくることが理想と考え,聴覚が音声言語獲得に果たす役割について多職種が共通認識をもつことを中心に仕組みを作りかつ継続してきた.また,検査結果を告げられたあと緊張して耳鼻咽喉科(精密医療機関)に来院する保護者に対応する担当医の初回面接の役割は非常に大きい.本稿では秋田県の仕組みの概要と,筆者の保護者対応(初回面接と結果説明)について,それぞれ重要なポイントを述べたいと思う.

  • 増田 佐和子
    原稿種別: シンポジウム2『小児難聴―いつ,誰に,何を,どう伝えるか―』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 61-64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    先天性難聴児の多くが乳児期に診断され,保護者のもと補聴器や人工内耳の装用や療育が開始されるが,当事者である難聴児主体の医療への移行についてはあまり意識されてこなかった.セルフアドボカシーのスキルを育てるためには,まず難聴児が自らの聴覚障害を理解することが不可欠である.子どもへの医学的な情報提供は年齢と成熟度に応じて随時行われるべきであるが,9歳頃からが一つの目安になると考える.中高生になれば難聴の機序も理解できるようになる.伝えるべき内容は聴覚の解剖生理,難聴の機序,聴力図の見方などの医学的知識や,多様性,セルフアドボカシーなど多岐にわたる.押しつけにならないよう,子どもにわかる言葉で正確な情報を伝えるように心がける.保護者にも配慮しつつ子どもの意志を尊重し,自己肯定感,自尊感情を高めるように意識することも大切である.聾学校などの教育機関と連携することも有用であると考える.

  • 片岡 祐子
    原稿種別: シンポジウム2『小児難聴―いつ,誰に,何を,どう伝えるか―』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    聴覚障害児が学齢期に直面する課題は,聴取だけでなく,言語発達,学力,社会性等多岐にわたる.年齢により課題の質は異なり,また複雑化する可能性は高く,特にインクルーシブ教育を受ける聴覚障害児に対しては,適切な理解と支援,合理的配慮が必要である.通常学校の教師に対して必要な教育的支援としては,聴覚障害に関する基本事項であり,難聴児の聴取の状況,話し方の配慮・環境調整方法,生じやすい問題・不明点や課題がある際に連携する機関が挙げられる.一方で,聴覚特別支援学校教師に対してはより専門性の高い内容,例えば医療(検査や補聴機器等)・福祉の新規情報,補聴機器の適正装用,通級指導児への介入が求められる.インクルーシブ教育を受ける児でも専門的介入が必要な児は多く,中核機能を担当する専門機関が関与しながら医療,教育,福祉で効率的に連携し,適切な教育的支援を実施することが望まれる.

  • 南 修司郎
    原稿種別: シンポジウム2『小児難聴―いつ,誰に,何を,どう伝えるか―』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 70-73
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    本稿では,小児難聴者の就労支援に関する現状と課題について,耳鼻咽喉科医師が理解すべき主要なポイントを論じる.まず,障害者雇用促進法とその関連法令に基づく法的枠組み,および医療職における欠格条項の見直しについて概説する.次に,聴覚障害者の就労状況に関する最新データを提示し,特に職場定着率や収入水準に焦点を当てた分析を行う.また,東京ジョブコーチをはじめとする就労支援サービスの具体的な役割を紹介し,小児難聴者の就労を成功に導くために耳鼻咽喉科医師が果たすべき役割について考察する.本稿は,医療現場において小児難聴者の就労支援を推進するための指針を提供することを目的とする.

パネルディスカッション『発達障害にみえる難聴児,難聴にみえる発達障害児』
  • 田中 学
    原稿種別: パネルディスカッション『発達障害にみえる難聴児,難聴にみえる発達障害児』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 74-75
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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  • 中村 由紀子
    原稿種別: パネルディスカッション『発達障害にみえる難聴児,難聴にみえる発達障害児』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    「発達障害は聴覚障害を合併する」というと言い過ぎであるが,発達障害の子どもたちの多くが聴覚認知の問題を抱える.幼児期に受診する未診断の発達障害の子どもには少なからず言語発達遅滞があり,その診療では聴覚検査で難聴を否定することから始めることが多い.自閉スペクトラム症(ASD)では言語コミュニケーションや注意の転換の課題が,注意欠如多動症(ADHD)では注意の維持やデフォルトモードネットワークの課題が見られる.選択的学習症(SLD)の読み書き障害では音韻障害が主体であり,ADHDの合併が多い.発達障害に共通して感覚異常を合併することが多く,聴覚面で見ると聴覚異常により正しく音を聞き取れない場合がある.発達障害は聴覚情報処理障害を合併しやすいのである.本稿では発達障害の聴覚認知に起こる問題として,特に注意障害,デフォルトモードネットワーク,感覚異常について概説する.

  • 益田 慎, 中村 由紀子
    原稿種別: パネルディスカッション『発達障害にみえる難聴児,難聴にみえる発達障害児』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    健診などにおいて,難聴児や言語発達障害児が自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動症(ADHD)とされ,必要な介入が遅れることがある.これらが併発していることはあり得るが,特に未就学児においては,難聴と言語発達遅滞を厳格に発達障害から分離する必要はなく,どのような介入が必要かを判断することが重要である.本稿ではこの考えに基づいて,聴覚過敏を訴えたADHD例,ASDと鑑別することが難しかった語音症例,学年が進むにつれ知能指数が低下した言語発達障害例について紹介し,言語病理学的な視点から考察を加えた.最後になぜ難聴児がASD児と誤認されるのかについて,間主観性の成立に関わる脳内システムを中心に考察した.

ダイバーシティ推進委員会企画セミナー『働き方改革,みんなの疑問にお答えします』
  • 任 智美, 奥中 美恵子, 巽 恵美子, 都築 建三
    原稿種別: ダイバーシティ推進委員会企画セミナー『働き方改革,みんなの疑問にお答えします』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    男女平等への意識改革の取り組みにより失われつつあるものの,未だ一部において性別役割分担意識はアンコンシャス・バイアスとして根強く残っている.医学生のアンケートにより女性は医学生時代から結婚・出産において家事・育児を多く担うことを意識しており,そのために勤務形態を変化させることを考えていた.実際,耳鼻咽喉科女性医師は家事育児を多く担う傾向にあり,特に家事に対しては負担に感じていた.学生時代からのキャリアや性別役割分担に対するアンコンシャス・バイアスに関する教育を行っていくことは勤務継続に寄与すると考えられた.2024年4月から医師の働き方改革の新制度が開始となった.これは,医療機関に勤務する医師の長時間労働を改善し,医師が健康に働き続けられる環境を整備するための取り組みである.今後,男女ともに家事育児を協力できる時間を作れる体制になることが,女性医師の勤務継続の一助になり得ると思われた.

  • 野田 哲平
    原稿種別: ダイバーシティ推進委員会企画セミナー『働き方改革,みんなの疑問にお答えします』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 93-96
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    医療現場における働き方改革とワークライフバランスの実現は,近年ますます重要な課題となっている.特に,長時間労働や過酷な勤務条件が常態化してきた医療界において,この問題は喫緊の課題として認識されている.この課題は女性医師を中心に改革が進められてきたが,男女共同参画のなかで,女性医師のみの労働環境を改善しても限界がある.本稿では,まず医師の労働環境の変遷を概観し,ついで男性医師が直面している課題について検討する.働き方改革が進められている現状,これらは同根の問題である.課題に対する分析,解決策や今後の展望について,第19回日本小児耳鼻咽喉科学会学術講演会のダイバーシティ推進委員会企画セミナーにおいてセッションを行ったので,考察を含めて記述する.

  • 荒木 優子
    原稿種別: ダイバーシティ推進委員会企画セミナー『働き方改革,みんなの疑問にお答えします』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    2024年4月から医師の働き方改革がスタートしたが,長時間労働を是正し医師の健康を確保しつつ持続可能な医療を提供するという医師の働き方改革の目的の実現及び男女問わずワークライフバランスの取れた働き方を実現するためには,宿日直許可の取得等による数字上の労働時間の削減にとどまらず,実質的に業務の負荷を軽減し,誰もが働きやすい職場環境を作ることが重要である.

    その実現のためには,組織と個人の意識改革及び業務改革が必要となる.意識改革においては,医師の健康や生活を犠牲にしても患者の診療を優先するという意識を改めること,性別問わず医師も育児休業等のライフイベントに応じた必要な休暇を取得することに理解を示すということが重要である.また業務改革においては,トップダウン型及びボトムアップ型の取組みの双方が重要であり,医療機関及び診療科の特性に応じた取組みを継続していくことが重要である.

ランチョンセミナー1
  • 太田 有美
    原稿種別: ランチョンセミナー1
    2024 年 45 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    ムコ多糖症は先天性代謝疾患の一つであり,ライソゾーム酵素の欠損または活性低下によりムコ多糖が細胞内に過剰蓄積されることで全身に様々な症状が発現する疾患である.耳鼻咽喉科領域で問題となるのは,気道と難聴の問題である.扁桃肥大,アデノイド増殖,巨舌による上咽頭・中咽頭の狭窄,喉頭粘膜の浮腫や肥厚に伴う声門部・声門上の狭窄,気管軟骨の変形による下気道の狭窄が生じうる.全身麻酔下手術の周術期では気道管理に細心の注意を要する.滲出性中耳炎は高率に認められ,感音難聴も徐々に進行してくる.扁桃肥大や滲出性中耳炎は,耳鼻咽喉科の一般診療で頻度の高い疾患であるが,ムコ多糖症の症状の一部である可能性も疑って診療にあたることで早期診断につながる可能性がある.ムコ多糖症に対する治療として酵素補充療法があり,早期に介入することで生命予後やQOLの改善が期待出来る.

ランチョンセミナー4『軟骨無形成症の管理と治療』
  • 佐野 伸一朗
    原稿種別: ランチョンセミナー4『軟骨無形成症の管理と治療』
    2024 年 45 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    軟骨無形成症は,稀な骨系統疾患で,四肢短縮型低身長,特徴的な顔貌,三尖手など特異な臨床像を呈する.本症は,常染色体顕性遺伝形式をとりFGFR3遺伝子の機能獲得型変異により内軟骨性骨化が傷害されることにより発症する.本症の治療法として成長ホルモン治療や下肢延長術が行われてきた.近年では軟骨細胞増殖作用を有する治療法が開発されてきている.日本では,FGFR3による軟骨細胞増殖抑制シグナルを抑制する効果を持つボソリチドが2022年に保険適用となった.

    本疾患の耳鼻咽喉科的合併症には,睡眠時呼吸障害(中枢性,閉塞性,混合性)や中耳炎,伝音性難聴がある.特に大後頭孔狭窄は中枢性睡眠時無呼吸との関連があり,乳幼児の生命を脅かす最も注意すべき合併症である.一方,閉塞性睡眠時呼吸障害に対しては耳鼻咽喉科的外科治療が行われるが,術前のみならず術後の睡眠時呼吸障害の評価が必要である.

総説
  • 室野 重之
    原稿種別: 総説
    2024 年 45 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    川崎病では咽後膿瘍に類似する画像所見を呈することがある.これまでの日本語論文28編51例について考察し,以下の特徴を見出した.年齢の平均は6.0歳,中央値は5.0歳であり,一般的な川崎病の好発年齢より高い.造影CTでは,咽頭後部の低吸収域は辺縁の造影効果が乏しいことが大半だが,辺縁の造影を見ることもある.しかし,川崎病では穿刺や切開により膿が確認されることはほとんどない.とはいえ咽後膿瘍との鑑別は重要であり,小児科医と適切に連携して診療に臨む必要がある.あわせて,典型例と,切開による排膿が見られないことから不全型川崎病の診断に至った非典型例を提示した.

原著
  • 本郷 昭典, 北野 雅子, 竹内 万彦
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 116-121
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    線毛機能不全症候群(primary ciliary dyskinesia, PCD)は主に常染色体潜性遺伝する症候群である.PCDを予測する目的で,欧州で考案されたのがPICADARスコアであり,これは全年齢を対象としたものである.本症の原因遺伝子は人種により異なり,成人と小児では病態も異なるので,本邦の小児患者におけるPCDの予測スコアリングシステムを考案することを本検討の目的とした.当院の当科外来へ紹介された患者のうち18歳以下を対象とし,PCDと診断された群と診断されなかった群に分け後方視的に検討した.単変量解析で有意差を認めた項目について多変量解析を施行した.その結果,新生児期の多呼吸・咳嗽・肺炎,内臓逆位か臓器の位置異常,1年を通して持続する鼻炎,鼓膜の異常所見の4つが有意な項目であった.今回示された4項目を用いた新しい予測スコアを本郷スコアとして提唱した.

  • 宮本 憲征, 原田 祥太郎, 上野 裕也, 岡﨑 鈴代
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 122-128
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    小児気管切開患者では,脊椎側弯が進行し気管の形状が変化することがあり,そのような症例では気管カニューレ管理に難渋し,長さ可変式カニューレやひいては特注カニューレが必要になることがある.今回我々は,特注カニューレが必要となる予測因子を明らかにするため,当科で長さ可変式カニューレを使用した症例を,既製品である長さ可変式カニューレのみで対応可能であった12例(可変式群)と,特注カニューレが必要であった3例(特注群)に分け,2群を比較検討した.CTを用いた気管の画像解析を行ったところ,気管のねじれが特注群で有意に大きく,気管断面積が特注群で有意に小さかった.曲率は有意ではなかったが,特注群で大きい傾向にあった.断面積と曲率,および断面積とねじれを組み合わせた指標を作成したところ,断面積が85 mm2以下かつ曲率が0.45 m−1以上またはねじれが1.04以上であれば特注カニューレが必要となることが明らかになった.

  • 丸田 剛史, 小川 真, 山下 麻紀, 須藤 貴人, 岡本 周祐, 岡崎 鈴代, 三代 康雄
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 129-138
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    COVID-19大流行が小児耳鼻咽喉科領域の手術症例数に与えた影響を検討するため,2019年から2023年までの5年間に当科で施行された全身麻酔下手術の術式の月別症例数を調査し,COVID-19新規陽性者数との関連性,および年別症例数の推移について調査した.その結果,月別総手術数は初回の緊急事態宣言の発令直後に急減し,その後の緊急事態宣言の発令の度に減少していた.また術式別の年別症例数の推移に関して,鼓膜チューブ挿入術(TTI)/アデノイド切除術(Ad)/口蓋扁桃摘出術(T)の症例数が2020年に急減した後に2022年まで漸次的に減少した.2023年に,Ad/Tはベースラインまで回復を示した一方,TTIは微増に留まった.COVID-19の大流行以降の症例数減少の有無,およびその後の回復の程度の術式間差違の原因として,患者の受診抑制のみでなく,大流行に伴う適応疾患の罹患者数減少の可能性がある.

  • 宮本 真, 奥羽 譲, 齋藤 康一郎
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    経喉頭的気管挿管(以下,気管挿管)は気道確保の最も確実な方法であるが,咽喉頭や気管の損傷原因となり,気管挿管が数時間になると喉頭浮腫や粘膜の潰瘍性変化を生じるとされ,特に喉頭浮腫は抜管後気道狭窄の一因であり,再挿管が必要となることがある.

    2017年からの6年間に杏林大学医学部付属病院での手術症例や気管挿管による気道管理症例のうち,抜管直後から24時間以内に喉頭内視鏡検査を行った症例を対象とした.

    対象は男児10例,女児13例の計23例,気管挿管時の年齢は0歳から11歳.抜管後に観察された喉頭所見は,声門後部の肉芽,声門下の腫脹,仮声帯の腫脹,声帯の腫脹/発赤,粘膜びらん,創部の腫脹・白苔,声門後部の腫脹,喉頭蓋/披裂部/喉頭蓋舌根面の浮腫性腫脹,一側声帯麻痺と多様な所見を認めた.特に咽喉頭への侵襲が大きい例,成人と同じように挿管期間が5日以上で重篤な喉頭損傷が生じていた.

  • 江﨑 友子
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    低月齢における聴力レベルの測定には聴性脳幹反応(ABR)/聴性定常反応(ASSR)を用いるが,安定した検査を行うためには鎮静剤を使用した入眠が必要である.しかし,副作用のない薬剤もリスクのない鎮静もなく,呼吸抑制や徐脈に注意が必要である.トリクロホスナトリウムの内服で鎮静を行い,外来で検査を施行した0歳児251例を検討した.42例(16.7%)に呼吸抑制をきたし,発生時間は半数以上が入眠直後から15分以内であり,上気道開通性が影響していると考えられた.30分以上経過後の発生を1割程度認め,検査終了まで深鎮静へ移行する危険性を考えて対応する必要がある.リスクのない鎮静はないという意識のもとに呼吸抑制が起こる背景を考えた対応と情報共有を行うことが有効である.

  • 小口 慶悟, 西山 崇経, 文入 悠, 大石 直樹
    原稿種別: 原著
    2024 年 45 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    軟骨伝導補聴器は成人と小児で適応や購入理由・価格が異なるため別々に検討することが望ましいが,小児単一の報告は極めて少ない.

    今回我々は,軟骨伝導補聴器を試聴した20歳以下の小児症例68例を振り返り,対象における補聴器の継続率,継続群・返却群における臨床的特徴,装用効果などを検討した.全体の継続率は72%で,疾患別では両側外耳道閉鎖/狭窄群63%,片側外耳道閉鎖/狭窄群79%,外耳道開放群25%であった.年齢が上がるにつれて継続率が低下する傾向が見られた.継続群と返却群のファンクショナルゲインに有意差はなかった.購入・継続の判断には装用効果だけでなく,費用や装用感も影響していた.片側例では両耳聴効果や方向感の改善が高い継続率につながった.一方,外耳道開放例では気導補聴器との比較で継続率が低かった.本研究により,小児症例に対する軟骨伝導補聴器の有用性が示され,積極的に試聴してもらうことの重要性が示唆された.

症例報告
  • 繁治 純, 藤田 岳, 井之口 豪, 安井 理絵
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 45 巻 2 号 p. 155-158
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー HTML

    吸水性合成樹脂製玩具(水で膨らむボール)は直径数ミリから10数ミリと小さいが,水分に曝されると数倍から数10倍に膨らむ.

    症例は5歳の女児.右耳痛を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診.中耳炎として加療をされるも改善せず,当科を紹介受診した.右外耳道入口部に肉芽,その奥には褐色の球形のものが充満していた.母の話から約4か月前に挿入された水で膨らむボールを疑った.1週間後,全身麻酔下に異物を摘出,鼓膜は鼓室側に強く圧排されており後下象限に穿孔を認めた.1年経過後も穿孔は残存,標準純音聴力検査では20.0 dB(3分法)で約10 dBの気骨導差があり聴力改善目的に鼓室形成術を施行した.耳小骨は肉芽で一体化しており,一部は欠損していた.術後,聴力の左右差は消失した.

    水で膨らむボールは外耳道に数か月放置されると,鼓膜穿孔や耳小骨破壊を生じる危険性があることを周知しておく必要があると考えられた.

  • 野澤 眞祐, 細川 清人, 宮本 憲征, 岡﨑 鈴代, 原田 祥太郎, 上野 裕也, 猪原 秀典
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 45 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    下咽頭梨状陥凹瘻に対して,経口腔的に瘻管を摘出する内視鏡下瘻管摘出術が近年報告されるようになった.当科でも2例の経験を得たので報告する.

    (症例1)13歳男児.前医で2年前に左前頸部膿瘍にて切開排膿を受けた.受診の1ヶ月前に膿瘍が再発したため当科を紹介された.術前に下咽頭造影および咽喉頭内視鏡検査により瘻孔を同定することができた.手術2週間前にも膿瘍の再発を認めたが抗菌薬治療で消炎後に同手術を施行した.

    (症例2)6歳男児.4歳時に左咽頭後壁から甲状腺左葉にかけての膿瘍形成があり切開排膿を受けた.下咽頭造影や咽喉頭内視鏡検査では瘻孔は同定されなかったが,経過から梨状陥凹瘻が強く疑われ同手術を施行した.

    いずれの症例においても,術中に下咽頭を十分に展開し内視鏡で観察することにより容易に瘻孔の同定・切除が可能であった.

    2症例とも術後経過は良好で,合併症や膿瘍再発は認めていない.

  • 有馬 菜千枝, 池森 宇泰, 髙橋 真理子
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 45 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/12/27
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    ハーラーマン・ストライフ症候群は先天性の疾患で,特徴的な顔貌(小顎・小さな鼻),均整の取れた低身長,薄い毛髪,眼症状(小眼球症・先天性白内障等)などを特徴とする.小顎のため睡眠時無呼吸を合併することがあるが発症時期が小児期とは限らない.今回ハーラーマン・ストライフ症候群である成人女性が高血圧を指摘された.背景に小顎があり,終夜睡眠ポリグラフ検査を行ったところ睡眠時無呼吸の診断となった.その後CPAP療法(CPAP: Continuous Positive Airway Pressure)を開始したところ血圧コントロールが良好となった.ハーラーマン・ストライフ症候群は稀な疾患であり,治療前後の終夜睡眠ポリグラフ検査結果や特徴的な顔貌などとともに診断の経緯や治療経過について報告する.

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