室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
15 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 野口 美由貴, 水越 厚史, 前田 康博, 佐伯 寅彦, 湯 懐鵬, 柳沢 幸雄
    2012 年 15 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    既存の空気清浄手法に湿式法による臭気除去ユニットを加えた空気清浄装置(以下開発装置)について,臭気成分であるアセトアルデヒドを含むたばこ煙成分の除去効果をプロトン移動反応質量分析計(PTR-MS)により経時的に評価した。開発装置は,高性能除じんフィルター,活性炭フィルターから成る粉じん・VOC除去ユニット(Particulate and VOC Removal Unit : PVRU)の後段に新たに開発されたアミノ酸を含む薬液(化学吸収液)を用いた湿式の臭気除去ユニット(Odor Removal Unit : ORU)を配している。
    実験ではアセトアルデヒドガスあるいはたばこ煙を開発装置に連続的に導入し,装置吸入口,PVRU後,ORU後(装置吹出口)の3点において試料空気中のアセトアルデヒド,たばこ煙成分および臭気濃度を測定し,各ユニットの除去効率を比較した。その結果,PVRU後では浮遊粉じん,ニコチンなど多くの揮発性有機化合物(VOC)の除去効果が認められたが,カルボニル化合物などの含酸素有機化合物と臭気の除去効果は不十分であり,アセトアルデヒドの除去率は時間経過とともに低下した。これに対してORU後ではアセトアルデヒドの95%が除去され,臭気は99%低減した。この効果はのべ400本のたばこ燃焼時まで持続し,薬液のアセトアルデヒド吸収容量は70 mg L-1以上であった。
  • ―模擬オフィスに設置した空気清浄装置付き喫煙ブースの評価―
    野口 美由貴, 水越 厚史, 前田 康博, 佐伯 寅彦, 深田 賢, 湯 懐鵬, 柳沢 幸雄
    2012 年 15 巻 2 号 p. 135-145
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    たばこ煙および臭気除去を目的として開発された空気清浄装置(開発装置)を備えた喫煙ブースを模擬オフィス内に設置し,開発装置によるたばこ煙処理空気を模擬オフィスに排出した際の,オフィス空間の空気質に及ぼす影響を評価した。評価は,喫煙ブース内で開発装置を稼働させ8本のたばこを連続的に同時燃焼し,オフィス空間の複数点においてたばこ煙成分濃度を測定した。その結果,各測定点におけるたばこ煙成分濃度は,たばこ燃焼前に比べて大きな変化は見られず,開発装置を備えた喫煙ブースの十分な分煙効果が認められた。ただし,開発装置で除去できない一酸化炭素(CO)は,たばこ煙発生に伴い開発装置吹出口の濃度が上昇したが,オフィス空間ではオフィス換気設備の稼働により速やかに低減した。次にオフィス換気の排気口をオフィス後部に設置した場合と開発装置吹出口の直上に設置した場合の2パターンで換気を行い,オフィス空間の評価物質濃度分布を調査したところ,両者で大きな差異は認められなかった。したがって,オフィス空間の気積に対し十分な換気量があれば,オフィス空間内の評価物質濃度は,室内濃度指針値等の基準値以下まで低減し,濃度分布も生じないことが示された。また,この結果と数値流体動力学(CFD)による解析結果とはよく一致したことから,開発装置を備えた喫煙ブースの導入前に非喫煙空間に及ぼす影響を推定することが可能であると考えられた。
  • 橋本 明憲, 高橋 俊樹, 松本 健作, 鵜崎 賢一
    2012 年 15 巻 2 号 p. 147-161
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    家庭に於ける花粉除去手法として最も普及しているのは空気清浄機である。SubGrid-ScaleモデルとしてCoherent Structure Modelを用いたLES,粒子挙動シミュレーション,及びその解析や可視化を行う自作ソフトウェア群Computational fluid dynamics and Aerosol Motion Property Analysis Suite(CAMPAS)を開発し,縦5 m横5 m高さ2.5 mの室内床面中央に配置した前面吸気上面排気型の空気清浄機による,スギ花粉挙動を解析した。その結果,このモデルの空気清浄機は,室内に一様分布させた花粉の4割程度しか吸入できず,5割強の花粉を落下させてしまうことが分かった。また,空気清浄機の吸気面以外の面である側背面や,部屋壁面に花粉が衝突し,落下しやすいことが明らかになった。空気清浄機の吸気面前方領域に存在する花粉は吸入しやすく,また,後方領域の花粉も排気により再度上昇させることで吸入できることが判明した。空気清浄機が吸入しやすい,吸気面からの方位角θや仰角φが存在する。この角度の値は吸排気モデルに依存すると考えられる。従って,空気清浄機の吸排気仕様を変化させ,花粉を吸入できる領域を拡大することで,花粉除去率のさらなる向上が期待できる。
講座
技術資料
  • 細田 洋平, 松村 年郎, 吉川 賢治, 森田 孝節, 櫻川 昭雄, 青柳 玲児, 中村 亜衣, 松延 邦明
    2012 年 15 巻 2 号 p. 173-180
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    室内環境内に存在するホルムアルデヒド(HCHO)は刺激性を有し,かつ,変異原性や発ガン性が指摘されている。WHOや我が国においても室内空気中のHCHOに関してガイドラインが制定されており,種々の行政対策が行われている。空気中のHCHOの測定法に関しては2,4-Dinitrophenylhydrazine(2,4-DNPH)試薬を含浸したカートリッジ捕集・溶媒抽出/HPLC法やガスクロマトグラフ法が広く使用されている。しかし,DNPH法は試薬自体に変異原性や発ガン性が指摘されており,これに替わる新たな測定法が模索されている。本研究においては有害性のない2,4-ペンタンジオン溶液(酢酸アンモニウム,酢酸,2,4-ペンタンジオン)を捕集液とし,サンプリングに高濃縮が可能なMiniature Diffusion Scrubber(MDS,ミニチュア拡散スクラバー)を用いた。本装置は捕集にガスの拡散を利用していることから捕集液の蒸発が少ない。そのため,捕集液量を極端に少なく(1 ml程度)できることから高感度測定が可能である。本法の測定原理はHCHOが酢酸アンモニウムの存在下で2,4-ペンタンジオンと反応して誘導体(3,5-diacetyl-1,4-dihydrolutidine)を生じるので,紫外線吸収検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーで測定する方法である。本法の繰り返し精度(相対標準偏差パーセント)はサンプリングを含めて4.5%である。定量下限は1 Lサンプリングで0.012 ppmである。二酸化硫黄,二酸化窒素及びオゾンは共に室内環境レベルでは影響を受けない。本法はJISのアクティブサンプリング法(DNPH-HPLC法)と有意な相関が認められ,室内空気中のHCHO測定法として実用性が確認された。
調査資料
  • 関根 嘉香, 河村 歩美, 池田 四郎
    2012 年 15 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    室内環境学会は様々な分野の研究者が集まり,学際的に意見を交換できる場として1994年に設立され,現在に至っている。本研究の目的は,わが国の室内環境に関わる研究者の関心の所在およびその経年変化を明らかにし,室内環境学のあり方を考察するための基礎資料を提供することである。そこで,室内環境学会学術大会に際して発行される講演要旨集に掲載された講演要旨を対象に計量書誌学的観点に基づくトレンド分析を行い,これまでの研究内容(室内環境の場,対象物質など)や発表者の属性にどのような傾向があるかを調査した。その結果,1998年に31件であった研究発表数は,2003年に約3倍に増加し,2008年以降は100件程度で推移していた。2004年頃まではシックハウス問題に関連し,住宅におけるホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOCs)を扱う研究が多く報告されていたが,近年は研究対象となる室内環境の場および「対象物質」はともに多様化する傾向にあった。また本学術大会の一般研究発表の約半数が,産学,学公など,立場を超えた連携研究によるものであり,本学会が実学志向の強い研究者の集まりであることが示唆された。
室内環境学関連情報
feedback
Top