室内環境
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16 巻, 2 号
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原著論文
  • 小座野 貴弘, 関根 嘉香
    2013 年 16 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    ホルムアルデヒドは,動物実験施設や製薬施設において滅菌剤として広く利用されている。ホルマリン燻蒸後の室内空気中のホルムアルデヒド濃度は,数百~数千ppmの高濃度状態になる。したがって,燻蒸後のホルムアルデヒドガスを含む室内空気は,大気中へ放出する前に排出基準を満たすように下げる必要がある。本研究は,燻蒸後の残留高濃度ホルムアルデヒドガスを除去するために,二酸化マンガンを主要成分として添加したハニカムエアフィルターを組み込んだ新しい空気清浄装置を開発することを目標としている。実験は,試作した装置を用いて実大規模の高気密チャンバー(23 m3)においてホルマリン燻蒸を模擬して行った。その結果,装置は,チャンバー内で500~3,000 ppmの高濃度で発生させたホルムアルデヒドガスを室温で分解除去し,除去されたホルムアルデヒドの物質量と化学量論的に等しい物質量の二酸化炭素が生成することを確認した。燻蒸後のホルムアルデヒド濃度は,処理装置の稼働に伴い速やかに減衰し,その減衰速度は初期の気化濃度に依存的であるが,稼働開始8時間後には大気への排出基準レベルまで減少した。この結果,試作した装置は,ホルマリン燻蒸後の残留ホルムアルデヒドガス対策として利用できる可能性が見いだされた。
  • 松村 年郎, 中村 亜衣, 青柳 玲児, 松延 邦明, 神野 透人, 飯塚 誠
    2013 年 16 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    室内空気中のホルムアルデヒドの標準測定法としては2,4-dinitrophenylhydrazine(2,4-DNPH)試薬を含浸したカートリッジ捕集・溶媒抽出/HPLC法がWHO,米国EPAやJIS等で標準測定法として採用されている。しかし,DNPH法は試薬自体に変異原性や発ガン性が指摘されており,これに替わる新たな測定法の開発が模索されている。本研究においては試薬自体に有害性の無い2,4-ペンタンジオン(2,4-pentanedione,以下2,4-PDと略記)をシリカゲルに含浸した捕集剤を作製し,これをガラス管に充填したアクティブサンプラーを開発した。このサンプラーについて,抽出法の検討,捕集効率,再現性,理論値と分析値の比較,本法とDNPH/HPLC法を用いた実測値の比較等基礎的検討を実施した。その結果,抽出方法は,抽出液(2,4-PD溶液)を直接捕集管に通液する方法を確立することができた。また,ホルムアルデヒド濃度0.03 ppmのガスを用いて繰り返し測定を行った。その結果,繰り返し精度は相対標準偏差で3.5%(n=7)であった。ポリエステルバッグを用いてホルムアルデヒド濃度0.066~0.190 ppmの理論ガスを作製し,これらガスについて,本法と理論ガス濃度の比較を行った結果,理論値に対して本法の測定値は±3.8%以内で一致した。更に,居住環境内で本法とDNPH/HPLC法との同時測定を行った。その結果,両者の測定値には有意な相関が認められ,本法の実用性が確認された。
技術資料
  • 阿部 恵子, 村田 朋美
    2013 年 16 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    日本の夏は外気の湿度が高く,空調や除湿の無い収蔵庫ではカビが発生しやすい環境になりやすい。このような収蔵庫での文化財保管手段として,水蒸気を通さない保存袋の使用について検討した。市販の熱融着可能な膜素材を用いて試験袋9種類を作製し,それらの試験袋にカビセンサ(センサ菌とその栄養分が封入されている)を入れ,ヒートシールにより試験袋を密封した。密封された試験袋を25℃・相対湿度93.6%の高湿環境に曝露し,試験袋内部の微小気候をカビ指数で評価した。カビ指数は調査環境がどの程度カビを発育させやすいか(カビ発育ポテンシャル)を数値化したもので,その測定にカビセンサを用いる。カビセンサを入れた密封試験袋の高湿環境下の曝露期間は2,7,14,28,56,または182日間とした。密封試験袋内の微小気候は使用した膜素材によって異なった。2種類のアルミラミネートフィルム(0.114と0.092 mm厚)の袋内では長期の曝露期間(182日間)においてもセンサ菌の発育が認められずカビ指数は検出下限未満(< 0.3)であった。それに対し,ポリエチレンフィルム(0.01 mm厚)の袋内では短期の曝露期間(2日間)においてセンサ菌が発育し,カビ指数80以上が計測された。アルミラミネートフィルムを用いた保存袋は,夏にカビが発生しやすい環境となる収蔵庫での文化財保存に利用できると思われる。カビ指数調査は,博物館や美術館等における総合的有害生物管理(IPM)の実践において有用と思われる。
調査資料
  • 永吉 雅人, 杉田 収, 橋本 明浩, 小林 恵子, 平澤 則子, 飯吉 令枝, 曽田 耕一, 室岡 耕次, 坂本 ちか子
    2013 年 16 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル オープンアクセス
    上越市立の全小学校(新潟県)児童を対象に,化学物質過敏症(multiple chemical sensitivity: MCS)様症状に関するアンケート調査が2005年7月に実施されている。今回,その調査から5年経過した2010年7月,実態の時間的推移を把握するため,対象を市立の全小中学校の児童・生徒に拡げてアンケートの再調査を実施した。また今回新たに就寝時刻についても合わせて調査した。アンケートの有効回答数は14,024名分(有効回答率84.0%)であった。
    調査の結果,14,024名の回答児童・生徒中MCS様症状を示す児童・生徒は1,734名(12.4%)であった。今回の調査で主に,次の3つのことが明らかとなった。
    1. 小学1年生から中学3年生へ学年が進むに伴い,MCS様症状を示す児童・生徒の割合が増加傾向にあった。
    2. 小学生全体のMCS様症状を示す児童の割合は,今回調査した小学生の方が5年前に比べて大きくなっていた。
    3. 小学3年生から中学3年生までのMCS様症状を示す児童・生徒はMCS様症状を示していない児童・生徒より就寝時刻が遅かったことが明らかとなった。
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