日本シルク学会誌
Online ISSN : 1881-1698
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8 巻
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原著
  • 神津 剛夫
    1999 年 8 巻 p. 1-7
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     外国産生糸の繊度むら検査について、かせ間分散、かせ内分散及び抽出誤差を把握するため、中国産生糸及びブラジル産生糸各15荷口、計30荷口について、112.5mの繊度糸400本を採り、その計量値に基づいて一元配置の分散分析を行った。
     全分散に占めるかせ間分散の割合は、平均して中国産生糸では5.40%、ブラジル産生糸では23.76%であった。平均繊度の抽出誤差を単純抽出の場合と比較すると、かせ間分散の割合が小さい中国産生糸では検査料糸数が5かせの場合で2倍以上、ブラジル産生糸では25かせの場合で2倍、5かせでは4倍以上となった。繊度偏差の抽出誤差の増加程度は、平均繊度の場合に比べてかなり小さく、中国産生糸ではごくわずか、ブラジル産生糸では25かせの場合で50%程度、5かせでは2倍余りであった。
  • (I) 繭の煮熟度と節発生数との関係
    森 良種, 坂部 寛, 川名 茂
    1999 年 8 巻 p. 9-16
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     生糸の節制御技術の確立を目的として, 本報では生糸非破壊検査システムを用いて, 繭の煮熟度と生糸の節発生数との関係を検討した。煮熟度を簡単に変えることができる鍋煮繭法を用いて, 繭の煮熟度を変化させて生糸を繰製した。その結果, 生糸の節発生数は, 煮熟時間を極端に長くすると, 小節, 中節等が急激に増加し, 節の種類は大部分が「わ節」であることが判明した。
     また, 煮熟時間の増加に伴う「大わ節」と「さけ節」の発生消長が極めてよく一致することがわかった。蒸気式煮繭機である繭検定用自動煮繭機により煮熟度を極端に進めた場合でも同様の現象が生ずることを確認した。従来, 小節の発生は品種依存性があり, 工程の影響が比較的少ないとみられていたが, 煮熟度を極端に進めると著しく増加することが認められた。
  • (II) 生糸の同一かせ内における節の制御
    森 良種, 坂部 寛, 川名 茂
    1999 年 8 巻 p. 17-23
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     普通煮繭と老煮繭の煮熟度が異なる原料繭の混繰状態を変化させることにより, 同一かせ内で, 節の発生が少ない部分と極端に多い部分が存在する生糸を繰製した。老煮繭を1粒混入しても節発生に大きく影響する一方, 老煮繭を用いた場合でも, 繰糸速度を速くすることにより節の発生を抑制できることがわかった。節制御の例として, 節が少ない部分と節が極端に多い部分が一定の間隔で規則的に出現している特徴ある生糸を繰製した。
  • 山田 晶子
    1999 年 8 巻 p. 25-31
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     布の乾燥実験で分かった事を基に、絹布の放湿過程を数値計算によるシミュレーションで再現することを試みた。布の乾燥過程について、基本的に2つの仮定を行った。1つは、布に入る熱エネルギーと布から蒸発する水分との間にはエネルギーバランスが保たれていること。もう1つは、布の水分率が低くなった時には、水分吸着曲線に沿って布の水分率が変化すると仮定した。数値計算結果の速度定数k1は、実験結果と殆ど等しく、k2は実験結果より約1.7倍と大きいが、実験結果と同様のグラフを得る事ができ、実験結果を大変良く再現した。つまり、放湿過程の重要な要因を証明することができた。数値計算結果のk2が大きい理由として、平衡時の水分吸着曲線に瞬時に平衡になると仮定している点が上げられる。また、数値計算結果のkは、k=αn/voから求めたkと良い対応を示した。
  • 山田 晶子
    1999 年 8 巻 p. 33-39
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     布の吸湿実験で分かった事を基に、数値計算によるシミュレーションで、絹布の吸湿過程を再現した。布の吸湿過程について、2つの仮定を行った。1つは、吸湿過程についても放湿過程と同様に、吸着熱により暖められた布から周囲環境に放出される熱エネルキーと、布に吸着される水分間にはエネルギーバランスが保たれていること。もう1つは、吸湿は布の吸湿時の水分吸着曲線に沿って布の水分率の変化が進むことである。差分法により数値計算した速度定数は実験結果より1.7倍と大きいが、吸湿率、温度、風速の変化はともに実験結果を良く再現した。また、環境条件と素材を変えた数値計算を行い、実験結果と同様の結果を得ることができた。つまり、布の吸湿過程にとって、2つの仮定が重要な要因であることが証明された。
  • 加藤 弘, 秦 珠子, 神田 千鶴子, 中島 健一, 石川 博
    1999 年 8 巻 p. 41-46
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     野蚕繭 (アナフェサン、クリキュラ、アタカス、エリサン) を綿状にしてガラ紡で紡績糸を作ることが可能な処方で精練して作製した繭綿について物性調査した。アナフェサン繭綿はセリシンの付着状況にムラがみられたが、ヨナクニサン繭綿は繊維表面が滑らかであり、セリシンはほぼ完全に除去されていた。野蚕繭綿の吸湿率は低湿度の下ではアナフェサンはほかのサンプルに比べると1%程度低い吸湿率の値を示した。ヨナクニサンとクリキュラは複屈折値△nはほぼ0.040で、アナフェサンではやや高い値 (0.045) を示した。物性性能は野蚕繭綿の間でさほど差が大きくなかったが、ヨナクニサン繭綿、クリキュラ、アナフェサン外内層部が高い圧縮弾性回復率を示した。
  • 白 倫, 謝 佳, 李 林甫
    1999 年 8 巻 p. 47-52
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     繊度偏差の検査糸長を400回から100回に短縮する場合の繊度偏差とその変動について解析し, それに関連する格付限界値の設定とサンプルのサイズ問題を検討する。さらに生糸検査の格付理論に基づき, 短縮検査糸長の繊度偏差格の分割方法を提案する。
  • 上石 洋一, 宮沢 福寿, 気賀沢 尚人
    1999 年 8 巻 p. 53-56
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     人工飼料にセラミックス粉末を混ぜ蚕に給餌したところ, 蚕は順調に成育し営繭した。繭の外層を走査型電子顕微鏡で観察するとセラミックス粒子の付着が認められ, エネルギー分散型X線分析を行うと人工飼料に混入したセラミックス構成元素が確認された。セラミックス粒子の付着は繭の内層でも確認された。精練したフィブロイン表面にセラミックス粒子は観察されなかったので, セラミックスはセリシン層に含まれる。セラミックス粉末混入繭は白度が大きかった。
  • 栗岡 聡, 石坂 弘子, 山崎 昌良, 遠藤 美代子
    1999 年 8 巻 p. 57-60
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     家蚕繭層 (白繭、笹繭、黄繭) および野蚕繭層 (サクサン繭、テンサン繭) の抗菌力をシェークフラスコ法で評価した結果、肺炎桿菌 (Klebsiella pneumoniae ATCC4325) の生菌数の減少が笹繭とテンサン繭に認められ、対照区に比べ86%の減菌が認められた。笹繭のフラボノール抽出画分の抗菌効果は高いことから (94% K. pneumoniae減菌) 繭層に含まれるフラボノール系色素が繭の抗菌作用に関与している可能性が示唆された。
  • 徐 回祥, 森川 英明
    1999 年 8 巻 p. 61-68
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2013/02/16
    ジャーナル フリー
     原料繭の特性と一部の工程条件に基づいて繰糸シミュレーション・プログラムを開発し, 生糸の繊度偏差に影響する要因を検討した。
     直交試験の結果, 検査糸長を10mとした場合と110mとした場合で, 原料繭特性, 工程条件等の要因が繊度偏差に与える寄与率に差異が認められた。また, 寄与率が最も大きい要因は, 繭糸の平均繊度であった。さらに選除繭歩合と有効接緒効率等の工程条件について単因子の追加試験を行った。その結果, 繊度偏差に対する選除繭歩合の影響は小さかったが, 有効接緒効率の影響は大きいことがわかった。
平成11年度製糸絹研究会賞受賞記念講演要旨
第47回製糸絹研究発表要旨
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