理科教育学研究
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40 巻, 3 号
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原著論文
  • 加藤 尚裕
    2000 年 40 巻 3 号 p. 1-11
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    理科の授業において,子どもの「観察の理論負荷性」の問題点が指摘されている。しかし,人間の認識特性としての「観察の理論負荷性」にかかわる授業方略の研究はほとんど行われていない。そこで,本研究では,子どもの心的特性の一つである「観察の理論負荷性」の結果生じる素朴概念に着目し,学習過程で生じる子どもの観察や実験に影響を与える素朴概念を変容させることができると考えられる授業方略を明らかにする。具体的には,「自由試行」を取り入れた授業を実施し,その妥当性を検討した。そして,以下の二点の知見を得たので報告する。(1)「自由試行」を取り入れた授業は,観察や実験に影響を与える素朴概念に有効な授業方略である。特に,「自由試行」の○の局面の活動が重要であることがわかった。(2)素朴概念を望ましい考え方に変容させるには,○の局面(自由試行)→△の局面(定量的な実験)という学習過程で授業を展開することである。

  • 宗近 秀夫
    2000 年 40 巻 3 号 p. 13-22
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    子ども達の抱く溶解に関する既有概念を科学的概念に変容させるためには,どのような授業構成を行えばよいのか。また,どのような教授ストラテジーを採用すればよいのか。実験授業を通して理論的枠組みを明らかにしたいが,本研究は,そのための基礎研究として,広島県内の小学校第3学年から中学校第3学年までの児童・生徒2404名を対象に,小学校第5学年で扱う溶解学習事項について子ども達がどのような認識を持っているのかを実態調査したものである。調査結果より,以下の諸点が指摘できる。1.「透明か,透明でないか」という視点がないところでは,子ども達は自分の日常生活上の行為を基準にして「とける」という言葉を使い分けている。溶解学習において,溶液の透明性を強調することが重要である。2.小学校中・高学年を通して,50%以上の子ども達が粒子をイメージしている。粒子概念形成の教授方略の一つとして,小学校での粒子的イメージの導入の可能性は検討されてもよいであろう。3.溶液の均一性に関しては,小学生も中学生も共に認識は不十分である。また,飽和に関する認識も十分ではない。4.溶質の溶かし方に関しては,小学校中学年では多様な方法を考えるが,学年が進むにつれて加熱する,水を加える,攪拌するという方法に収束する。5.溶質の質量保存に関する理解も十分ではない。中学生でも,物は「とける」と重さが軽くなると考える子どもが多い。6.溶質の質量保存に関する理解が不十分な子どもは,砂糖や食塩,粉ミルクという溶質の違いによって溶かすと質量が変わると考えているようである。

  • 池田 幸夫
    2000 年 40 巻 3 号 p. 23-29
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    ある授業における前後のイメージを比較することによって,授業を客観的に評価する方法を開発した。互いに反対の意味をもつ形容詞対を用いて,中立を3とし,ネガティブなイメージを1,ポジティブなイメージを5として,鍵概念に対するイメージを5段階尺度で数値化して測定する。個々の学習者について,授業前後のイメージ尺度の差の平均値(S)と差の自乗の平均値(Ss)を求め,これを散布図にプロットすれば,イメージ変化図(CI図)が得られる。CI図上の点の分布パターンによって,授業はType I~Type Vの5つの基本型に分類することができる。それぞれの基本型は,授業に対する学生のマクロなイメージ変化を反映しているので,これによって授業評価が可能となる。

  • 松森 靖夫
    2000 年 40 巻 3 号 p. 31-41
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,以下の3点である。(1)平成10年度(1998年度)小学校学習指導要領の理科における認知的内容に関する命題文を挿入した,コメット法による評価シートを作成する。(2)コメット法による評価シートを使用した評価実践を行う。(3)評価実践の結果に基づき,コメット法を構成する4つの真理値と実際の子どもが用いる真理値との異同(4つの真理値以外の真理値を,子どもが使用するか否か)について検討を加える。そして,以下のような知見を得たので報告する。(1)計191種類の命題文を挿入したコメット法による評価シートを作成できたこと。(2)全評価シートの平均回答率は約98%であったこと。(3)約98%の子どもが,コメット法を構成する4つの真理値のいずれかを用いて,命題文の真偽判断を行っていたこと。(4)コメット法は,小学校理科における認知的内容に関する真偽判断を行う多くの子どもにとって,活用可能な評価方法の一つであること。

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